*酒井一途作・演出 シアターグリーン学生芸術祭参加 劇団サイトはこちら シアターグリーンBASE THEATER 7日で終了
慶應義塾大学在学中の酒井一途を中心に2010年9月に旗揚げ、ということは生まれてまだ1年経っていない劇団であり、主宰の酒井は19歳の若さで早くも学外の公演に進出したことになる。これはじゅうぶん称賛、刮目に値する。開幕前から旗揚げ公演をみて既に酒井の才能を知っている人からはより大きな舞台に登場することを喜ぶ声、これからみる人からは未知の才能への期待の声があふれ、上演が始まるやその声はいよいよ強くなった。
実は観劇してから10日も経っている。どうしても指が重く、記事にまとめることができなかったのだ。舞台の印象はむしろ明確だ。平成の現代、ある山荘へ遊びにやってきた3人の若者と、40年前に同じ場所に籠城した全共闘の学生たちが出会う。時空間が捻じれたのである。あまりの出来ごとに驚愕、困惑しながらも彼らは少しずつ歩み寄り、共感を持ちはじめる。やがて彼らがなぜ出会ったのかが明かされ、物語は意外な方向に走り始める・・・といったところか。全共闘世代の造形や関連用語?(オルグ、自己批判、ナンセンス等々)や当時の世相もきちんと理解、把握した上で台詞になっていることがわかるし、舞台美術、照明や音響、俳優の演技も念入りな稽古を重ねたことが伝わってくる。
たしかに2回めの公演で、しかも19歳の若さで、これほどこなれた舞台を作ることには驚く・・・と書きながら、実はあまり驚いていないのだった。わたしはほかにもこんな才能を知っているぞとか、誰それはもっとすごいぞという比較ではなく、ここが違う、あそこをこうすればと具体的な不満や注文があるのでもない。大変ひねくれた言い方かもしれないが、作った人のキャリアや年齢が、舞台成果の評価にことさらにプラスされる(と自分は感じる)ことに戸惑うのである。
自分がもっとも戸惑っているのは、観劇から10日も経つのに自分の感じたことをきちんと言葉にできないことだ。いや戸惑いを通り越して自分に腹を立てている。いったい何をやっている、因幡屋!
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