因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

D.K HOLLYWOOD『ヤバイことしましょ!』

2012-06-29 | 舞台

*越川大介作・演出 公式サイトはこちら 新宿モリエール 7月8日まで →日にち訂正します!(1)
 金曜日の深夜、地下にあるパーティ会場の入り口ドアにロックがかかり土日明けの月曜に解除されるまで閉じ込められることになってしまった。学生時代に演劇をしていた仲間たちが久しぶりに集まったのは、7年前のある事件のためであった。

 ちょうど1年ぶりのD.K.HOLLYWOOD公演は、会場が変わって舞台と客席がぐっと近くなった。開演がやや押したが2時間あまりノンストップ、一杯道具のなかでときに時間をさかのぼったりしながら、12人それぞれの「ヤバイこと」が繰り広げられる。

 12人の俳優はタイプも実年齢もさまざまで、それがほとんど違和感なく学生時代の芝居仲間にみえるのは劇作家のあて書きが絶妙であり、俳優それぞれが自分に求められているものを的確にとらえて役作りをしているためであろう。一人ひとりに見せ場があり、細部にいたるまで笑いや小ネタが仕込まれていてお見事である。前回唸らされたのは山梨県警の新米刑事さん、今回はイベント会社の2人組だ。本筋に直接絡んで物語を動かすポジションではないのをいいことに(?)、主要人物たちをこれでもかと動揺させ、翻弄する。しかもそこに悪意はまったくない。好きだなぁ。

 D.K.HOLLYWOODは商業演劇的で華やかなエンターテインメント性を持ちながら、舞台と客席が近い濃密な空間で手堅い舞台作りを継続している印象がある。しかしいわゆる小劇場系の、よくも悪くも泥くさいところはあまり感じさせない。テレビの「シットコム」と言えばよいだろうか、多くの人がリラックスして楽しめる、こじゃれた雰囲気がある。

 学生時代の仲間が久しぶりに集まるとき、単純に懐かしく楽しいだけではない複雑なあれこれがある。演劇をあきらめた者、こだわり続ける者の屈折や互いへのゆがんだ劣等感などを求めるのは方向違いかもしれないが、人物の背景や造形にもの足りなさがあったのは否めない。大勢がにぎやかに劇世界を走り回るのがこのカンパニーの魅力であるが、登場人物を少人数にしぼった会話劇もみてみたい・・・と欲が出るのである。

 

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