因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

龍馬伝第28回『武市の夢』

2010-07-11 | テレビドラマ

 これまでの記事
(1,2345,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,2223,24,25,26,27
「吉田東洋を殺したのは坂本龍馬だった」という後藤象二郎(青木崇高)の報告を聞いた山内容堂(近藤正臣)は、武市半平太(大森南朋)の獄を訪れる。

 容堂に対していつもはいつくばるように平伏していた武市が背筋を伸ばし、はじめて容堂とまともに向き合った。両者のやりとりは対決でもなく議論でもない。会話というほど和やかなものでもない。上士と下士という身分の違いという絶対的な溝と同時に、心の奥底で通じるものがあったもの同士が最後の最後にわずかだが交わったことを示す。近藤正臣の演じる容堂は背筋が寒くなるほど鬼気せまり、受ける武市半平太も立派で、第一級の見ごたえを感じさせる場面となった。いったいこれが史実通りであったのか、続く龍馬と岩崎弥太郎(香川照之)と武市の別れの場も同様の疑問がなくはないのだが、容堂の底知れぬ孤独と悲しみを知り、龍馬と弥太郎と最後にことばを交わすことができれば武市も救われるのではないかと思わせた。武市は切腹、岡田以蔵(佐藤健)は斬首の沙汰となる。

 切腹は武士の名誉とはいえ、志なかばで死んでゆく者はどれだけ無念であったろう。しかし志を託され、受け継ぐ者がいる。重荷や責任や義務ではない。夢なのだ。「武市の夢」。とてもいいタイトルだと思う。多くの追手があって土佐から抜け出るのはさぞかし大変だったろうに、ラストはいつの間にか仲間たちといっしょにいる龍馬なのだが(笑)、野暮は言うまい。次週より薩摩と長州のあいだを奔走し、日本を洗濯しはじめる龍馬の新しい物語の開幕だ。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 劇団ミチュウ『リア王』 | トップ | 『わが友ヒットラー』 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

テレビドラマ」カテゴリの最新記事