*本谷有希子作 倉持裕演出 公式サイトはこちら 青山スパイラルホール 31日まで
歌舞伎俳優の坂東三津五郎と、あの片桐はいりが同じ舞台に立っている。このありえない、冗談のようなことが目の前で起こっているのだ。三津五郎は旧家の長男で、小学校時代に自分が苛めた女の子が復讐に訪れると思い込んで怯えている。身重の内縁の妻(田中美里)の姉(片桐)がうちを訪れ、どんどん話がおかしくなっていく・・・。
知らなければ、スウェット姿で右往左往する情けない長男を演じているのが歌舞伎俳優とは思えないだろう。それくらい三津五郎は台詞にも動作にも、歌舞伎俳優であることを見事なまでに消していた。日本刀を構える所作や庭に敷き詰めた砂利の上を音がしないように歩く動作にもまったく。自分がこれまでの俳優人生で培ったものを敢えて見せずに、新しい世界へ飛び込んだその心意気にまずは拍手。
随分前になるが、利賀村の演劇祭のリポートだったかNHKの番組で、片桐はいりについて演劇評論家の大笹吉雄が「片桐はいりっていう役者っていうか女優っていうか俳優っていうか、その超人間性というのか、はじめてみたとき何が出て来たんだろうと思って」と言いよどむのを対談相手の衛紀生が「おっしゃりたいことはよくわかります」と苦笑していたことを思い出す。この印象は今も変わらず、登場しただけで舞台の空気を一変させ、「こ、これはいったい何?」と客席を動揺させる。
ふたりのやりとりは大変におもしろいのだが、舞台ぜんたいの印象はあまりはっきりしなかった。敢えて坂東三津五郎を、片桐はいりを配役したのはどうしてだろうと、ある意味身も蓋もない疑問を抱いてしまう。さらに砂利を踏む音で台詞がよく聞き取れないところもあって、何とも不完全燃焼。もっと先が、もっと深いものがあってほしいのだけれど。
歌舞伎俳優の坂東三津五郎と、あの片桐はいりが同じ舞台に立っている。このありえない、冗談のようなことが目の前で起こっているのだ。三津五郎は旧家の長男で、小学校時代に自分が苛めた女の子が復讐に訪れると思い込んで怯えている。身重の内縁の妻(田中美里)の姉(片桐)がうちを訪れ、どんどん話がおかしくなっていく・・・。
知らなければ、スウェット姿で右往左往する情けない長男を演じているのが歌舞伎俳優とは思えないだろう。それくらい三津五郎は台詞にも動作にも、歌舞伎俳優であることを見事なまでに消していた。日本刀を構える所作や庭に敷き詰めた砂利の上を音がしないように歩く動作にもまったく。自分がこれまでの俳優人生で培ったものを敢えて見せずに、新しい世界へ飛び込んだその心意気にまずは拍手。
随分前になるが、利賀村の演劇祭のリポートだったかNHKの番組で、片桐はいりについて演劇評論家の大笹吉雄が「片桐はいりっていう役者っていうか女優っていうか俳優っていうか、その超人間性というのか、はじめてみたとき何が出て来たんだろうと思って」と言いよどむのを対談相手の衛紀生が「おっしゃりたいことはよくわかります」と苦笑していたことを思い出す。この印象は今も変わらず、登場しただけで舞台の空気を一変させ、「こ、これはいったい何?」と客席を動揺させる。
ふたりのやりとりは大変におもしろいのだが、舞台ぜんたいの印象はあまりはっきりしなかった。敢えて坂東三津五郎を、片桐はいりを配役したのはどうしてだろうと、ある意味身も蓋もない疑問を抱いてしまう。さらに砂利を踏む音で台詞がよく聞き取れないところもあって、何とも不完全燃焼。もっと先が、もっと深いものがあってほしいのだけれど。
三津五郎については、「あぁ、歌舞伎の人の発声だなぁ」と思いました。(特に、悲痛な感じの台詞などは)
「錦鯉」のヒ□シを観た時にも感じたのですが、出自の違う俳優が集まると発声が統一されていなくて、その違和感が先に立って、純粋に芝居が楽しめなかったりします。
プロデュースものは、その違いを楽しめるようでないといけないのでしょうが、私はまだまだその境地には達していないようです。