*森さゆ里演出 公式サイトはこちら 中目黒 キンケロ・シアター 16日で終了
劇団文学座のプラチナクラスは、2009年9月に開設された40歳以上を対象とした俳優養成コースだ。いまは第4期生の募集が行われていて、「演劇を本格的に学んでみたいシニア世代のための演劇コース」「昭和12年の創立から受け継がれてきた演劇のノウハウを、基礎からしっかりと指導」「経験の有無は一切問いません」。募集案内パンフレットのいちばん下には、「このクラスから文学座座員への登用はありません」と赤字で記されている。プロの俳優養成所ではなく、あくまでアマチュアである。しかしプロと同じ訓練を手加減しないできっちりするということだろう。
本日観劇した「プラチナネクスト」は、このクラスの卒業生によって構成された演劇ユニットである。1期生から3期生まで60人を超す大所帯となり、今回で3回めの公演とは、カンパニーとしてのフットワークが柔軟で活力があることの証左である。品川の六行会ホールを思わせる、小ぶりだが人の声がきちんと聞こえそうな雰囲気のホールである。客席後ろの通路に補助椅子も出る盛況だ。
演目は岸田國士の『賢婦人の一例』、『音の世界』、『ここに弟あり』、森本薫の『生れた土地』の4本である。年齢的にどうしても無理のある配役があったり、兄の設定が姉になっていたりするのは致し方ないのだろう。本家本元の寺田路恵や本山可久子を彷彿とさせるほどの落ち着いた雰囲気をもっていらっしゃる方がある一方で、ほとんど素のままで気負いのない方もある。台詞まわしや所作などが驚くほど巧みなのはお稽古のたまもの、座っているだけで醸し出す雰囲気は、人生経験のなせるわざであろう。しかしながら2500円というチケット代金は、正直にいって微妙だ。
プロかアマチュアかというくくりで考えれば、まちがいなく後者である。それを理由に観劇の食指が動かないという友人がおり、実は自分も少し迷った。心を決めたのは、この劇団のことを少し知っている友人が、「芝居をやりたかった!という長年の情熱に憧れる。心意気を間近にするのは良いことだ」というひと言であった。そのことばが誇張ではないことをいまは確信している。
先月おわりから今月はじめにかけて、池袋のシアターグリーンにおいて、「全国シニア演劇大会2011」が行われた。北海道から宮崎まで、16のアマチュアシニア劇団が一堂に会し、自慢の舞台を競うのである。残念ながら伺えなかったが、なかなかの盛況であった由。機会があったら次回はぜひ拝見したい。
昨年秋のクリニックシアター公演『ザ・ピンター・ツアー』を思い出す。主宰者の提言は、「あなたの職場に演劇を!あなたの仲間と演劇を!あなたの老後に演劇を!」である。
いろいろなところで、さまざまな演劇の可能性があることを、別の場において改めて実感できた。
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