因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

散歩道楽プロデュース第1回公演 ドリームダン

2007-07-23 | 舞台
* アートスペースプロット 公式サイトはこちら 公演は22日で終了
1本め:「ブランコに行列」川原万季作・演出 開幕前黒いドレスで肩に鳥を止まらせた川原万季が来場御礼の挨拶。は、いいのですが、「ではちょっと待ってください」と裏に引っ込み、上手天井から吊るされたブランコに乗って再登場したのにはちょっと拍子抜け。こういう登場をするのであれば、ご本人状態でのご挨拶は興をそぐのではないか?しかし歌い始めた「あなた」のド迫力に驚いて、もろもろぶっとんでしまった。小坂明子の「あなた」は愛を夢見る女の子の歌なのだが、川原は1オクターブ低く歌い始め、「(小さな家を)建てたでしょう」の箇所では息が荒くなったりして、夢など一切叶わなかった女の怨念のよう。この役は劇の途中で再び唐突に現れるが、歌いだしてすぐカーテンが閉められてすぐいなくなる。冒頭、部屋のベッドで寝ている男の妄想の中にいる女なのか、彼の過去に関わった女なのか。実際の劇中人物との関連がほとんどなさそうなところが却っておもしろかった。いくつかの恋が変化したり生まれたり、あっという間に消えたりという他愛もない物語。少し刈り込んだほうがいいかなとも思うが、人物の描き方、配役はじめ演出は的確。
 2本め:「朝がくるたび、そう思う」太田善也作・演出 舞台には荒れ狂う荒波を描いた幕がかかり、一人の女が靴を脱いでそろえ、飛び込もうとする。装置や小道具を思い切り省略した大胆な作り。自殺を止めに入った漁師とともに、自分の過去を振り返るというのが話の筋なのだが、過去の人物がどんどん入れ替わり立ち替わりで、まったく見飽きない。体操服姿のいじめっ子たち(ブルマなんて久しぶりに見た)や、いかにも嘘くさい悪魔、異様に若い祖母など、演劇はこんなにも自由でいろんなことができるのだなと嬉しくなるようなおもしろさだった。一人の女性の自分探しという題材は割合よくあるし、物語のまとめ方、終幕についてはあと一歩何かが欲しいとも思うが、観劇環境としては決してよいとは言えない小さな劇場で、これだけ楽しませてくれるとは。

 阿佐ヶ谷はもともと好きな街だが、商店街はずれにあるこの劇場は今回が初めてである。寝不足もあって疲労困憊の果ての観劇だったが、気持ちが軽くなった。今度は商店街をゆっくり散歩しながら来るとしよう。

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