因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

佐藤正隆事務所『リタの教育』

2005-12-12 | 舞台
*ウィリー・ラッセル作 吉岩正晴・芦沢みどり訳 高瀬久男演出 下北沢OFFOFFシアター
これで四回めの観劇だ。もういいではないかと思うものの、どうしても足を運んでしまうのである。
いつものセット、いつもの幕開き、みるたびにどんどん元気になっているような富本牧子のリタ、あまり老けないでいてくれるのが嬉しい有川博のフランク。
あの年の上演のあの場面、台詞の言い方は、仕草はどうだったか。
これまでの記憶が一気に押し寄せて、胸がいっぱいになった。
話はわかっているのに、目が離せない。
わかっちゃいるけど、やめなられない。
それが『リタの教育』なのである。

第一幕第一場、大学の社会人講座を受けようと若い美容師リタがフランクの部屋に飛び込んでくる。
やる気のないフランクは彼女に受講をやめるように言い、彼女は肩を落として部屋を出て行く、とすぐに戻ってきて強引に生徒になってしまう。フランクはあっけにとられている。
満面の笑みを浮かべて再び部屋を出て行くリタをみていると、不意に涙が。
「リタを生徒にしてやってよ、フランク」
心の中でそう言っている自分に気づいた。
こんな気持ちになったのは四回めの今日が初めてである。

この作品がどうして自分を魅了してやまないのか、女優富本牧子の魅力とともにもっと考えたい。
これまでの上演との比較という視点ではなく、リタのように正直に一生懸命に。


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