中国が一方的に尖閣諸島を防空識別圏に入れたことで、日本の新聞がこぞって社説で批判しています。記録しておきましょう。
まずは、これまで中国にすり寄る論調が多かった毎日が、いちばんきつい社説を書いています。どういう態度変更でしょう。
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社説:中国防空識別圏 危険な挑発行動やめよ
毎日新聞 2013年11月26日 02時33分
中国国防省が東シナ海の大半に防空識別圏(ADIZ)を設定した。圏内を飛行する航空機が国防省の定める規則に従わないと戦闘機の緊急発進を行うという。
きわめて乱暴で危険だ。東シナ海上空は、これまで半世紀以上も日本、韓国、台湾の防空識別圏が存在し、それによって平和な秩序が保たれてきた。防空識別圏について国際法上の根拠はまだ確立していないとしても、長い実績がある。
それを中国が一方的に、武力によってこの空を排他的に占有すると宣言した。アジアの安全に挑戦する挑発的な行為といわざるをえない。
東シナ海は沖縄の在日米軍基地にも近い。北朝鮮のミサイル危機が起きると東シナ海上空を日米の戦闘機、警戒管制機が飛ぶ。中国はそのたびに戦闘機を緊急発進させて追い出すつもりか。米中の武力衝突がどれほど危険なことか、「富国強兵」の国策に浮かれる中国の指導部に頭を冷やしてもらいたい。
米国が懸念するのは当然だ。6月の米中首脳会談で、米中は「新型大国関係」を確認し、米国は太平洋で中国海軍が行動することを認めた。だが、西太平洋が中国の縄張りになったわけではない。国際ルールに不慣れで危険な独善的行動の目立つ中国軍が洗練された行動をとることが前提だろう。
中国艦隊が外洋で行動するには、その上空を管制機や護衛機、対潜哨戒機が飛ぶ必要がある。外国軍を中国大陸に接近させない「接近拒否戦略」だけではなく、外洋進出のためにも中国軍は東シナ海、南シナ海の制空権がほしいのだろう。中国軍は太平洋上で米中対決を望むようにみえる。このさい米国ははっきり警告のメッセージを出すべきだ。
日本政府は、中国政府に防空識別圏の撤回を求めた。防空識別圏自体は領土主権とは違うが、圏内に日本の領土である尖閣諸島が含まれている。島の上空で中国軍用機が行動することは明らかな主権侵害になる。島の領有権紛争を棚上げにするというこれまでの中国政府の主張に照らしても筋が通らない。
識別圏に領土問題がからむのは韓国も同様だ。中国は識別圏を白紙にし、そのうえで自国識別圏設定について先発各国に協議を求めるのが常識だ。日中には米中のような軍事対話がないことも危うい。日米、米韓は同盟関係にあり、中国との軍事摩擦が米国を巻き込む可能性は大いにある。
習近平政権は中国が米国をしのぐという「中国の夢」に酔っている。だが、中国自身の高度成長を可能にしたのはアジアの平和秩序があったればこそだ。それを破壊するとは、暴力的な文革の夢を見ているのか。
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毎日ほど中国批判は強くありませんが、他の新聞も同じ論調です。なぜか産経だけはこの内容で社説を発表していません。とはいえ、朝日は、やっぱり中国大好き。甘いです。
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中国防空圏―無分別な線引きやめよ
朝日新聞 2013年 11月 26 日(火)付
いまの日本と中国との関係に必要なのは、互いに信頼を取りもどすための賢明な方策だ。
逆に不信を増幅させる行動に走るようでは、問題解決の意思があるのか疑わざるをえない。
中国国防省が東シナ海に防空識別圏を設けた。不審な航空機の領空接近を警戒するため領空の外側に設ける空域である。
長らく維持されてきた日本の識別圏と大きく重なり、しかも日本の領土である尖閣諸島を含む形で線引きしている。
隣国の識別圏に重ねる一方的なやり方が受け入れられるはずがない。中国はこの措置をみずから見直し、撤回すべきだ。
昨年9月の日本政府による尖閣国有化以来、中国側は主に船によって日本領海を侵犯する行為を繰り返してきた。
