*ハロルド・ピンター作 都内某所 28日まで
演目はピンターの『レビューのためのスケッチ』より、「工場でのもめごと」、「それだけのこと」、「最後の1枚」の3本。上演場所は都内某所、診察終了後のクリニックである。支配人からは公演の企画コンセプトとして「正しい社会人演劇の実践と、演劇を豊かに語り合える場の提供といったところでしょうか」と控えめなご案内をいただいた。
クリニックはビルの地下1階にあり、毎回5名限定の観客は、まず「工場でのもめごと」を一番奥の診察室で鑑賞し、つぎにとなりの畳の小上がり風の談話室で行われる「それだけの話」を廊下から眺め、最後は待合室の椅子にかけて、クリニックをバーのカウンターに見立てて行われる「最後の1枚」をみるという趣向である。クリニックといってもいろいろな写真や絵画が趣味よく飾られ、上等のスピーカーから適度な音量でジャズやクラシックが流れており、カフェを備えたギャラリーかと見まごう洒落た作りである。出演者4名の演劇キャリアはおよそ30年ぶりの人、れっきとしたプロ、劇作や演出の心得もある人などさまざまである。
さらに今回の3本はキャストと演出を変えて2回ずつ上演され、いささかやり過ぎと思われるものもあったが、遊び心と冒険心に富んだおもしろい企画であった。本公演の当日チラシ裏面に次のようなことが書かれてあった。クリニックシアターからの提言だそう。
「あなたの職場に演劇を! あなたの仲間と演劇を! あなたの老後に演劇を!」
公演についての感想はできれば別の場できちんと書きたく、今日のところはこの提言が自分にとって新しい演劇的目標として与えられたことを感謝したい。演劇は役に立つ。そして人は演劇を必要としていることを確信できた。
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