因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

田上パル『改造☆人間』

2009-03-21 | 舞台
*田上豊作・演出 公式サイトはこちら こまばアゴラ劇場 22日まで
 舞台における表現は自由だと思う。しかしこれが初見の田上パル『改造☆人間』は、作り手側が思いきり自由に表現していることで、観客にとっては不自由なものになっているのではないか。
 どこか山深い場所にある断食道場が舞台である。師範代のもとで数人の男女が共同生活を送りながら、からだに蓄積したものを「排毒」するべく修業に励んでいる。かつての卒業生が職場の同僚を騙して、道場に文字通り無理矢理陥れる場面から始まるが、登場人物のほとんどが必要以上の(と自分には感じられる)大声、強い訛がある上に早口で、言っていることがほとんど聞き取れないことに唖然とする。道場の門下生と、そうと知らずに連れ込まれた女性たちが状況を理解できずに混乱する様相を効果的にみせるためなのか、それにしても。

 題材はおもしろいと思う。14人の俳優が2時間ぶっ通しで「疾風怒濤の怒号劇」(当日リーフレットより)を繰り広げるさまは破壊的なエネルギーが溢れんばかりだ。これだけの力があるのだったら、もう少し違った表現方法があるのでは?決して予定調和を求めるわけではなく、せめて人物の言っていることがちゃんとこちらに聞き取れる、伝わってきてほしいのである(これは決して方言による台詞を否定することではない)。暴力、暴言が連発されることや食べ物で舞台を汚すことも、あそこまでする必然性があるのか疑問である。既成の表現ではなく、独自の方法で自分の世界を作ろうとしている心意気は強く感じられる。そこにあともう一息、自らの舞台を静かにみつめる第三者的視点が加われば、もっと確実な手応えを感じさせる舞台になるのではないか。
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