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『あなたへ』の新聞評も、絶好調

2012年09月01日 09時18分18秒 | 高倉健

『あなたへ』の新聞評がほぼ出揃ったようです。主だったところを記録しておきましょう。

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あなたへ
産経新聞 2012.8.24 07:45 [映画]

 主演俳優の名前を聞いただけで、公開初日の劇場にかけつけたくなる映画がある。高倉健(81)が6年ぶりに出演した本作も、その例に漏れない。

 富山刑務所の指導技官、倉島英二(高倉)に届いた亡き妻(田中裕子)の手紙。そこには故郷の海に散骨してほしい、と記されていた。1200キロメートル離れた長崎への旅が始まった。

 車で向かう途中で知り合った元教師(ビートたけし)、実演販売で転々とする2人組(草なぎ剛と佐藤浩市)。傷を負って生きる人たちの心情が、英二との出会いで浮かび上がる構成が胸を打つ。長崎の港で、老いた船頭(大滝秀治)がつぶやく言葉にぜひ耳を傾けてほしい。

 「察する文化っていいよ」。健さんは「キネマ旬報」9月上旬号で、降旗(ふるはた)康男監督の作品の魅力を、こう表現している。相手の気持ちを忖度(そんたく)する。そして心を重ねる。説明を極力省いた演出、健さんの静かなたたずまいを通して、人のぬくもりが伝わってくる。25日、全国公開。1時間51分。(和)

 ☆★★★★(満点は★5つ☆は半分)


「あなたへ」
朝日新聞 2012年8月31日10時11分

■評:ゆったり、円熟の極み

 昨今の何かとせわしない映画に辟易(へきえき)している方々に、この、静かなゆったりした呼吸の作品をおすすめする。ここには、少なくとも物語と表現のおだやかな調和があり、しみじみとした人生観照がある。

 高倉健主演、降旗康男監督の仕事は、これで20作目を数える。当年とって高倉81歳、降旗78歳、円熟の極みにある。

 北陸にある刑務所の木工指導技官、倉島(高倉)が、亡き妻の洋子(田中裕子)の遺言で、彼女の郷里の長崎県平戸市の海へ散骨に行くことになる。キャンピングカーの旅は、何人かとの思わぬ出会いをもたらす。山頭火かぶれの元教師(ビートたけし)、イカめし実演販売の青年(草なぎ剛=なぎは弓へんに剪)と同僚(佐藤浩市)、漁港で食堂を営む母(余貴美子)と娘(綾瀬はるか)、娘の婚約者の漁師(三浦貴大)と祖父(大滝秀治)……。

 簡潔な描写で、多くを観客の想像力にゆだねる省略と暗示の手法が鮮やかだ。風鈴、絵手紙、神輿(みこし)といった小道具と、歌手だった洋子のうたう「星めぐりの歌」(宮澤賢治作詞作曲)とが匂い合う配剤も心にくい。語り口は端正で品が良く、配役がまたぴったりだ。誠実で控えめで、全てに武骨な高倉は言うに及ばず、飄々(ひょうひょう)としてどこか寂しげなたけし、厚かましいが憎めない草なぎ、憂いの色を漂わす佐藤、だれもがいい。

 格別のオドロキもトキメキもない作品である。しかし、それを補って余り有るものがある。兵庫県の竹田城址(じょうし)の回想シーンには詩情が立ちのぼり、漁港の写真館の前に倉島がただずむ場面の情感は胸にしみ入る。

 受け身一方の主人公が最後にある行動に出る。全編に人の世の哀愁を湛(たた)えた作品だが、そこから生きるということの前向きの意味が伝わってくる

(秋山登・映画評論家)

 全国で公開中。

「あなたへ」(東宝、電通、幻冬舎ほか)

新しい生へ 歩を進める

 俳優高倉健は、旅する姿がよく似合う。ただし、スクリーンに映し出されるのは、気楽な旅行者ではない。演じる主人公は、いつだって、やむにやまれぬ事情を抱えている。

 「幸福の黄色いハンカチ」では、出所後、離れていた妻の気持ちを知るために、夕張に向かわねばならず、「単騎、千里を走る。」の中国行きは、余命わずかの息子の願いをかなえるためだった。任侠(にんきょう)映画のラストの殴り込みも、我慢に我慢を重ねた末の道行きだ。

 「あなたへ」の主人公の旅も、最初はそうだった。高倉が演じるのは、富山の刑務所の技官、倉島英二=写真=。自ら車を運転して、亡き妻(田中裕子)の古里の長崎・平戸を目指すが、頑固な男の背中を押したのは妻の2通の遺言。1通には「古里の海に散骨して」と書かれ、もう1通は現地で受け取ってほしいと、中身を伏せたまま、平戸の郵便局に送られていた。

