▼【ネタバレ有】映画「ミンナのウタ」定番のアイドルホラーにもボーイズグループが乱入
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*今週末(2023年8月11日)公開のため記事に若干手を加えて最新の日付に移動しています。
怪談、お化け屋敷、ホラー映画が夏の3大娯楽な私にとって
Jホラーを代表する「呪怨」の清水崇と「リング」の中田秀夫が近年また活発なことが嬉しい。
8月には清水監督の「ミンナのウタ」が、9月には中田監督の「禁じられた遊び」が待機しており
「ミンナのウタ」にはGENERATIONSが、「禁じられた遊び」には橋本環奈、重岡大毅、堀田真由、倉悠貴らが出演する。
ティーン向けホラーは女性アイドルか若手女優がヒロインを務め、
相手役に若手のイケメン俳優を組ませるのが主流になっている(「富江」シリーズはその典型)が、
「ミンナのウタ」はGENERATIONSのメンバー全員がそのままの名前で出演するという
今ではちょっと懐かしい、アイドル映画の方向性で制作されているのが面白い。
メンバー全員を起用すればファンは熱狂するが、一方でファン以外に訴求することが非常に難しくなる。
ファンの動員だけで商売を成立させるのは危険な賭けであり、トップアイドルにしか許されない企画なのだ。
歴代の同系作品を振り返ってみても
チェッカーズ総出演の「CHECKERS IN TAN TAN たぬき」(1985年)、
おニャン子クラブ総出演の「おニャン子ザ・ムービー 危機イッパツ!」(1986年)、
光GENJI総出演の「ふ・し・ぎ・なBABY」(1988年)、
男闘呼組総出演の「ロックよ、静かに流れよ」(1988年)、
SMAP総出演の「シュート!」(1994年)、
SPEED総出演の「アンドロメディア」(1997年)、
嵐総出演の「黄色い涙」(2007年)、
AKB48から前田、大島、小嶋、秋元が出演した「伝染歌」(2007年)、
ももいろクローバーZ総出演の「幕が上がる」(2015年)と、
いずれも当時人気絶頂だったアイドルグループが主演を務めている。
ただ、作品単体でも勝負できるクオリティだったのは「黄色い涙」「幕が上がる」ぐらいではないかと思う。
上記のリストを見てもジャニーズ以外のボーイズグループが総出演の映画が公開されるのは
チェッカーズ以来の快挙であり、本作の興収次第では他のグループに波及する可能性も十分あるだろう。
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(c)2023「ミンナのウタ」製作委員会
「ミンナのウタ」は「呪怨」「犬鳴村」の清水崇と角田ルミの共同脚本によるホラー映画。
ラジオ局の倉庫で「ミンナノウタ」と書かれた古いカセットテープを見つけて以来、
GENERATIONSのメンバーの身に次々と恐ろしい現象が襲いかかる。
GENERATIONSのメンバーは片寄涼太、小森隼、佐野玲於、関口メンディー、中務裕太、数原龍友。
事態解決に乗り出すマネージャー役には早見あかり、調査を依頼される探偵にはマキタスポーツ。
本作の要となる人物を演じるのは、穂紫朋子。その母に山川真里果。
この二人はかなり頑張っているので名前を覚えておくと良いかもしれない。
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*以下はストーリーに触れています。
事前情報なしに観たい方はここまでで止めることをお勧めします。
ストーリーは「リング」から始まる「呪いの●●」の変形で
今作ではアナログなカセットテープに残されたメロディがキーアイテムになっている。
のだが、このメロディがあまり本編に深く絡んでこない。
聴くと呪われるようだが口ずさんでも死ぬわけでなし、何かを通じてより広く伝染していくわけでもない。
「悪魔が来りて笛を吹く」や「着信アリ」のメロディのようにキャッチーでもなく耳に残りにくいのも難。
呪いの主も「呪怨」の伽倻子のように誰彼構わず取り憑いては片っ端から手にかけるわけでもないようだ。
GENERATIONSのメンバーだけはちょっと怖い目に遭うが、
「怖い目に遭う」だけで誰も命までは取られないマイルド呪怨ぶりで
すぐ近くで事態を見守っているマネージャーや探偵に至ってはほぼノーダメージである。
結局、このカセットの持ち主が何をしたかったのかがよくわからないので
急に母性が爆発し「リング2」的な解決法を試みる早見あかりの奮闘も空回りしてしまっている。
そもそも、せっかく録音したメロディをなぜラジオ局に送ったのだろう。
