因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

絶対王様『猫のヒゲのしくみ』

2005-09-19 | 舞台

*第17回池袋演劇祭参加公演 笹木彰人作・演出 シアターグリーンメインホール
 シアターグリーンメインホール柿落とし公演
 映画作りの現場の人々を描いた作品。舞台上手後方にスクリーンがあり、劇中のメイキング監督のもつハンディカメラに映し出されるメイキングの映像が終始映っている。
 場面転換のときには舞台ぜんたいに大きなスクリーンの幕(?)がおりて、映像とナレーションが流れる。
 舞台の中で映像を使うことの難しさを実感した。
 うまく使えば大きな効果をあげることができるが、多用するとどっちつかずの印象になる。
 演劇はある意味不自由である。生身の俳優がその場にいることが前提なのだから。
 しかし例えば俳優の台詞ひとつ、からだの動きひとつで、今ここにある空間を自由自在に変えることも可能ではないか。
 今回の作品は映画を作るスタジオの一室が舞台となっている。それ以外の場面の話がほとんどスクリーンの映像によって描かれているのである。映画作りの現場を描いた作品ではあるが、やや興をそがれる印象が残った。
 ストーリーに関しては、自分は映画作りの現場や事情というものをまったく知らないが、劇中に起こるハプニングの数々には現実離れした感が否めなかった。 結末の後味の悪さも効果を上げているかどうか疑問。
 収穫は客演の関根信一(劇団フライングステージ)の大女優ぶりであった。自身がゲイであろう俳優が多少とんちんかんではあるが、自分の生き方の主張しつつ、監督を励まし撮影現場を支えていく。声の艶っぽさ、貫禄に惚れ惚れ。たっぷりの女装は気持ちがいいし、単に演技としてではなく、関根自身の人生も投影された二重三重の奥行きが感じられた。

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