因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

グリング第14回公演『ヒトガタ』

2007-06-17 | 舞台
*青木豪作・演出 シアタートップス 公式サイトはこちら 18日まで
 実は2003年の初演を見ているのである。これがグリング初見であった。そのときの印象が申しわけないくらい曖昧、希薄で、それが再演と聞いてチャレンジのつもりで足を運んだ。

 1時間40分のあいだ、前から3列目という舞台に近い席だったせいもあるが、集中して楽しむことができた。『ヒトガタ』とはこういう話だったのか。初演で覚えていることが断片でしかなく、それらが有機的に繋がっていないことに愕然とする。これでは何も見ていないのと同じではないか。

 再演では一部キャストの変更があるが、ストーリーや設定は変わっていない。グリングのメンバーに加えて、常連の客演陣がいいアンサンブルを見せている。自転車キンクリーツカンパニーの歌川椎子は今回が初参加だ。女手ひとつで息子を育て上げた美容師らしいのだが、その美容師さん本人の髪がカラーも取れかけて茶髪と黒髪が交じり合い、そこに白髪も目立っている無惨な様相。苦労していらっしゃるのですね、歌川さん。前の席だったからこそわかったのだが、細部の作り込みはお見事です。

 青木豪の舞台には「モノ」が多く、人物の出入りが多い。今回は同道の友人の指摘もあって、その印象をより強く持った。幕はなく、開場から開演まで舞台の様子がよく見える。古ぼけた2段ベッドの上段には布団が敷かれているが、下段は物置状態になっている。この家にかつて子どもたちがいたこと、既に成長していることがわかる。開演前の何分かで、観客はさまざまな「モノ」から自然に情報を得て、これから始まる物語を受けとめる準備をしているのである。

 それにしてもなぜこんなに何も覚えていなかったのか。『ヒトガタ』考はそこがスタートラインになるだろう。いやそこにあまりこだわると前に進めないかもしれない。いったいどうしてだ、しっかりしろ2003年2月の因幡屋!過去の自分を叱咤激励しつつ、上演台本もこれからゆっくり読もう。『ヒトガタ』のことを、もう一度ちゃんと考えたい。 

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