因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

ミナモザ『八月のバス停の悪魔』

2008-08-26 | 舞台

*瀬戸山美咲作・演出 サンモールスタジオ 公式サイトはこちら 公演は24日で終了 これまでのミナモザ劇評はこちら(1,2,3,4,5,6,7
 開幕して相当長い時間不安だった。いったいこの舞台はどこに何をどう持っていこうとしているのか。キミ(木村キリコ/木村桐子改め)が自分の書いた小説を圧倒的な迫力で読み始めるところから、意識が覚醒して心が燃え立つ感覚になってきた。

 現実に頻発する信じがたい事件の数々、60年以上もたって、いまだ癒えることのない戦争の傷跡。
 溢れるばかりの「材料」を、瀬戸山美咲は一人の女性の妄想に、(おそらく)自分自身の願いや焦燥、苦悩を投影し、しかし安易な自分探しに落とさずに描き出した。作品の完成度からすれば一昨年の『夜の花嫁』のほうが優ると思うが、事件や現実に対して、近未来やSF仕立て、劇中劇などの設定やテクニックを敢えて使わず、丸腰の徒手空拳で闘いを挑んだ劇作家の姿勢を大切に思いたいのである。
 
 急激に気温が下がり、冷たい雨が降り続いたこの2日間、みた芝居に対して言葉が出ず、もどかしい思いで疲労困憊の果てのミナモザ観劇であったが、少し元気が出たようだ。帰りの電車で、今夜の『篤姫』をみるのはおやすみにしよう、と思った。逃げずにもっと考えよう。自分の言葉を紡ぎだすために。

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