因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

岸田戯曲を読む!『チロルの秋』

2011-03-08 | 舞台

*日本演出者協会主催 「日本の近代戯曲を読む!」より 公式サイトはこちら 岸田國士 作 佐川大輔 演出 「劇」小劇場 8日のみ 7日は『女人渇仰』、『命を弄ぶ男ふたり』 
 「明治以降の劇作家が新たな演劇を求め、何に挑んだかを探るリーディングとシンポジウムの二本立て!!」 先日の若手演出家コンクールで入手したチラシに掲げられたことばに惹かれた。はじめに『チロルの秋』リーディング上演され、そのあとシンポジウムが行われた。
 

 本作は岸田國士が1924年に発表した「処女上演戯曲」であり、 上演をみた岸田本人は、舞台をみるのが辛くて中座してしまったのだそう。舞台には椅子が3脚。演出の佐川大輔が下手に座ってト書きを、俳優が台詞を読むという大変シンプルな形式の上演であった。場所はイタリア北東部のコルチナのホテル、登場人物はステラという女性とホテルで働く娘、そしてなぜか日本人の男性の3人である。台詞はすべて日本語。40分程度の小品だが、なかなか集中できず散漫な感覚が残ってしまった。

 結果的にこの日のメインは、リーディング後のシンポジウムになった。演劇評論家、演出家が合わせて4名登壇したが、それぞれに岸田作品への強い意識があって、おひとりおひとりの話が長いこと・・・。おひとりだけでも講演会が成立するほど内容が高度で濃厚なものであり、客席からの質問もほとんど学者や研究者レベル。自分がこれまでみてきた数本の岸田作品についての考えや、さきほどの舞台をどう感じたかなどを反映させる手掛かりがほとんどみつけられず、まったく歯が立たないといってよい。
 舞台の印象だけで劇作家を語ることは著しい手落ち(手抜きだ)であり、その人がどんな時代に生きて、誰と出会ってどのような影響を受けたかを広い視野で考えなければならないことを思い知らされた。勉強になりましたと喜べず、正直なところ落ち込んでいる。気を取り直してまた勉強だ。折り込みチラシのなかに、11月の文学座公演「岸田國士短編傑作集」があった。これまでにはもう少し。

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