噛みタバコは、普通の紙巻タバコとちがって、周囲の人に迷惑をかけないからよいだろうという発想でしょうが、発がん物質を口の中に入れるわけですから、何とも恐ろしい話です。
**********
大リーグの「かみたばこ」進まぬ規制 禁止案に抵抗も
朝日新聞 2014年7月20日14時41分
54歳だった。6月16日、大リーグの歴史に残るスーパースターが、唾液(だえき)腺がんで亡くなった。パドレスでプレーし、8度の首位打者に輝いたトニー・グウィン氏。現役時代に愛用し続けた「かみたばこ」が原因とも言われる。今なお使う大リーガーは多い。慈善活動に熱心で「模範的な人物」といわれたグウィン氏の死は米球界に衝撃を与えたが、たばこ規制への大きな広がりには至らない。
■「文化の一部」「ステータス」
大リーグの試合で、選手らが何かを口に含み、頻繁につばを吐く場面を目にした人は多いだろう。
それはガムではなく、かみたばこのケースが多い。米メディアの調査では、今春のレッドソックスのキャンプに参加した選手58人のうち、21人が使用するなど、大リーグ全体で4割近くが愛用者と言われている。亡くなったグウィン氏も現役生活の20年間、刻まれたたばこの葉をかみ続けていた。
かみたばこは「大リーグ文化の一部」とも言われている。その起源は、150年以上前にさかのぼる。
今につながる野球のルールが作られたのが1845年。当時すでに、選手はかみたばこを使い、プレーしていたという記録がある。香りなどを楽しむ一方、大量の唾液(だえき)が出る。米野球殿堂博物館のキャシディ・レント氏によると、「口内の乾燥を防ぎ、つばをつけて硬いグラブの革を軟らかくした。当時、投手はつばを球につけて変化させていた。かみたばこは実利的な道具でもあった」。かつては、たばこ会社が有力スポンサーで、スター選手がかんでいたことも後押しし、伝統のように受け継がれていったという。
あこがれの大リーガーが愛用する姿を見て、次世代がまねるという連鎖。DeNAのバルディリスは、米国でプロ契約した10代の頃から愛用しているという。「みんなかんでいたから。野球選手のステータスみたいなものだ」。日本でも、阪神のメッセンジャーら外国人選手に愛用者は少なくない。米疾病対策センター(CDC)によると、かみたばこには28の発がん性物質が含まれているが、昨年の調査では米国の高校生の約1割が使っていたという。
健康と子供らへの影響を考え、大リーグ機構はたばこ撲滅に取り組んできた。1993年、マイナーリーグでの使用を全面的に禁じ、違反者に罰金を科した。メジャーでは2011年、新労使協定を結ぶ際にたばこ規制案が初めて盛り込まれたが、選手会の抵抗で全面禁止に至らなかった。
妥協案として、①テレビのインタビューや公式会見でたばこをかまない②球場の開門後、かみたばこはファンの見えない場所で管理し、持ち歩かない、などの条項が入った。だが、ファンから見えない場所で葉を口に入れれば、グラウンドでたばこをかみ続けられる。ちなみに、一般的な「紙巻きたばこ」は球場では禁じられている。
グウィン氏の死を受け止め、かみたばこをやめる選手が出てきたが、まだまだ数人だ。「個人の自由」とする選手会が自重する動きはない。
■日本球界、規制なし
日本は紙巻きたばこが主流だが、プロ野球にはたばこに関する規制はない。日本野球機構(NPB)によると、選手会と話し合いをしたこともないという。DeNAが新人選手に禁煙を勧めるなど、取り組みは球団任せ。ファンの前でたばこを吸わないなど、選手それぞれが自制するが、試合中もベンチ裏などで喫煙できるチームもあり、環境は整っていない。
日米球界でプレーした元巨人の桑田真澄さんは、日本球界全体での喫煙ルールの厳格化を訴える。懸念するのが子供らへの影響。少年野球の現場では、選手の目の前で喫煙する指導者が珍しくないという。「指導者が自分に負けない強さを示さなくて、真のアスリートが育つはずがない。プロアマ問わず、ユニホームを着ている間は、たばこを吸わないことを徹底してほしい。選手のあるべき姿を、まずは指導者が実践すべきだ。身近なところから始めれば、やがて大きなうねりになる、と信じている」(村上尚史)
**********
それにしても、いまでもタバコを吸う選手がぞろぞろいるというプロ野球も不思議なところです。あれだけ烈しいスポーツですから、タバコを吸っていて調子が悪くならないものでしょうか。DeNAの中畑監督が禁煙を選手に命じたという話も伝わっていますが、全部のチームではなさそうです。
不思議なスポーツです、野球は。