*明治大学130周年記念事業 公式サイトはこちら 川名幸宏演出 明治大学駿河台キャンパスアカデミーコモン3階アカデミーホール 20日まで
明治大学が主催し、同大学連合父母会、校友会、連合駿台会が後援し、関わる人数は100人を越える大プロジェクトである。入場無料!
これからご覧になる方に情報を少し書いておくと、本公演は入場無料であるが、そのまますいすいと入場するのではなく、「あ~さ行」「た~は行」といった具合に予約した名前のアイウエオ順の列に並んでチケットとパンフレットを受け取ってからホールに進む。
800人以上の観客が訪れて受付をするのであるから大変混雑する。そこから先も、お芝居の上演されるホールはエスカレーターで3階まで行かねばならないので、思ったより時間がかかった。
初日の今夜はこの段階で混乱があったらしく、開演が20分近く遅れ、それでも開演までに入場できないお客さんが出たそうである。
終演後に総責任者の方が登壇され、ご来場御礼とともにお詫びをされる一幕があった(さきほどアクセスした公式サイトには早くも同様のお詫びと、再見希望の方に大千秋楽の優先予約をする旨が記載されている)。
明日以降はきっと改善されるであろうが、時間に余裕をもってご来場されますよう。
あと、願わくはせめて夜の公演のときは、ホールのエントランスの照明をもう少し明るくしていただけないだろうか。
さて『冬物語』である。俳優、スタッフ、さらに翻訳は「コラプターズ」という学生翻訳グループが担当し、プロの舞台監督や舞台美術、照明、さらに扉座の横内謙介が監修をつとめる。内外のプロの助けを借りながらも、学生たち手作りの晴れ舞台である。
シェイクスピアが晩年に執筆した本作は「ロマンス劇」にカテゴライズされる。確かな証拠もないのに妻が寝取られたと嫉妬に狂う夫の蛮行で散り散りになった家族が、十数年後に奇跡的な再会を果たす。大団円の物語ではあるが、「ご都合主義だなぁ」と感じるところも多々ある。『リア王』や『ハムレット』に代表される悲劇、『夏の夜の夢』や『十二夜』などの喜劇、さらに歴史劇、権力抗争劇である『リチャード三世』等々に比べると、どこに舞台の主眼をおくか、客席に何を伝えたいのかがいまひとつ掴みかねるのである。
『ペリクリーズ』も『冬物語』と同じジャンルになるが、数年前、蜷川幸雄が『ペリクリーズ』を演出した際、戦乱にあるどこかの国で旅回りの一座が一夜の芝居をうつという趣向に、非常に心を打たれた。単純な表現になるが、演出とはこういうことなのかと実感したのである。2009年には蜷川演出でまさに『冬物語』が、また今年夏には山崎清介演出の「子どものためのシェイクスピア」でも上演があり、見逃してしまったことを悔やむのである。
今夜の『冬物語』には、メタ演劇的な特別な仕掛けや趣向はなかった。コラプターズによる翻訳も、あくまで原文に忠実であることをベースに悪のりには決してならず、くだけた今風の言い回しが工夫されており、好感がもてる。
このホールは演劇専用のものではないのだろうか、一部の俳優に台詞の聞き取れない箇所もあったが、中にはプロ顔負けの芸達者もいて、入念な稽古が行われたことがわかる。
現役の大学生でここまで大がかりなプロジェクトを実現し、舞台の完成度も立派なものである。後輩たちのがんばりを素直に祝福したい。
自分が在籍当時は講義のなかに演劇の実技はなく、ひたすら演劇史と戯曲について学ぶものであった。芝居がしたいなら、授業外の学内劇団や仲間どうしでするものであり、好きにやっていい代わりに野放しであり、何の後ろ盾もなく徒手空拳でやるしかなかった。
このプロジェクトのように大学ぐるみの企画になるとは、大学も変われば変わるものである。
あ、いえ嫌みとか僻みではなくて(苦笑)。
ただ敢えて少々きついことを承知で率直に言えば、舞台美術や音響(わくわくするような生演奏付き)、微妙な照明の工夫、俳優の演技等々に、「すでにどこかでみたことのある」印象があったことは否めない。このプロジェクトに参加したことを機会に、もっと小規模なものでもいい、独創性のある舞台に挑戦してほしいと願うのである。
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