日本の若者に限らず、政治に対する関心が薄い国民は世界的に見ても多い。それは、選挙投票率に如実に表れている。社会保障制度が充実している北欧圏の投票率は総じて高く、デンマーク88%、スウエーデン、アイスランド85%、ノルウェー76%という平均投票率が報告されている。
一方、先進国であるドイツは71%、イギリス66%、フランス57%、アメリカはなんと42%である。
米国大統領選などの熱狂的な選挙中継を見れば、アメリカ国民は皆、政治に関心があると思ってしまうが、投票率でいえば日本を下回っている。ちなみに日本の投票率は国政選挙で約60%である。
日本では現在、20歳以上の者に選挙権があるが、20歳以上の人口構成比に応じた政治が主流になるのは、選挙に勝つことで「職」を得て生計を維持している政治家にしてみれば、当然なのかもしれない。
日本は年間約20万人以上の人口減少を3年連続で記録しているが、全人口に占める65歳以上の者の比率は「25.1%」に達している。
つまり、街を歩いている国民の4人に1人が65歳以上なのだ。あなたの近くを見回してみれば納得するはず。白髪のご老人を見ない日は無い。そして、選挙権を行使している約60%に占める高齢者の割合は非常に高い。
政治家も「選挙で勝てなければ、ただの人」である。野党第1党である民主党の党首まで勤めた海江田万里氏でさえ、選挙で負けた後はメディアで露出する機会がゼロに近い。
政治家が「政治」をやるには、選挙で勝つことがすべて。そして、選挙で勝つためには「投票率の高い世代」が喜ぶような施策を行うのが近道。「日本の未来」を案じるより、「自分自身の未来」を最優先するのは、煩悩多き「人」の悲しい性でもある。それは、政治家とて例外ではない。
だからこそ、自民党は65歳以上の低所得者に一人あたり3万円の臨時給付金という「賄賂」を支給し、1票をかき集めることに奔走するらしい。
その予算は約3,620億円。対象者は約1,130万人(1,130万票)。2017年4月から導入される消費税10%への引き上げに伴う軽減税率のための財源約4,000億円を確保するため、自民党は医療・介護・保育などに要する自己負担総額に上限を設ける「総合合算制度」の導入をとりやめた。老親介護や保育などは、若者世帯にふりかかってくる負担だ。
「財源も無いのに軽減税率を加工食品や外食にまで拡大するなんて論外だ」と唱えていた麻生財務大臣も選挙に影響を及ぼす「3,620億円」については、財源が無くても、今のところ何も苦言を呈していない。
臨時給金への国民批判を避けるために政府は「児童扶養手当」の拡大案を提示した。また、65歳未満の障害年金、遺族年金受給権者である低所得者にも臨時給付金と同額の3万円を支給する案を提示した。
児童扶養手当の適用対象者は約105万人。65歳未満の障害・遺族年金受給権者は約150万人である。臨時給付金対象者の1,130万人の約22%に過ぎない。
臨時給付金の支給により、高齢者が3万円を消費に回せば景気浮揚の一役を担うと政府は言うが、国民側のその使い道の予定一位は「貯蓄」である。
当然、政府もそれがわかっていながら支給するわけだから、やはり、選挙のためのバラマキなのだろう。このような施策に異議を唱えるには、やはり、選挙権を有する若者が自己代弁者である被選挙人を見極め1票を投じる姿勢を見せることが必要なのではないだろうか。