笑うしかない友
~変装
客1 やっ。オオマメだ。おい、オオマメ。どこ、行くんだ。終点までか。
客2 誰だね、君は。
客1 誰だって聞いたね。そうです、あんたが変なおじさんです。
客2 離れろ。
客1 マスクして眼鏡掛けててもわかるんだよ。
客2 何が。
客1 変装するんなら帽子被らなきゃあ。
客2 帽子がどうした。
客1 寒くない?
客2 ない。
客1 じゃ、夏暑いよね、直射日光。
客2 消えろ。
客1 この禿!
客3 そこの坊や、口を慎みなさい。
客2 オオマメとは何ですか。
客1 オオマメコマメのオオマメさんですよ。
客2 何ですか、それ。
客3 漫才師さんです。
客2 その一人に私が似てるんですか。何でしたっけ。
客3 オオマメ。でも、この子は間違ってます。ちっとも似てません。
客2 じゃあ、何で、こいつは。
客3 相方さんと間違えてるんでしょう。
客2 相方って、ええっと、オオマメじゃなくて。
客1 コマメだよ。コマメは禿げてないよ。
客3 禿げてます。あっ、失礼。
客2 いえいえ。
客3 それに、オオマメさんは今コロナで入院してますよ。
客1 じゃ、逃げ出したんだ。
客3 えっ、本当?
客4 あんた、オオマメコマメか。
客2 いえ、私は一人。
客4 どっちの一人だ。
客2 どっちでもないんです。マスク取ってお見せしましょう。
客3 きゃあ! コマメ。
客1 やっべ! オオマメ。
客4 いずれにせよ、逃げろ!
客5 正しく逃げろ!
客2 はあ。助かった。密を避けるうまい方法がわかったぞ。オオマメだかコマメだかのふりをすればいいんだ。誤解する阿呆が悪い。こっちは悪くない、全然。うむ。しかし、一応、検査しておくか。……その前に帽子買おう。
(終)