因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

2度めの稽古場訪問:shelf volume12『構成・イプセン-Composition/Ibsen』

2011-10-13 | 舞台番外編

 前回に引き続き、2度めの訪問。にしすがも創造舎は文化祭準備中の学校のごとく、賑々しい。前回はOrt-d.dのツアー中だった三橋麻子が加わって、第2幕、アルヴィング夫人と息子のオスヴァルのやりとりを中心に試行錯誤が行われた(文中敬称略)。

 緊張感あふれる稽古は前回と変わらないが、その流れが止まったところで具体的な演技(台詞の言い方、仕草など)の指導や確認ではない、演出家の問いかけによる俳優とのディスカッションが始まったところからが今夜の焦点になった。

 shelfの舞台は、いわゆる新劇風のリアリズムではない。といって極度に様式化されたものでもない。戯曲を丹念に読み込んだ上で大胆に再構成し、役名を持たない俳優が存在してト書きを読んだり、役のついた俳優の台詞を言うときもある。登場人物のなかにある、もうひとりの存在、表面化しない自己の象徴でもあり、戯曲の世界へ観客をいざなったり、遠ざけたりもする不思議な案内人のようでもある。

 役作りとは何か、役を俯瞰すること、逆に役に入り込むとはどういうことかについて、俳優はそれぞれ自分の考え方がある。役の人物と自分じしんの距離をどう捉えるか。

 劇中の台詞「生きる喜び」について、演出家、俳優の捉え方は実にさまざまであった。皆でひとつの舞台を作るのだから、意識の方向が全員一致していることが望ましい場合もあり、敢えて違っていても構わない状況もある。

 今夜の稽古は内容が次第に抽象的になったこともあり、本稿も筆の方向が定まらない。
 生きる喜びとは何か。イプセンが登場人物の台詞によって問いかけるものを俳優が自分のなかに取り込み、客席に向かって問いかける。そこから何が生まれ出るか。
 初日まであと8日だ。

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