白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
ブログ移転しました→https://note.com/shiraishi_igo

目算ナビゲーター白石勇一

2019年02月12日 23時59分59秒 | 仕事・指導碁・講座
<本日の一言>
2月22日(金)、SENKO CUP ワールド碁女流最強戦2019開幕します。
そしてその前日、前回準優勝者の黒嘉嘉七段(台湾)が、仲邑菫新初段と週刊碁誌上企画の新初段シリーズ対局します!
いやはや、週刊碁も斬新な手を放ってきたものですね。
もっとも、既に井山裕太五冠や張栩名人との対局が公開されている以上、他の国内トップ棋士との対局では面白みに欠けるかもしれません。
</本日の一言>

皆様こんばんは。
本日は週刊碁に連載中の講座、「目算ナビゲーター白石勇一」をご紹介したいと思います。
本当はもっと頻繁にご紹介する予定でしたが、いつの間にかずいぶん間が空いてしまいました。

前回から、今までの内容の総決算として問題に挑戦して頂いています。
前回は9路盤、そして第19回となる今回は13路盤です。



お互いの地を何目と数えますか? という問題ですね。
数えること自体は、時間さえかければどなたにでもできます。
ただ、問題点は・・・。





お互いの地の境界線が、まだ確定していないということです。
この状態で地を数えることは難しいです。
実社会において、家を売りたくても隣の家との境界線が定まっていないと値段が付けられませんよね。
おそらく似たようなものです(笑)。

解決方法としては、お互いが納得できそうなところを想定して頭の中で線を引いてください、ということになります。
そのためのコツをずっとお話ししてきました。
これまでの内容をご理解頂けていれば、必ず正解かそれに近い答えが出るはずです。

対局中に目算する際は、当然碁盤全体を見なければいけません。
しかし、全体を眺めただけで判断できるのは天才かAIだけです。
基本的には、部分を1つ1つしっかり判断することで、その結果全体の状況が分かるのです。
これは目算に限らず、石の強弱などについても同じことが言えますね。

さて、ここまでで読者の皆様は目算がどういうものか、大体ご理解頂けたと思います。
あともう少しだけコツについてお話しした後は、目算を実戦にどう活用するかということをお話ししていくことになります。
かなりの回数を費やしてきましたが、長い目で見ればこれが皆様にとって近道になると確信しています。

棋士紹介第6回・小池芳弘四段

2019年02月12日 00時35分31秒 | 棋士紹介
<本日の一言>
件名「アドレス変更」
本文「再度登録お願いします。」
・・・どちら様でしょうか?
非常にモヤモヤしますが、迷惑メールなのでしょうね。
</本日の一言>

皆様こんばんは。
本日は棋士紹介シリーズの第6回です。

<小池芳弘四段(公式プロフィール)>

平成10年(1998年)7月6日生まれの20歳です。
長年棋士をやっていそうな雰囲気を漂わせていますが、そんなに若かったのですね。

小池四段はTwitterの日本棋院若手棋士アカウントを何度か担当していますが、しばしば本質を突くかのような鋭い発言をします。
将来なかなかの論客になるのではないかと睨んでいるのですが、いかがでしょうか。

さて、小池四段は昨年19連勝という素晴らしい記録を残しました。
年間成績は36勝12敗で、7割5分の勝率は全棋士中3位でした。
好成績の秘訣は、体力があることではないかと思います。
体力と言っても、運動のための体力ではありません。
囲碁の体力です。

棋士の対局は朝10時頃から始まって夕方に終わることが多く、持ち時間の長い碁では夜10時、11時まで長引くこともあります。
また、1局の持ち時間が短くても、同じ日に何局も打ったり、連日対局するような場合もあります。
長丁場の戦いで集中力を持続させられるかどうかは、勝負に大きく影響します。

棋風は典型的なじっくりタイプですね。
勝負が長引くことを全く恐れていないのでしょう。

さて、今回ご紹介するのは2016年8月18日の棋聖戦Cリーグ、片岡聡九段との対局です。
片岡九段も、若い頃からじっくりタイプとして有名でしたね。



1図(実戦)
片岡九段の黒番です。
黒×が弱いですが、白×も心配です。
慌てて攻めかかったりすると、反撃を受けて苦しくなるでしょう。
そこで、実戦は白1~5としっかりつながりました。

この打ち方は当然と言えば当然ですね。
しかし、対局していると色々と雑念が生じ、あらぬ方向に石が行ってしまうこともあります。
その点、小池四段はやるべきことを淡々とこなしていく印象があります。





2図(実戦)
黒1と左辺を広げられましたが、慌てず騒がず白2と守りました。
黒Aなどの手を防いだものですが、実に落ち着いていますね。
無理に左辺に入っていかなくても、十分やれるとみているのです。
若い頃はつい力に頼った無茶をしてしまいがちですが、小池四段はそのようなことには無縁かもしれません。





3図(実戦)
無茶はしませんが、ぎりぎりの踏み込みは決行します。
白△が鋭い手でした。
この後、黒A、白B、黒Cと対応され、怖い感じもありますが・・・。





4図(実戦)
しかし、小池初段(当時)は読みきっていたのでしょうね。
次に黒A、白B、黒Cがありそうですが、白D、黒E、白Fの反撃で右辺黒が危ないということでしょう。
深く読むことで、戦いのリスクを小さくしています。

本局は小池初段の白番半目勝ちでした。