 妻の遺言を読むための平戸行きは、受け身の姿勢で始まったが、旅の途中には、予期せぬ出会いが待っている。やはり、「幸福の――」の若者たち、「単騎――」の中国の人々との一期一会が思い出される。倉島にもかけがえのない出会いがもたらされよう。

 元教師(ビートたけし)、イカめしを売る男(草?剛)と部下(佐藤浩市)。結婚を控えた若い男女(三浦貴大、綾瀬はるか)と船頭の老人(大滝秀治)。皆、平凡な市井の人のようだが、心に抱える悲しみや後悔の念は重い。事情は違えど、倉島と似たような心境の人たちだ。なのに、普通に振る舞い、働いているように見える。自分はどうだ。幸福だった思い出にとらわれたままでいいのか。倉島は、自問自答したはずだ。

 旅に向かわせた妻の真意をくみとったかのように、倉島はある行動を取る。不器用だった男の少しだけ気張って見せた振る舞いが、胸に迫る。

 さらに、カメラは倉島が歩く姿を延々追う。降旗康男監督が見届けようとしたのは、旅を経験した後の倉島だけではなかったろう。新しい生を生きようと歩を進める倉島が、高倉その人に見えたのではないか

 6年ぶりにスクリーンに復帰し、これまでとは違うスターとしての存在感を示す高倉に感銘を覚えた。どこまでも歩き続ける姿を、観客もじっと見続けるに違いない。1時間51分。有楽町・TOHOシネマズ日劇など。(近藤孝)

(2012年8月31日  読売新聞)


映画:年老いて、解き放たれる旅 高倉健主演で20本、降旗康男監督の最新作「あなたへ」
毎日新聞 2012年08月31日 大阪夕刊

 全国公開中「あなたへ」(12年、1時間51分)の降旗(ふるはた)康男監督は、高倉健と同時期に映画の世界に入った。監督第2作「地獄の掟(おきて)に明日はない」(66年)以来、「新網走番外地」シリーズや「冬の華」「駅STATION」「鉄道員(ぽっぽや)」など健さん映画を20本撮った、いわば盟友だ。その降旗監督が「あなたへ」の高倉について、「いままで健さんがやってきた役とは違いますね」。

 北陸の刑務所で木工技官をする英二(高倉)の元に、亡き妻(田中裕子)から絵手紙が届く。「ふるさとの海を訪れ、散骨してほしい」。寝泊まりができるようにワゴン車を改造。遺言に従い、妻の遺骨とともに英二は南に向かって走りだす。

 インタビュー中、降旗監督は「桎梏(しっこく)」という言葉を何度か使った。行動や生活の自由を厳しく束縛する意味の桎梏。確かに高倉の映画は、桎梏にがんじがらめになった男の物語が多い。我慢の末、最後は損を覚悟で自分の利益にはならない道を進む。それが健さんの体現してきた主人公。

 もともとの構想は、08年亡くなった市古聖智さんの企画。市古さんは、「夜叉(やしゃ)」(85年)から降旗・高倉作品に参加するプロデューサー。遺品の中から「あなたへ」のプランが見つかった。

 「(健さんの年齢では)不自然だと思える荒事を消し、組み直していきました。いろいろなことに縛られていた男が、奥さんの死をきっかけに、奥さんの遺志に導かれて桎梏から解放されていく」。降旗監督は「人間が年を取るってこういうことではないか」。そんな映画が撮れた。

 ロードムービーが向かうのは九州・長崎。「健さんだからって北海道というのは嫌だからね」。笑って多くを語らないが、南ということにも意味は込められている。

 健さんのワゴン車は、思い出の大阪を抜けて南へ。自称元教師(ビートたけし)やイカめし販売員(佐藤浩市)らとのふれあいを重ね、港に着く。

 健さん映画常連の大滝秀治は、今回漁師の役。一つのシーンを見るために映画館に何度も足を運ぶことは、そうない。が、2人がぶつかり合う場面を、記者は幾度でも見たい名優たちが一期一会のワンシーンで描く「あなたへ」には、誰にとっても心に残る情景がきっとある

 「何かに集中していくのではなくて、今回の健さんは大地の中に染み込んでいくような主人公だと思うのです。どうでしたか?」【若狭毅】

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おおむね好評。個人的に違和感のある批評は、ありません。それだけの価値がある映画が『あなたへ』です。小生は、もう2度見ました(レビューは、こちら!)。でも、まだ見たいと思っているほどです。強くオススメします。


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