夢と希望と笑いと涙の英語塾

INDECという名の東京高田馬場にある英語塾で繰り広げられる笑いと涙の物語
新入会員募集中!

坂東英二、桂南光、高倉健さんを語る

2012年08月31日 08時15分00秒 | 高倉健

日刊スポーツに、坂東英二氏と桂南光氏が高倉健さんの魅力について語っています。記録しておきましょう。

**********

板東英二が語る「愛すべき健さんの魅力」

 高倉健の主演映画「あなたへ」(降旗康男監督)がいよいよ25日に公開される。高倉にとって通算205作目、降旗作品は20作目。実に6年ぶりのスクリーン復帰を記念して、高倉と縁の深い人物に「あなたへ」の見所と人間・高倉健の魅力を語ってもらう。第1回は89年「あ・うん」で共演し、親交のあるタレント板東英二

 何を思って健さんはこの映画を作ったんでしょうね。「人は皆、いや応なしに老いていく」-。そのことを自分の人生の集大成として、メッセージにしたかったのかなあ。お世話になったみなさんへのごあいさつだったのか…。「あなたへ」でしょ?「みなさんへ」ですよ。演技やなく、素の健さんを見た気がします。

 ほとんどのシーンがたわいないんです。なのに、1つ1つが重い。服役囚に「声を出すなよ」と声掛ける場面とか、詐欺師みたいのが出てきたりとか。みんな違う道を歩んできたけど、一生懸命だった。大切なものがあるんだ-というね。

 人の琴線に触れるものを積み重ねていく。こんな映画珍しいですよ。どのエピソードにもはっきりした答えがない。こっちが考えないといかん。高校生くらいではまだ理解しにくいかも。銀婚式を挙げたぐらいの夫婦が見ると幸せになれる。

 ただ夫婦一緒にではなく、別々に見に行った方がいいです。2人で行ったらお互い恥じらってしまって、何にも言わずに家に帰って…となるんじゃないかな。僕は嫁と2人でよう見んです。ウチのやつは一人で見に行くでしょうから、その後に何となく「2人、一緒になって良かったなあ」と心でつぶやくんじゃないかな。

 健さんと最初に会ったのは「あ・うん」(89年)の撮影初日でした。東宝のスタジオに朝9時集合。顔合わせ、衣装合わせがあって、撮影に入るかは「健さん次第」って言われてました。

 僕は8時前に着いて、部屋で1人で待ってたんです。誰かがすりガラスの戸をコンコンとたたく。スタッフと思い、座ったまま「どうぞ」と。パッと戸が開いて「高倉です。長丁場になるかもわかりませんが、どうぞよろしく」。カップに入れたコーヒーを持っておられて「お飲みになりますか?」-。ビックリして、こっちはそれどこやないですよ。僕より先に入ってらしたんです、あれだけの俳優が。

 驚かすことが好きな人です。めちゃくちゃないたずら好きです。「あ・うん」の修善寺ロケで「健さんがものすごく怒ってる」という情報が流れましてね。「小道具のヤツがちゃんとしていない」とか。僕と健さんが一緒にいると、その小道具さんがやって来た。健さんは「忘れものしてるだろ」と言って、ビビッてるその人の首に「これだ!」といきなりペンダントをかけた。「俺が感謝してる気持ちを伝えるのを忘れてるだろ?」-。健さんは「自分が忘れていた」と言うてるんでしょうが、小道具さんは、何の意味かわからない。だけど「ありがとう!」と握手されると、もうワンワン泣いてね、50過ぎの人が。周りのスタッフは「わー!」と拍手で大感激ですよ。

 僕もやられました。スタジオに入ると、健さんが「すみませーん。板東さんと話してたら、セリフがどうも入っておらず、自信がないらしくて…。撮影を中止にしてもらえませんか」と大声で言う。そんなこと言った覚えない。それやのに「撮影、本日中止でーす」と言われて…。すると「板東さん!」と腕引っ張られて、健さんの運転で目黒のそば屋に連れていかれたんです。2人なのに貸し切りでした。その後、原宿の喫茶店にコーヒー飲みに行って「きょうは楽しいねえ」って、うれしそうに笑ってらした。

 でも、最近お会いする機会がないんです。今回もオファーなかったし…(笑)。そらねえ「鉄道員(ぽっぽや)」(99年)も、現場に4日間おってセリフは「夕刊!」だけ。健さんの作ってくれた鍋ばかり3日間食べてね。

 ところが、先日、ついに甘酒をいただきました。「甘酒は夏バテにいいですよ」というお手紙も添えられておりました。本当にうれしかったなあ。

 実は、1年半ほど前にいただいた手紙には「板東さんのことはよくわかっております。ご活躍も拝見しています。だから、僕のことはそっとしといてください」と書かれてあったんです。うちの嫁は「ひょっとしたら、怒ってはるんちゃう?」と言うし(笑)。僕が健さんのことをしゃべりすぎるから、嫌われてるんじゃないか…と不安になってたんで、ほっとしました。

 前に「中国飯店でご飯を食べよう」と約束したんです。嫁も「いつだろうね?」って楽しみにしてるので、待ち遠しいですなあ。【2012年8月21日紙面 構成・加藤裕一】

 [日刊スポーツ 2012年8月30日19時2分]