どの番組に送ったのか、その番組のパーソナリティのファンだったのか。
何も語られないのは何故だろう。
私が探偵(マキタスポーツ)なら、テープの持ち主の少女が最初に送った番組を調べ
その番組のパーソナリティまで遡って会いにいき、解決のヒントを聞こうと考えるが
なぜか怖い目に遭っているのは少女とは面識のないGENERATIONSのメンバーであり
無差別の呪いかと思いきや手にはかけない。どうして欲しいのかも皆目見当がつかない。
(c)2023「ミンナのウタ」製作委員会
布団をめくったらドーン、風呂場でどーん、走ってきてドーンと
過去の清水崇作品で見たホラー演出がスポット的に出てくるので
その場面だけはちょっと怖いが、「呪怨」が放っていた作品全体を覆う禍々しさは微塵も感じられない。
佐伯家の階段が怖い押入れも怖い、伽倻子も亭主も俊雄もみんな怖いというような息苦しさとはレベルが違う。
(ちなみに本作にも「としお」という名前が登場している。
家の作りもどこか佐伯家に似ているのは、清水監督のちょっとしたお遊びだろう)
GENERATIONSの歌が多用されるのはアイドル映画なので良いとしても
カラオケの画面のように、ご丁寧に作詞・作曲のクレジットと曲に合わせた歌詞まで表示されるので
きっと歌詞に物語を解くヒントがあるのだなと必死で覚えたにも関わらず
白浜「あの曲はカップリングなんですよ」
探偵「カップリング?」
マネ「昔でいうB面ですよ」
探偵「B面?B面だ!」
でカセットのB面を再生してストーリーが進むという驚愕の展開。
歌詞まで表示される演出は本編とは全く関係なかった。
探偵のくせにA面しか聞いてなかった事実にも脱力するしかない。
「リング」が「貞子3D」になり、今や貞子は野球をしたり写真集を出したりと
キモカワキャラとして若年層に人気を集めている。
嫉妬に狂った夫に惨殺された伽倻子と、息子の俊雄とマー(猫)の悲劇の舞台である佐伯家。
ア”ア”ア”の音は、正気を失った夫に首を掻き切られたためにまともに発声ができない
伽倻子の声であるという完璧過ぎる設定は、
洒落になら無さすぎて今の若者には敬遠されてしまうのかもしれない。
「怖かったねー」で5分後にはカフェでお茶をしながら
誰がカッコ良かったかに花を咲かせられれば良いのであれば
本作はアイドル映画の在り方としては正しい。
大真面目に作ればこの題材で怖いホラーも作れただろうし
その片鱗があるだけにホラー好きとしては勿体ない気もするのだが
まぁそれは清水監督の別の作品に期待することにしよう。
映画「ミンナのウタ」は2023年8月11日より公開。
▼「ミンナのウタ」のDNAを引き継ぐ続編的ホラー「あのコはだぁれ?」2024年7月公開
臨時教師として夏休みの補習授業を担当することになったヒロインが恐怖体験をする
志水監督の新作ホラー「あのコはだぁれ?」が2024年7月より劇場公開。
夏になると見たくなる「学校の怪談」から続く学園ホラーの定番である本作の主演は元NMB48の渋谷凪咲。
共演は早瀬憩、山時聡真、荒木飛羽、マキタスポーツ、染谷将太。
ヒロインが受け持つことになったクラスに在籍していないはずの女生徒が現れて
数々の怪現象が巻き起こる本作の鍵になっている人物が、32年前に両親に殺された高谷さな。
「ミンナのウタ」に登場する少女の霊と同一人物である。
早見あかりと共に少女について捜査していた探偵のマキタスポーツ、
高谷さなの通っていた学校の校長・権田、さなの弟で「呪怨」の子供と同じ名を持つ俊雄、
自販機の下に隠されていたノートなど、「ミンナのウタ」と接点を持つ人物やアイテムが続々登場するが
「ミンナのウタ」の伏線を回収する解明編かと言えばそれほどでもなく
清水監督の言う「DNAを引き継いだ作品」という表現がもっともしっくりくる。
伊藤潤二の「富江」のように、完全なパラレルでもないし、完全な続編でもない関連作品として
辻褄合わせにこだわるのではなく、ある程度は割り切って楽しむのが良いかもしれない。
「あのコはだぁれ?」は単体としても楽しめるし、「ミンナのウタ」との接点を探り
自分なりのストーリーを補完するマニアックな楽しみ方もできる。
「呪怨」や「リング」のようにナンバリングをつけていないのは、清水監督なりの遊び心なのだろうし
まさかの2作目で意外な広がり方を見せた異色のホラーと言えるだろう。
清水監督は「犬鳴村」から2作続けて同じ切り口の作品を発表し、三部作としたので
もしかすると本作の続編もすでに進行しているのではないか。
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