*ジョナサン・ラーソン作詞・作曲・脚本 吉川徹演出 世田谷パブリックシアターでの公演は7日まで。公式サイトはこちら。
タイトルの上に小さく「オフブロードウェイミュージカル」と銘打ってある。大劇場で上演される作品とは一線を画したものであることをきっちり示すということだろう。構成はシンプルである。もうじき30歳になる作曲家のジョン(山本耕史)が、先行きの見えない自分のキャリアに焦燥と不安を募らせながら、苦悩の日々を送っている。親友のマイケル(ゲイリー・アドキンス)は俳優をやめ、ビジネスマンとして成功しているし、恋人のスーザン(愛内里菜)はダンサーの夢を諦めて結婚し、ニューヨークを離れたがっている。新作のワークショップが近づく中、ジョンの心は乱れていく。主人公は作者のジョナサン・ラーソン本人であり、山本耕史は同じくジョナサンの作品『RENT』で彼自身が色濃く投影されているというマークスを演じたキャリアもあって、本作には並々ならぬ思い入れがあるようである。
自分のしたいことと、今していることが一致する人は非常に少ないと思う。地道に努力していれば誰にでも必ず道が開けるわけでもなく、どこかで諦め、折り合いをつける決断を迫られる。その時期は人によって、仕事によってさまざまだろうが、ジョンの悩みが身近に感じられる人は多いはずだ。そういう点では国の違いを越えて共感を得やすい話かもしれない。しかし残念ながら、今回の舞台から強いもの、熱いものを感じ取ることができなかった。
まず音響の点から。3階席では台詞はまだしも、歌が変に響いて歌詞がうまく聞き取れなかったのである。出演者は皆きちんと歌える俳優さんだったにも関わらず、これはミュージカルをみる点では致命的だった。ようやく舞台の中に気持ちが入り始めたのが、ジョンとマイケルが英語で歌う「NO MORE」からで、その理由は歌も良かったけれど、ステージ上部に英語の歌詞の日本語訳が映し出されたからでして・・・。
次に主演の山本耕史に対する微妙な違和感である。いやこの言葉も的確ではないのだが、とりあえず。
すらりとした長身に、可愛らしさと精悍さが心憎いほど素敵に混じりあった顔立ち、歌唱力も確かで舞台映えもする。いいところずくめではないか。なのに器用に何でもこなしている印象があって、ステージ全体がこぢんまりした雰囲気なのである。もともと本作はジョナサン自身が「ロック・モノローグ」と呼んで、ピアノと3人編成のバンドのみで上演したのだそう。地味で内省的な内容をミュージカルとして味わうことに、やはり何かしっくりしないものが感じられるのだった。
何かをどうかすれば、もっと違ったものになるのかもしれないが、それがわからない。帝劇の『レ・ミゼラブル』以来3年ぶりにみる山本耕史はとても素敵だったが、やはり舞台そのものからしっかり伝わるものがないと不完全燃焼に陥るのである。
タイトルの上に小さく「オフブロードウェイミュージカル」と銘打ってある。大劇場で上演される作品とは一線を画したものであることをきっちり示すということだろう。構成はシンプルである。もうじき30歳になる作曲家のジョン(山本耕史)が、先行きの見えない自分のキャリアに焦燥と不安を募らせながら、苦悩の日々を送っている。親友のマイケル(ゲイリー・アドキンス)は俳優をやめ、ビジネスマンとして成功しているし、恋人のスーザン(愛内里菜)はダンサーの夢を諦めて結婚し、ニューヨークを離れたがっている。新作のワークショップが近づく中、ジョンの心は乱れていく。主人公は作者のジョナサン・ラーソン本人であり、山本耕史は同じくジョナサンの作品『RENT』で彼自身が色濃く投影されているというマークスを演じたキャリアもあって、本作には並々ならぬ思い入れがあるようである。
自分のしたいことと、今していることが一致する人は非常に少ないと思う。地道に努力していれば誰にでも必ず道が開けるわけでもなく、どこかで諦め、折り合いをつける決断を迫られる。その時期は人によって、仕事によってさまざまだろうが、ジョンの悩みが身近に感じられる人は多いはずだ。そういう点では国の違いを越えて共感を得やすい話かもしれない。しかし残念ながら、今回の舞台から強いもの、熱いものを感じ取ることができなかった。
まず音響の点から。3階席では台詞はまだしも、歌が変に響いて歌詞がうまく聞き取れなかったのである。出演者は皆きちんと歌える俳優さんだったにも関わらず、これはミュージカルをみる点では致命的だった。ようやく舞台の中に気持ちが入り始めたのが、ジョンとマイケルが英語で歌う「NO MORE」からで、その理由は歌も良かったけれど、ステージ上部に英語の歌詞の日本語訳が映し出されたからでして・・・。
次に主演の山本耕史に対する微妙な違和感である。いやこの言葉も的確ではないのだが、とりあえず。
すらりとした長身に、可愛らしさと精悍さが心憎いほど素敵に混じりあった顔立ち、歌唱力も確かで舞台映えもする。いいところずくめではないか。なのに器用に何でもこなしている印象があって、ステージ全体がこぢんまりした雰囲気なのである。もともと本作はジョナサン自身が「ロック・モノローグ」と呼んで、ピアノと3人編成のバンドのみで上演したのだそう。地味で内省的な内容をミュージカルとして味わうことに、やはり何かしっくりしないものが感じられるのだった。
何かをどうかすれば、もっと違ったものになるのかもしれないが、それがわからない。帝劇の『レ・ミゼラブル』以来3年ぶりにみる山本耕史はとても素敵だったが、やはり舞台そのものからしっかり伝わるものがないと不完全燃焼に陥るのである。
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