*長谷基弘戯曲・演出 中野 ザ・ポケット 公演は18日まで
稽古場プレビュー(そのときの記事)から一週間後の本公演を観劇。記事には若干ネタばれがあります。
トレインホッピングとは、走行中の電車に飛び移りつつ旅行すること。その行為をするものをトレインホッパーと呼ぶ。日本を飛び出し、トレインホッピングの旅をしている若者たちの過去と現在と未来までもが交錯する物語である。仲間の一人が亡くなったことを巡って、現在と過去、外国での旅と日本でのあれこれががめまぐるしく行き来しながら物語は進む。屋外のシーンがほとんどなのに、違和感は感じない。演劇の表現の自由なること、俳優の柔軟性、それをみる観客の想像力を信頼しての作劇であると感じた。
稽古場と違って、当然のことながら劇場の舞台には装置があって、照明も音響もあり、向こう側には観客がいる。本番の舞台に立っている俳優さんたちは、とても生き生きと格好よく、楽しそうに見えた。むしろあの稽古場で演技するほうが大変なのでは?
舞台で横の動きをうまく使った演出である。両脇や舞台奥の一部が客席から見えている点の効果については少し疑問。俳優の着替えがはっきり見えたのは(客席に見せた)、弁護士が「着替えてくる」と言ったあとなので、不自然ではない。舞台装置は舞台より少し高い平台のみで、列車の上に乗っている様子、どこかでたき火をしたり、スープを飲んだりしている場面があったが、火や食べ物などを本物を使わずにやりきったことはお見事である。唯一喉の乾いた旅人のひとりがペットボトルの水を飲む場面があったが、あれは本物がないほうがかえって不自然であろう。
俳優が劇場の舞台にいるのは、わたしにとって普通の情景なのだが、舞台が終わって劇場のロビーや、前述の稽古場プレビューのときのように、素のすがたで身近にいるというのは、もうそれだけでわたしには「普通じゃない状態」なのだった。演劇創造の現場をとても魅力的に感じると同時に、何とも身の置き所のない気分、「わたしがここにいて申し訳ない!」と思ってしまう自分の演劇的体質を実感した。ひとつの舞台を作り上げる過程の空気を味わえたこと、更に練り上げて本番に臨んだ俳優さんの生き生きした様子に、「演劇は生きものである」ことを改めて知った。実に恵まれた体験であったと感謝している。
白い衣装を身につけた未来のトレインホッパーたちが、誇らしげに胸を張り、顔にルージュで印をつける。新しい旅が始まるのだ。暗転して舞台がすぐ明るくなり、あっというまにカーテンコール。この素早さが、物語の疾走感を感じさせて潔く、好感を持てた。千秋楽の明日も2回公演あり。
稽古場プレビュー(そのときの記事)から一週間後の本公演を観劇。記事には若干ネタばれがあります。
トレインホッピングとは、走行中の電車に飛び移りつつ旅行すること。その行為をするものをトレインホッパーと呼ぶ。日本を飛び出し、トレインホッピングの旅をしている若者たちの過去と現在と未来までもが交錯する物語である。仲間の一人が亡くなったことを巡って、現在と過去、外国での旅と日本でのあれこれががめまぐるしく行き来しながら物語は進む。屋外のシーンがほとんどなのに、違和感は感じない。演劇の表現の自由なること、俳優の柔軟性、それをみる観客の想像力を信頼しての作劇であると感じた。
稽古場と違って、当然のことながら劇場の舞台には装置があって、照明も音響もあり、向こう側には観客がいる。本番の舞台に立っている俳優さんたちは、とても生き生きと格好よく、楽しそうに見えた。むしろあの稽古場で演技するほうが大変なのでは?
舞台で横の動きをうまく使った演出である。両脇や舞台奥の一部が客席から見えている点の効果については少し疑問。俳優の着替えがはっきり見えたのは(客席に見せた)、弁護士が「着替えてくる」と言ったあとなので、不自然ではない。舞台装置は舞台より少し高い平台のみで、列車の上に乗っている様子、どこかでたき火をしたり、スープを飲んだりしている場面があったが、火や食べ物などを本物を使わずにやりきったことはお見事である。唯一喉の乾いた旅人のひとりがペットボトルの水を飲む場面があったが、あれは本物がないほうがかえって不自然であろう。
俳優が劇場の舞台にいるのは、わたしにとって普通の情景なのだが、舞台が終わって劇場のロビーや、前述の稽古場プレビューのときのように、素のすがたで身近にいるというのは、もうそれだけでわたしには「普通じゃない状態」なのだった。演劇創造の現場をとても魅力的に感じると同時に、何とも身の置き所のない気分、「わたしがここにいて申し訳ない!」と思ってしまう自分の演劇的体質を実感した。ひとつの舞台を作り上げる過程の空気を味わえたこと、更に練り上げて本番に臨んだ俳優さんの生き生きした様子に、「演劇は生きものである」ことを改めて知った。実に恵まれた体験であったと感謝している。
白い衣装を身につけた未来のトレインホッパーたちが、誇らしげに胸を張り、顔にルージュで印をつける。新しい旅が始まるのだ。暗転して舞台がすぐ明るくなり、あっというまにカーテンコール。この素早さが、物語の疾走感を感じさせて潔く、好感を持てた。千秋楽の明日も2回公演あり。
TBさせていただきました。
斬新な物語の設定に、そしてスピード感あふれる舞台に引き込まれましたよね。