海上行動での領有権の主張に加え、次は空でも、というのでは無分別にすぎる。
中国側には、大陸と日本列島の近さから、「船や飛行機がちょっと出ただけで文句を言われる」との不満があるようだ。
だが今回は、単に日本付近を通過するという話ではない。尖閣上空で実力行使も辞さないと宣言しているようなものだ。
空のトラブルは船よりずっと危ない。南シナ海では01年、米中の軍用機が接触し、中国の操縦士が死亡する事件が起きた。
米政府は今回の識別圏の設定について「東シナ海の現状を一方的に変えようとする行為だ」と中国を非難している。当然の対応である。
米国防長官は、尖閣問題に日米安保条約が適用されることも明示した。中国への牽制(けんせい)には強い危機感が表れている。
中国側は「現状変更したのは日本だ」と主張しているが、日本政府による国有化は、識別圏のような軍事的に重い意味のある現状変更には当たらない。
これまでも中国軍機はしばしば日本の識別圏に入っており、自衛隊機の緊急発進は昨年度だけで306回にのぼる。
今回の識別圏の設定は、これを制度的に既成事実化しようとしているようにもみえる。中国は、日米安保体制を試すかのような危険な行動を慎まねばならない。
一方、日本側も、挑発に乗ってはなるまい。国際的に空の識別圏をめぐっては、とくに隣国同士の場合、防衛当局間の対話でトラブルを避ける運用を取り決めることが珍しくない。
日本政府は中国に識別圏の撤回を求めるだけでなく、不測の事態を避けるためにも、政府間の意思疎通を修復する道筋をねばり強く探るべきだろう。
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当たり前といえば、当たり前。でも、「ねばり強い」交渉が通じる相手かどうか、もう少し考えて社説を書いてくれないと。中国の暴走を招いた責任の一端が間違った歴史問題にあり、その間違いを拡張した責任の大部分は朝日新聞にあるのですから。
読売は、毎日ほど中国を批判していませんが、さすがに対中防衛を強めよという具体的策を提示しています。
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中国防空識別権 容認できぬ一方的な現状変更(11月26日付・読売社説)
2013年11月26日01時45分 読売新聞
中国が、沖縄県の尖閣諸島上空を含む空域に防空識別圏を設定した。
東シナ海の現状を一方的に変更する措置であり到底容認できない。
防空識別圏は、領空侵犯を防ぐため、日本など各国が独自に定めている。領空の外側に設定され、不明機に緊急発進(スクランブル)を行うこともある。
問題なのは、中国の設定した空域が、尖閣諸島周辺の日本の領空を含み、日本の防空識別圏と重なっていることだ。
日本政府が、中国大使を呼んで、厳重に抗議し、設定の撤回を求めたのは当然である。安倍首相は、中国の発表した防空識別圏を認めないとの考えを表明した。
中国は、防空識別圏内で指示に従わない航空機には武力による緊急措置を取ると威嚇している。
互いに緊急発進した自衛隊機と中国軍機が接近した場合、偶発的な軍事衝突が発生する恐れすらあり、危険きわまりない。
中国は、防空識別圏の設定を「国家主権と領土・領空の安全を守る」ためと述べ、日本の抗議をはねつけている。尖閣諸島を巡り新たな既成事実を作り、対日圧力を増す狙いがあるとみられる。
習近平政権は内政面で、経済格差などへの国民の反発に直面し、苦境に立たされている。威圧外交により、国民のナショナリズムを刺激して、政権の求心力を高めようとしているのではないか。
中国の今回の行動は、東シナ海などを勢力圏として囲いこみ、米軍の接近を拒否する軍事戦略を具現化したものとも言える。日米同盟に対する重大な挑戦である。
ヘーゲル米国防長官は「地域の現状を変えて不安定化させる企てだ」と批判する声明を出し、米国の対日防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条が尖閣諸島に適用されることを改めて強調した。
