白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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仲邑菫新初段-黒嘉嘉七段

2019年02月20日 23時21分53秒 | 囲碁界ニュース等
<本日の一言>
数日の間は毎日更新、と言った傍からお休みしました。
明日の対局のための調整の一環です。
・・・睡魔に勝てなかっただけとも言いますね。
</本日の一言>

皆様こんばんは。
本日は仲邑菫新初段と黒嘉嘉七段の新初段シリーズが行われました。
新初段シリーズは週刊碁の伝統ある企画で、日本棋院の新初段が一流棋士に挑戦するというものですが、海外の棋士と対局することは極めて稀です。
まだデビュー前ですが、仲邑新初段は物凄い経験を積んでいますね。

また、極めて注目度の高いこの対局は、日本棋院ネット対局幽玄の間囲碁プレミアムにて中継されました。
これも異例のことです。

さて、それでは早速感想を述べたいと思います。



1図(実戦)
仲邑菫新初段の黒番(コミ無し)です。
まずこの場面に注目しました。
黒×が弱いので、普通の人は黒Aあたりに打つでしょう。
それを、白を攻めるためとは言え、相手が打ちそうもない地点に打つとは・・・。
一言で言えば、若気の至りということになるでしょう(笑)。

しかし、若気の至りは大いに結構だと思います。
多少無茶でも、自分の感性に従って打つことが能力を伸ばす近道になると思います。

思えば、私がプロになった時には既に20歳を過ぎていました。
思い切って打とうとは思っていたものの、「負けたらどうしよう」という思いが常に付き纏っていたのです。
20代半ばあたりまで、対局以外の収入はほとんどありませんでしたからね。
そんな精神状態では、手が縮こまってしまうことも多々ありました。
貧すれば鈍する、という言葉通りです。
そう考えると、仲邑新初段をはじめ、若くして入段した棋士は羨ましいですね。





2図(実戦)
黒が無理気味の戦いになったと思いました。
しかし、このような接近戦は仲邑新初段の得意中の得意のようです。





3図(実戦)
黒△まで、見事な振り替わりです。
黒七段という手強い相手に対し、一歩も引いていません。
やはり接近戦は私より強いですね。





4図(実戦)
前図の後は誰しも白×を攻めたくなりますが、その前の左辺の打ち回しに非凡な才能が表れたと思います。
遠くの黒×が攻めに役立つとみているのですね。
仲邑新初段は布石が苦手と言われています。
しかし、狙いを絞った時の構想力は凄いです。
まだ9歳ということで、これは天性のものと考えられます。





5図(実戦)
しかし、ここで黒Aとハネなかったのは仲邑新初段らしくなかったと思います。
このあたりから、だんだん弱気な方に石が向かっていった感がありました。
細かい手の善悪より、こういったところを反省すべきでしょうね。


ところで、今まで仲邑新初段の碁は何局か見てきましたが、本人の感想はあまり聞いたことがありません。
どういう考え方や気持ちで手を選んでいるのでしょうか?
週刊碁の紙面で、そのあたりが明かされると良いですね。