因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

SOMAプロジェクト

2015-08-26 | 舞台

*ファビアン・プリオヴィル構成・演出 公式サイトはこちら あうるすぽっと 30日まで
 「SOMA」とは、ギリシャ語で「身体」を指す。
 本公演は、ピナ・バウシュ舞踏団出身のダンサー3名と日本のアーティスト7名の、ふたつの異なる文化のコラボレーションである。異なることば、経歴、身体性をもつ者たちが、ドイツ、日本公演の期間中、全員がペアを組み替えながらお互いの自宅にホームステイしたという。つまり稽古や本番の舞台だけでなく、「日常からコラボレーションすることで生まれる新しい『身体』と共に、まったく新たな世界・ジャンルを創る試み」(公演チラシより)とのことだ。
 7人の日本人アーティストは200名を超える応募者からオーディションで選ばれた、いわばつわものぞろいである。演劇集団円の谷川清美は咋秋の『初萩ノ秋』が記憶に新しく、アングラ演劇で鳴らした蘭妖子は最年長70代での参加である。互いの自宅に「ホームステイ」した様子などは、あうるすぽっとのHPのファビアンのインタヴューに詳しい。

 実に頭が固く、心の頑ななことで申しわけないが、ここまでのブログを書くのに使ったアーティスト、コラボレーションということばが、自分のことばでないことに強い違和感がある。俳優、役者、ダンサー、ミュージシャンではだめなのか。総称する表現なのか。コラボレーション。これは「複数のものが何かをいっしょにつくり上げる」こと、つまり「共同作業」なのだが、何かこう、けむに巻かれているような印象があって、自分では積極的に使えない。「クリエイション」も同様だ。

 ファビアンのインタヴューは、こういう「クリエイション」のしかたがあるのかと、わくわくしながら読んだ。だが実際の舞台は・・・どのようなものであったのか、とても自分の筆には負えない。なるほど互いの自宅にホームステイしたことが、このように活かされているのかと実感できれば多少の手ごたえはあるのかもしれないが、1時間40分の上演時間が非常に長く感じられ、困惑に支配されるものであった。よってブログの記事も劇評、公演評にはほど遠く、印象評、感想文にすらならない。まことに情けなく、申しわけないことである。

 インタヴュー後半に、オーディションで日本人参加者から「ドイツに行くまでに渡航費用を貯めなければならない」と言われ、ファビアンが「費用はすべてこちらが出す。ギャランティも支払う」と答えたところ、とても驚かれたというエピソードが興味深い。日本と外国の文化事情のちがいであり、関わる人びとの生活感覚のちがいであろう。

 たぶん自分は舞台そのものよりも、オーディションや、ホームステイ風景を見学?させていただくと頭も心も柔らかくなり、少しは自分のことばで考え、書くことができるのだろう。

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