桂南光が語る「愛すべき健さんの魅力」

 高倉健の主演映画「あなたへ」(降旗康男監督)がいよいよ25日に公開される。高倉にとって通算205作目、降旗作品は20作目。実に6年ぶりのスクリーン復帰を記念して、高倉と縁の深い人物に「あなたへ」の見所と人間・高倉健の魅力を語ってもらう。第2回は「網走番外地」シリーズ以来の熱狂的ファンで「高倉健ファンクラブ」初代会長の落語家・桂南光

 健さんのために作られた映画と思います。健さんにしかできん役です。ずっと穏やかで。電話もすぐに出ない、その間合いとか。たまに手がアップになるんですが、シミが目立ちます。実はそれは昔からでね。「遥かなる山の呼び声」(80年)の時に初めてお会いしたんですが、もうありました。ゴツゴツしてないけど、職人の手みたいでした。生きてきた事が手に表れてはる感じです。

 健さんはそこにおるだけで、世界ができるじゃないですか。「高倉健」ていう風貌、表情が値打ちですよね。ストイックな人、体鍛えて。自分が理想とする「男」を維持したいと思ってはるんでしょう。その生きざまがきれいですよ。

 僕は「八甲田山」(77年)がすごい好きなんです。案内人役の秋吉久美子さんに「案内人殿に敬礼」ってするところがすっごいきれいで。なんて言うか“決め”がいちいちええ。今回も奥さんの遺骨を散骨するシーンがきれかったなあ。

 映画全体で言うと、健さんと一緒に旅をしてる感じ。たいした出来事が起こるわけやないのに、いろんなことがちりばめてあって、その都度心を動かされる。一番思ったんは、映画には普通メッセージがあるけど、これはそんなにはっきりしてないんですね。健さんと田中裕子さんが何で結婚したっていう決め手とかもわからない。いろいろ謎の部分があって、受け取る人がそれぞれ「そうなんだろうな」と思えばええ。そこまで明らかにする必要はないんだろうなと。奥さんの手紙を郵便局で受け取っても「え?」ということしか書いてない。でも、そこに深い意味がある。中学、高校生が見てもおもしろくない。人生をある程度生きてきた人向けの“すっごい大人の映画”ですわ。

 健さんの映画を初めて見たんは番外地シリーズのころです。僕は噺家(はなしか)になって、内弟子出てたから22、23歳かな。ただのミーハーです。健さんが実際に行ってはる東京の青山の喫茶店も1人で行きました。クラシック流れてて、女の人が白いシャツと長い黒いスカートはいてはって。「健さんは何を飲んでおられますか?」と聞いたら「ウインナコーヒー」って。注文したら、冷たいクリーム乗ってて。「けったいなもん、飲んではるんやなあ」とグイッと飲んだら、口の中をやけどしました。

 初めてお会いしたのは「遥かなる山の呼び声」のキャンペーンで大阪に来られた時です。ラジオ大阪の番組でインタビューさせてもらった。映画で健さんが泣く場面があって、他のインタビュアーもみんな、そこを聞く。僕は「山口組三代目」(73年)で田岡さんを演じた時にも泣いてはるのを覚えてたんで「あの時も…」って聞くと「あ、あなたは見てくれているんですか?」と。他の人には「そうですね」しか言わんのにいっぱい答えてくれた。

 健さんを知るみなさんが言わはんのは「とっても律義で情に厚くて、人を喜ばせたり、驚かせんのが好き」。健さんとずっと共演してはった小林稔侍さんに聞いたんは、昔、ポルシェをもらったそうです。健さんもポルシェ好きで、2台で一緒に走ってる時、前の小林さんが信号で発進しようと思ったら、サイドミラーがいがんでる。しばらくしたら、またいがんでる。…健さんが信号で止まるたびに車を降りて、走ってきて、いがまして、ガーッと後ろに帰っていく。ほんで「気がついたか」と…。

 僕の一番の思い出は93年、桂南光の襲名披露の時です。米朝事務所の当時の社長が「高倉健さんにもダメ元でメッセージのお願いをしてみようや」と。僕は「やめてくれ、失礼や」と言うたけど、送って即返信があった。速達で、みんなの中で一番早かった。そんなんする必要ないんですよ。こっちはただのインタビュアー。いくら噺家いうてもね。しなくてもいいような律義さというか。自慢です。直筆で「高倉健」ってサイン書いてありますから。

 実は1度だけ、健さんの映画に出るチャンスがありました。「居酒屋兆治」(83年)で「カウンターの客役」という話。マネジャーが「レギュラーあるから」って断ったらしく「レギュラーなんか、よろしわ、健さんの映画にちょっとでも出れたら」って言うたけど遅かった。セリフもない役やけど。ほんまにもう…。【2012年8月24日紙面 構成・加藤裕一】

 [日刊スポーツ 2012年8月30日19時2分]

**********

坂東氏は、『あなたへ』の主人公が同じ「英二」だったので、ここではコメントされていませんが、相当喜ばれていたのではないでしょうか。南光氏も相当なのめりこみ方。そうなってしまいますよね、健さんだと。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ロムニー共和党大統領候補か... | トップ | 『あなたへ』の新聞評も、絶好調 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

高倉健」カテゴリの最新記事