因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

新派アトリエ公演『女の一生』

2011-10-16 | 舞台

*森本薫 作 戌井市郎 補綴 大場正昭 演出 三越劇場 公式サイトはこちら 16日15時の回のみ
 波乃久里子が主演し、風間杜夫、中山仁らが共演する新派版『女の一生』公演中に、1回だけ「新派アトリエ公演」と銘打って劇団新派の若手俳優が前半の3幕を演じるもの。新派の公演は数年前の『ふりだした雪』以来だろうか。

 自分はつくづく、『女の一生』が好きなのだと思う。舞台を何度みても戯曲を何度読んでも倦むことがない(1,2,3)。時代設定は古いけれども、舞台で繰り広げられる結婚や家族の物語は現代においても心に響くものであり、杉村春子という新劇界最高峰の女優を振り仰ぎながらも、いまに息づく舞台を作ろうとする心意気が清々しく、みるたびに新しい手ごたえが得られるのである。
 

 布引けいを演じるのは、本公演に堤ふみ役で出演中の石原舞子である。若手公演とはいっても出演者ぜんいんが若いわけではない。特にこのアトリエ公演は前半の3幕であるから、おさげ髪、学生服、女学生姿が少々痛いところもあって、しかし後半になれば風格のにじむ造形になると想像される。俳優の実年齢が若いにしてもそうでないにしても、長い年月を経る物語なのだから、どちらかに無理が生じるのはいたしかたない。

 1回かぎりの緊張か稽古不足なのか、台詞を噛んだり言い淀んだり、もう少しじっくりと聴かせてほしいところや、「ここはもっと雰囲気が変わる場面では?」と疑問に感じるところもあって、いつもは全身前のめりになる『女の一生』になかなか集中できなかった。
 気がつけば「ほうおう」(松竹歌舞伎会会員誌)掲載の劇団新派『女の一生』関連の記事を毎月切り抜き、波乃久里子が杉村春子の墓前で「(杉村)先生、お願いします」と手を合わせた後、思い直したように「でも、もう頼らないわ」と言ったという新聞記事を何度も読み返している。
 本公演は27日まで。まだ迷っている。

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