やっぱり、無理をしてでも国立劇場に行くことにします。
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「髪結新三」初役に橋之助
読売新聞 2015年03月18日 08時00分
「兄貴」2人の魂受け継ぐ
歌舞伎俳優の中村橋之助が、国立劇場(東京・半蔵門)の3月公演「梅雨小袖昔八丈つゆこそでむかしはちじょう―髪結新三かみゆいしんざ―」で、主人公の新三に初役で挑んでいる。
新三は、亡き十八代目中村勘三郎、2月に急逝した十代目坂東三津五郎が勤めた役だ。若手の頃から慕ってきた2人の「兄貴」への思いを胸に舞台に立つ。
「髪結新三」の愛称で親しまれる同作は、世話物狂言の代表的な作品。江戸時代の殺人事件を題材にした落語の長編人情噺ばなしを、河竹黙阿弥が脚色した。材木商の一人娘・お熊と手代・忠七の恋仲を利用し、ひともうけをたくらむ髪結い・新三の小悪党ぶりが描かれる。
新三への思いは深い。父の七代目中村芝翫しかんが、新三を当たり役とした六代目尾上菊五郎のもとで修業を積んだこともあり、幼少時から何度も「芝のおじさん(六代目菊五郎)はこうだった」と聞かされてきた。
作品に初めて参加したのは17歳の頃。新三役の初代尾上辰之助から新三の弟分・勝奴かつやっこ役を打診され、「うれしくて涙が止まらなかった」。初めて挑む世話物で、「尾上菊五郎劇団」に在籍した三津五郎の父、九代目三津五郎から「役と同時に庶民の暮らしぶりが肝でもある世話物の心得も教わった」と言う。
その後も忠七、新三にやりこめられる親分・源七、反対に新三をやりこめる家主・長兵衛と、新三を除く役をほとんどこなした。それぞれで新三を勤めたのが勘三郎、三津五郎の2人。若手公演として定着したお正月の新春浅草歌舞伎や夏の納涼歌舞伎の初期から苦楽を共にした先輩だ。
「まだ歌舞伎が不況だった頃。初日の観客席をみんな恐る恐る指の間からのぞき見て、3階席までいっぱいだった時は抱き合って喜びましたよね。芝居を作る楽しさや舞台の怖さは、2人と兄の(中村)福助の3人に教えてもらいました」
それだけに今回の新三も、三津五郎に教えを乞うことにした。「具合が悪いことは承知の上でしたが、快く了承してくれました」。その願いは結局、実現しなかったが、亡くなる1週間ほど前に電話があった。
本作の演出は現在、二代目尾上松緑と十七代目勘三郎の二つの流れがあり、「君は幸いにも両系統の舞台に立った。それぞれの新三を知っていることは君の宝だ。自分が面白いように演じてごらん」と背中を押された。「大きな宿題だと思っています」
亡くなった後、三津五郎が新三を勤めた台本が届いた。ページをめくると、新三だけでなく、長男の国生くにおにとっても本公演が初役となる勝奴について、三津五郎が病床で記した様々な書き込みがあったと言う。
「復帰会見時に『先輩から預かった芸という荷物を、まだ後輩に渡してない』とおっしゃっていましたが、2人ともに歌舞伎界全体のことを常にお考えになった方。お兄さんの魂をしっかりと受け止めたい」。27日まで。(電)0570・07・9900。
(冨野洋平)
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実父・芝翫丈と義兄・勘三郎丈が亡くなり、実兄・福助丈が長期離脱中。そのうえ、三津五郎丈まで亡くなって、橋之助丈を取り囲む環境はかなり厳しいものがあります。なかなか思ったような役もできずに悔しい思いをされていたのだと拝察します。
そこに、国立劇場からのこのオファー。丈はきっと大喜びでオファーを受諾されたことでしょう。脇役の役者衆に若干ものたらないものがあるのは残念ですが、丈の心意気やよし。好きな狂言ですし、時間を作って見に行くことにします。充実の舞台を期待します。
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