米国が、中国に対して、同盟国である日本の領土を守る強い意思を示したと言える。
尖閣諸島周辺の空域では、中国機が昨年12月、初めて日本領空を侵犯した。中国機に対する航空自衛隊機の緊急発進の回数も大幅に増えている。今年9月には、中国の無人機が確認された。
日本は、米国と連携し、尖閣諸島周辺の空域で警戒を強化する必要がある。那覇基地のF15戦闘機飛行隊も増強すべきだろう。
尖閣沖では、中国公船の乗組員が今月、中国漁船に乗り込み、自国の排他的経済水域内であるかのようなアピールをした。海上の監視態勢も緩めてはなるまい。
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最後に、日経です。これも、朝日よりも厳しく中国を批判しています。
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中国防空識別圏は極めて危うい挑発だ
日経新聞 2013/11/26付
東シナ海で高まっている緊張について、中国は尖閣諸島を国有化した日本に原因があると主張してきた。だが、もはや、挑発しているのが中国側であることはだれの目にも明らかだろう。
中国は23日、尖閣諸島を含めた東シナ海の上空に、防空識別圏(ADIZ)を設定した。日本の主権を脅かし、東シナ海の安定を揺さぶりかねない危険な決定だ。ただちに撤回すべきだ。
防空識別圏とは領空を守るため、各国が独自に定めている空域のことだ。不審な航空機が近づいてきたら、戦闘機が緊急発進(スクランブル)し、領空に入らないよう対処する。
国際法上の規定はなく、日本も東シナ海を含めた日本周辺に定めている。中国が設定に踏み切ったのは、こうした事実を踏まえてのことだろう。しかし、この決定は緊張をあおり、偶発的な衝突を招きかねないものであり、受け入れるわけにはいかない。
いちばんの問題は、日本の領土である尖閣諸島を含んでいることだ。中国は23日、さっそく情報収集機を圏内に飛ばし、尖閣の領空に近づいた。中国はすでに監視船を尖閣領海に送るなど、海上での挑発を続けている。こんどは空の揺さぶりも強める狙いだろう。政府が撤回を求めるのは当然だ。
中国が識別圏の運用を本格化すれば、東シナ海における軍事的な緊張が大きく増すことになりかねない。同国国防省の公告は、圏内を飛ぶ航空機が指示に従うよう求め、拒んだら「防御的な緊急措置」をとると警告している。
中国が設定した空域は日本、そして韓国の識別圏とも重なっており、それぞれ自衛隊と韓国軍が日常的に警戒に当たっている。さらに、東シナ海では米軍も情報収集や偵察のため、軍用機を飛ばしている。
中国側の運用によっては、中国と日米韓の航空機が接近することも考えられる。そんな危険を顧みない中国の行動は到底、責任ある大国とはいえない。日本は米国はもちろん、韓国や他のアジア諸国とも連携し、中国に撤回を求めつづけることが肝心だ。
中国が今回、識別圏を設定したのは東シナ海の上空にだけとどまっている。だが、中国メディアによると、中国軍幹部は南シナ海や黄海の上空にもいずれ設ける可能性を示している。だとすれば、アジア域内全体への挑発である。
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中国が異常であることは間違いないこと。そのことを知らしめるためにも、日本は世界に対して中国の横暴な領土拡張帝国主義の過ちを知らしめるべきです。
日本政府は、一切妥協することなく、毅然たる態度で中国の撤回を要求し続けなければなりません。安倍政権は、以前の自民党と民主党の間違った対中政策の尻拭いを要求されていますが、仕方のないこと。中国に翻弄されることなく、適切な態度で対応してもらいましょう。
それにしても、何をしても日本の言い分などどうせ聞かない相手なのですから、安倍首相は堂々と靖国参拝をしておけばよかったのです。それができなかった安倍氏の弱さを中国側が衝いているような気がしてなりません。弱みを見せないように、きっちりとした行動を安倍氏には求めます。
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