高倉健さんの特別授業を受けられた学生さんたちが、うらやましい!
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しあわせのトンボ:健さんの美しさ=近藤勝重
毎日新聞 2013年02月08日 東京夕刊
俳優の高倉健さんが「文芸春秋SPECIAL」(季刊春号)の特集「老いて美しき人」の男性部門で第1位に選ばれている。編集部の「美しき人とは」の問いに、健さん自ら筆をとりこう答えている。<美しさとは、他者に対しての優しさではないでしょうか>
ぼくは古くからの大ファンで、昨夏は6年ぶりの映画「あなたへ」の出演を機に長時間取材させてもらった。その際「あなたへ」に出てくる山頭火の句に触れつつ、やはり山頭火の句「何を求める風の中ゆく」を健さんに贈るつもりで紹介すると、喜んでくれ、「今度は僕が、近藤さんが文章術を教えている大学で、一番後ろに座って聴講したいですね」と言ってくださった。
そして秋も深まったころ、ぼくが授業のお手伝いをしている大学の教室に本当に訪ねて来てくれた。一人でぶらりと現れた健さんに、こちらは恐縮するばかりであった。
当日のいろいろは省略するが、授業後、健さんは「何を求める風の中ゆく」の句を口にして、取り囲む学生たちに語りかけた。
「何を求めたかが一番大事なんだよね。これからみなさんが一番悩むところだと思いますよ」
中国の張芸謀(チャンイーモウ)監督の作品「単騎、千里を走る。」に出演後の6年間のブランクについても、単なる回顧談ではなかった。
「お金、お金ってやってきたけど、『単騎−−』の仕事をして、それでいいのか、情けないなって思って、映画もCMもやれなくなったんですね」
そしてロケ中に出演者やスタッフらから受けた細やかな数々の心遣いに触れて話を続けた。
「結構いろんなところを旅してますけど……。僕の価値観が変わったんですね。大学の商学部で時間とお金のこと、ずいぶん勉強させられましたけど、人の心を打つってことはそういうことじゃないんだなあって、ものすごい感じました」
「お金は欲しいですよ、やっぱり。でもそればっかりで本当にいいのっていうのがいつか来ます。来なかったら勉強が足りないんだと思います。(書く仕事な ら)書いたものが誰のボディーを打って誰が泣いてくれたらいいか。そこまで行かないと、行くところまで行ってないんだと思います」
健さんは声も姿も若々しかった。いま改めて「美しさ」という言葉と共に、その日の健さんを思い起こしている。(専門編集委員)
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文藝春秋 SPECIAL (スペシャル) 2013年 03月号 [雑誌] | |
クリエーター情報なし | |
文藝春秋 |
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