播磨屋ファンとしては、待ち遠しくてたまりません。
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Interview:中村吉右衛門 「古希の弁慶」演じる喜び 「鳳凰祭三月大歌舞伎」の夜の部で「勧進帳」
毎日新聞 2014年02月10日 東京夕刊
「古希(数え70歳)の弁慶をできることになりました」とうれしそうである。歌舞伎座新開場のこけら落としの最後を飾る「鳳凰(ほうおう)祭三月大歌舞伎」の夜の部で「勧進帳」の弁慶を演じる。
歌舞伎座新開場では大役が続いた。昨年4月が「熊谷陣屋」の熊谷直実、同5月が「石切梶原」の梶原平三、同6月が「俊寛」。
昨夏ごろから味覚に異常をきたす「味覚障害」になった。その一因が過労にあったであろうことは想像に難くない。それでも巡業、「義経千本桜」の平知盛、「仮名手本忠臣蔵」の大星由良之助、「弥作の鎌腹」の弥作と次々と大役をつとめた。
そしてこの弁慶。「80歳で25日間(1カ月の興行日数)弁慶をつとめるのが目標で、前段階として古希で、と願っておりました」
能の「安宅」を歌舞伎化した七代目市川團十郎初演の「歌舞伎十八番」物。富樫が関守をつとめる安宅の関に、兄源頼朝と不和になった義経主従が至る。主従は山伏に身を変えている。弁慶は主人である義経を守ろうと知力の限りを尽くす。
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弁慶役者の異名を取った七代目松本幸四郎は父方の祖父。生涯に弁慶を1600回以上演じ、映画にも名演を残す。
「これまでは実父(松本白鸚(はくおう))に教わった播磨(はりま)屋(初代吉右衛門)の能がかりの演じ方をしてまいりましたが、今回は七代目の祖父の型でつとめます」と決意を示す。
「祖父は踊りの名手でした。映画でも体をちゃんと動かし、上げられるところまで足を上げている。少しでも近づければと思います」
白紙の勧進帳を朗々と読み上げ、富樫と緊迫した問答を行い、義経を従者と見せかけるために、あえて杖(つえ)で打ち据える。見せ場は多く、休む時間は全くない。やりがいはあるが、過酷だ。
「弁慶は主人公ではあるが家来。そこが難しい。威張って出て行くわけにはいかないが、小さい人物に見えてもいけない」
富樫が尾上菊五郎、義経が坂田藤十郎の大顔合わせ。富樫へ詰め寄るくだりでは、弁慶が四天王と呼ばれる義経の4人の従者を抑えながら、共に動く。
「全部が一緒になるのが、祖父の映画で見てもきれいなんです。歌舞伎の美です。それには弁慶をやる人間に力があり、この人についていけば、とならないとだめです。でも、それをやりたい」と一段と力をこめた。
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かくも「勧進帳」に心ひかれるのは、弁慶という人物が好きだからと言い切る。「義経を守りぬく。忠義というより、愛情を感じます。それに名曲です。昔の方の作曲力、作詞力、演技力。すべてすごいと思います。私も匹敵する作品を作りたいですが、なかなか難しいですね」。
昼の部では「身替座禅」の奥方玉の井を演じる。夫山蔭右京にほれぬく、ちょっと焼き餅焼きの女性である。右京は菊五郎。
3月2~26日。問い合わせは0570・000・489へ。【小玉祥子】
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吉右衛門丈が弁慶を勤めるのは、2009年2月の歌舞伎座公演以来5年ぶりのこと。これを見逃すと、またしばらく見られない可能性があります。絶対に見逃さないようにしないといけません。
今月、丈は歌舞伎はお休み。でも、今年9月公開の浅田次郎原作の劇映画『柘榴坂の仇討』で主演の中井貴一を相手に井伊直弼を演じていて、休むときがありません。ファンとしてはこの過密スケジュールが心配になります。3月に元気な姿の丈を見させてもらいましょう。
いまからワクワクしています。
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