一歩先の経済展望

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18%に低下した12月利上げ織り込み、日銀総裁会見後に1月の期待後退なら円安進展へ

2024-12-12 13:55:53 | 経済

 12月の日銀利上げへの期待感が急速に後退し、ドル/円が152円台へとドル高・円安方向にシフトしている。仮に19日に日銀が政策維持を決め、来年1月の利上げの可能性を質問された植田和男総裁が会見で来年の春闘の結果を見極めたいと述べたら、1月利上げの機運も後退し、円安方向への市場のパワーが強まると予想する。日銀の政策見極めの期間が長期化するのかどうか、19日の植田総裁の会見は内外の注目を集めそうだ。

 

 <12月利上げ織り込み後退>

 市場の12月利上げに対する思惑は、足元で急速に後退している。12日には4.5ベーシスポイント(bp)と18%まで低下した。時事通信が今月4日、日銀内では「拙速な利上げは避けるべきだとの見方が、ここにきて広がっている」と報道し、一時は17bp(68%)まで織り込まれていた12月利上げの思惑が一気に6.5bp(26%)まで急降下した。

 その後、11日にブルームバーグ、12日にロイターが相次いで利上げを急ぐ必要がないとの見方が日銀内で広がっていると伝え、市場の見方は「12月利上げ見送り」で固まった。

 

 <152円後半まで進む円安、利上げ決断なら株安の予想も>

 ただ、その一方でドル/円はじりじりとドル高・円安が進み、12日午後3時過ぎには一時152.70円前後まで水準が切り上がった。

 ブルームバーグは11日の記事の中で「今後公表されるデータや為替相場の動向次第では、来週の金融政策決定会合での実施の可能性もある」とも指摘しており、週明けにかけて円安が一段と進んだ場合は一転して利上げの決断をする余地があるとの見方も併記している。

 一部の市場関係者は、12月の織り込みが20%を切った現状で利上げを実施すれば、市場が株安などで反応するため、利上げは難しいとの見方を示している。

 他方、別の関係者は想定外の12月利上げがあったとしても、日経平均株価の下落は3万8000円台で止まって大波乱にはならないとみている。

 

 <重要な「次の利上げ」への期待感、1月は76%織り込み>

 筆者は、日銀が12月利上げを見送った場合に重要なのは「次の利上げ」への期待感へのコントロールではないかとみている。

 市場の12月利上げの織り込みは大幅に低下したが、1月は19bp(76%)と織り込みが進んでいる。12月は見送りだが「1月は利上げする」という市場参加者が多数であるということだ。

 

 <「春闘見たい」など3月利上げ連想させれば、円安進展の可能性>

 もし、19日の会見の段階で1月利上げの可能性を後退させる発言を繰り返した場合、円安進展の加速が予想されると考える。

 現状では、3月利上げの織り込みが24bp(96%)となっており、その後の織り込みは12月末になっても47bpと進んでいない。つまり、1月の織り込みが大幅に低下するとその先の織り込み曲線も急速に低下し、ドル高・円安の加速に弾みを付けかねないことになるということだ。

 例えば、次の利上げのタイミングに関して会見で質問され、植田総裁が「来年3月の春闘の結果も見たい」と発言すれば、市場は3月利上げのタイミングに着目し、1月利上げの期待感が後退することになると予想する。

 このケースのような会見内容になれば、会見中から円安が急速に進行すると予想する。会見前のドル/円の水準にもよるが、現状程度の152円台なら市場の目は「155円突破の時期」に集まり、政府・日銀のドル売り・円買い介入の実施の可能性なども話題に上るだろう。

 米政権の交代時期に日本政府の「介入実施が難しい」という思惑が浮上すれば、短期的に「160円も視野」という声が浮上することも容易に想像される。

 

 12月の日銀金融政策決定会合でどのような判断が下され、植田総裁から25年の展望について具体的なイメージが示されるのかどうか。内外の市場参加者は、植田総裁の発言の微妙なニュアンスの変化も聞き漏らさないように耳を傾ける予想する。

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