香港紙サウス・チャイナ・モーニング・ポストは5日、1990年代の陸上女子長距離を席巻した中国の「馬軍団」の一員で、女子1万メートル世界記録保持者の王軍霞らが、馬俊仁コーチに禁止薬物の摂取を強要されたと訴える文書に署名していたと報じた。

 国際陸連は文書が本物かどうか調査する意向で、王が93年に樹立した現在の1万メートル世界記録(29分31秒78)など多数の記録やメダルが取り消される可能性が出ている。

 香港、欧米の報道によると、告発文書は95年にジャーナリストに宛てて書かれたもので、約20年間存在が明らかにされなかった。「長年にわたり、(馬コーチは)私たちに大量の禁止薬物を摂取するよう強要した。私たちは人間であり、動物ではない」と記述され、王ら約10人が署名。一方、ドーピングが判明することで「わが国の名声を傷つけ、メダルの価値を損なうことを心配している」と複雑な心境もつづられている。禁止薬物が具体的に何かは明かされていない。 

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1993年9月8日に王選手が出した女子1万mの世界記録が、29分31秒78。これは、2009年6月14日にエチオピアのメセレク・メルカム選手による歴代2位の29分53秒80よりも20秒以上も早い驚異的な記録です。薬物でも使わなければ出せる記録ではありません。

女子3000mにいたっては、歴代4位までが馬軍団の選手です。王選手が世界記録8分06秒11を出した1993年9月13日、曲雲霞、張林麗選手がそのあとに続き、歴代2位と3位の8分12秒18、8分16秒50を出し、その前日に馬麗艶選手が歴代4位の8分19秒78を出しているのです。

歴代5位の記録は、ケニアのヘレン・オンサンド・オビリ選手が2014年5月9日に出した8分20秒68。王選手たちの記録がいかに異常なものであるかがわかります。

薬物まみれの陸上競技。他にも怪しい選手がいっぱいいそうです。競技への信頼を高めるためにも、国際陸連には厳密な調査をお願いします。

ただし、オリンピック・世界選手権などの競技会のメダルは取り消すにせよ、記録に関しては「薬物使用記録」という項目で、参考記録として残すべきです。ある意味、人間のエゴの塊のようなもので、薬物使用の恐ろしさを間接的に示すことができますから。