日米金融政策イベントを前に、市場ではドル高・円安方向への圧力がかかりやすいとの見方が広がりつつある。17-18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で25ベーシスポイント(bp)の利下げは確実視されているが、粘着的な米インフレを背景に2025年のFOMCメンバーによる政策金利見通し(ドットチャート)がタカ派方向に振れる可能性があり、市場のドル買い・円売り材料となる可能性があるからだ。
また、18-19日の日銀金融政策決定会合で政策金利の維持が決まるとの見方が市場で大勢を占めているが、来年1月会合での利上げの可能性をめぐり、植田和男総裁が19日の会見で方向性を明確に示さない場合は、ドル買い・円売りが加速して「160円が視野」という見方が急浮上することもありえる。いずれにしてもドル高・円安方向に動きやすい市場心理に傾いていると筆者は指摘したい。
<注目されるドットチャート、市場の織り込みは25年の利下げ2回>
今回のFOMCについて、市場ではほぼ100%に近い水準まで25bpの利下げが織り込まれている。したがって焦点は25年の利下げ幅に集中しているが、市場の織り込みは25bpの利下げ換算で2回分を織り込んでいる。
前回9月のドットチャートの25年12月末の中央値は3.25-3.50%だったが、足元における経済データからみたインフレの粘着性を考慮して、その水準がどこまで上がってくるのかに注目が集まっている。
マーケットの織り込みは3.75-4.00%付近となっているが、そこまでドットチャートの中央値が上がってくるのか、それとも3.50-3.75%に抑えられるのか見方は分かれている。
<パウエル議長会見、利下げ期待のコントロールできるか>
また、メンバーの中に25年の利下げ回数ゼロと予想する人が、いるのかどうかも大きなポイントになる。仮にそのような見方のメンバーが存在した場合、来年1月のFOMCで利下げが見送られたとして、3月以降の会合で本当に利下げできるのかという疑問の声が市場で浮上しかねず、イールドカーブ全体を押し上げる可能性も出てくるからだ。
実際、市場の織り込みは12月の25bp利下げを前提に、来年1月は4bp、3月に14bp、5月になってようやく26bpとなっている。
パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は18日の会見で、25年もインフレ懸念の鎮静傾向持続を前提に利下げ方向の政策運営を確認すると思われるが、記者との一問一答の中で利下げペースの緩和や一時休止につながるような発言が出れば、市場はドル高方向に反応し、対円でも円安が進みやすくなると予想する。
<1月利上げの可能性はどの程度か、注目される植田総裁会見>
一方、12月の日銀金融政策における利上げの可能性について、市場の織り込みは4.5bp(18%)と政策維持との見方が大勢となっている。ただ、来年1月に関して17bp(68%)と織り込みが進んでいるのが特徴だ。
FOMCイベントをこなした後の日銀総裁会見は、今年最後のビッグイベントとして内外の市場参加者の関心を集めることになるが、1)12月会合で利上げを見送った理由、2)その理由を前提に1月会合で利上げする可能性がどの程度あるのか、3)国内経済は日銀の見通し通りに推移している(オントラック)と言ってきたが、どこまで進めば利上げが可能と判断できるのか──という質問が記者から提起される可能性がある。
植田総裁が1月利上げの可能性に関連して「データ次第」と答える可能性があるとみられるが、それがどのデータを指すのかという質問も当然、出てくると予想され、どこまで具体的にコメントするのかも注目点の1つになるだろう。
<1月利上げの可能性後退なら、円安進展の公算大 161.96円意識の声も>
ここで、市場の受け止めが「1月に利上げをするかもしれないし、やらないかもしれない」となれば、会見中やその後にドル/円が大きく振れる可能性は低下すると予想する。
だが、総裁会見の全体的な印象として、1月の利上げにも消極的という受け止めが多くなると、マーケットの動向は大きく変化するだろう。そのケースでは、ドル高・円安方向に振れる可能性があると筆者は予想する。1月の織り込みが68%と高いため、その可能性が低いとみれば、円売りが優勢になるからだ。
会合直前のドル/円の水準にもよるが、11月15日に付けた156.75円が最初の円安のメドと意識さるだろう。仮にそのポイントを短期間にブレークすれば、マーケットの目は7月3日に記録した今年のドル高・円安の天井である161.96円に移るだろう。
このように短期的にドル高・円安方向のバイアスが強まっている中で迎える日米金政策イベントは、日米中銀トップの会見のニュアンスによっても振れ幅が大きくなりやすいと予想している。