因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

COROBUCHICA.『口火きる、パトス』、いしころ project『よだかの星』~せんだい卸町アートマルシェ2020 -CONBINATION STAGE-

2020-10-17 | 舞台番外編
 公式サイトはこちら いずれも11日終了 配信は18日まで
COROBUCHICA.『口火きる、パトス』
 山本タカ作・演出  
 俳優のコロの挑戦の場として立ち上げたブランド「コロブチカ」の公演の観劇は2008年12月の『Proof』以来。本作は、「47都道府県1人芝居」の演目のひとつで、恋愛経験に乏しい弁論部の武闘派部長・柳幹久の悪戦苦闘の初恋の顛末である。50分弱の1人芝居は、ひとりで複数役を演じ分けるスタイルではなく、演じるのはあくまで柳1人だけ。ところどころ相手が言ったことを繰り返して発語し、進行する形式である。日常会話でこのような話し方はしないのだが、「1人芝居」の定番のスタイルとして自然に受け止められる。たった1人の部員・芹沢が人形であることから、柳にさんざんしごかれ、挙句サッカー部に転部して可愛い女子マネージャーと仲良くなる芹沢は、柳の願望が生んだ分身のようにも思える。中盤でちょっとした「客いじり」の場面があるのだが、きちんとサッカーボールを消毒してから客席に投げるなど、感染予防への配慮がなされている。コロは宝塚歌劇団のトップスターばりにすらりとした長身、整った顔立ちに張りのある声の持ち主だ。それが常に弁論風の堅苦しい話し方で、自転車で転倒した自分に女子高校生がハンカチを差し出してくれたことに、「母以外の女性から優しくされたのは初めて」と恋におち、不器用にのたうち回る柳を演じる迫力のすさまじいこと。
 これが『オイディプス王』の演出家と同じ人による作品であることがにわかに信じられないほどであるが、実を言うと、自分は山本タカの「地獄のコント企画 初版『ippatsu!! イッパツ!!』」が非常に好きで、学生服のコロが次第に山本タカに見えてくるという嬉しい体験をしたのであった。

いしころ project『よだかの星』
 宮沢賢治作 石川寛美演出 コロ、石川出演 
 石川寛美の「いし」とコロの「コロ」を合わせた「いしころproject」は、第1回公演を8月末に行ったばかり。『よだかの星』とワイルドの『幸福の王子』の2本立てで、後者はコロの脚色・演出とのこと。
 石川出演の舞台の観劇は、絵本演劇ユニット公演『たっくんの出会った鬼』以来5年ぶりである。地の文、台詞をふたりで語り、演じる形式のリーディングは、いろいろな形のマウスシールドを取り換えては、演じる鳥のキャラを示すなど、感染予防対策と視覚的なおもしろさ両面の工夫が凝らされている。大変痛ましい物語であるが、地に足のついた安定感と温かみのある朗読で、とくに終盤において石川が台本を放すところから圧巻のクライマックスとなった。劇作、演出、そして出演と、ふたりの俳優が実力と魅力を発揮する「いしころproject」の次なるステージは、ぜひ小さな人たちといっしょに、劇場で体験したい。
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