女性就業者が安倍政権以後、約90万人増加し、その結果、児童保育所不足が悪化し待機児童が増加したが、女性就業者増加については「嬉しい悲鳴」であるという安部首相の発言に対し、民主党の山尾氏が、女性就業者の年齢層別で著しく増加したのは、「65歳以上の女性(約54万人増加)」であり、子育て世代の「25歳~34歳の女性」の就業者は安倍政権以降、「約20万人も減少」していると発言した。
これに対し、安倍首相は手元に詳細な資料が無いのでわからないと返した。男女世代別の就業者割合については、総務省統計局のデータから容易に把握することができる。
「子育て世代の女性就業者数の減少」は、一言で言えば、安倍政権発足以降、「家計が厳しくなった」からだ。一見、矛盾するようだが、こういう事だと推測できる。
2015年の日本のGDP成長率はプラス「0.6%」。これは、米国の2.6%やユーロ圏の1.5%、中国の6.8%に比べ著しく低い。つまり、大して経済成長はなかったのだ。一方、大胆な金融緩和により円安が進み、輸入物価が上昇。そこに消費税の増税が加わったため、物価は更に上昇し、家計を直撃した。
これに追い打ちをかけたのが、マクロ経済スライドの導入と年金特例水準の解消である。物価は1.5%上昇しているのにマクロ経済スライド導入で0.6%減少となり、名目手取り賃金は0.9%しか上がらなかった。つまり、物価水準に追いつかず、家計に火がつきはじめた年金受給者が一気に増大したのだ。
もともと年金額は給与所得者だった頃の賃金に比べ6割以上減少している。基礎年金だけで見れば、8割減だ。とても従前の生活は維持できない。そこに物価上昇が加わっため、65歳以上の女性が敏感に反応し、再び就業するようになったのだ。
円安為替差益に基づく企業利益の増大は、本質的な企業力の成長とは異なるため、労働力の不足箇所について企業は正規社員ではなく非正規社員を望む傾向にある。
核家族化が進む現代、真っ先に65歳以上の高齢者がこの労働力不足の穴を埋めてしまった。高齢者にとっては、死活問題なのだから、仕方ない。
親世代が働きに出てしまえば、今まで親に子どもを預けて働いていた女性たちも、児童保育所に預けざるを得ない。そこで、保育所では待機児童が増えた。
一方、親世代に子どもの面倒を見てもらえなくなった若者世代は、パートや派遣労働を辞めざるを得なくなった。保育所も満杯で子どもを預けられないのだから仕方がない。
子育て世代の女性たちは、結局、就労することもできず、家計を切り詰めながら生活しなければならない状況だ。夫の収入が著しく伸びなければ、やはり、二子、三子づくりには消極的になるだろう。返って少子化を加速させる結果になってしまう。
政府の立場からすれば、日本の低成長ぶりや国家の抱える1000兆円を超える負債に対して、IMF(国際通貨基金)から、かなり強い突き上げをくらっているのだと思われる。
日本はIMFへの出資額ではアメリカに次いで2位であり、重要な理事ポストも占めている。現在も財務省からの出向者が何人も在籍している。このポストを堅守するには、GDP成長率を上げていくことが使命。そのためには、働いていない者を社会に引きずり出すしかない。
そのターゲットにされたのが「女性」なのだ。
今後、配偶者控除なども廃止し、103万円や130万円の壁を取り払っていくことも考えられる。