まずね、「乗馬」と「馬術」は違う、んですよ。そう思います。
巷の乗馬クラブが教えてているのは「乗馬」じゃありません。おおむね「馬術」なんです。一般的には西洋馬術、つまりオリンピック競技種目にある系の馬術ってことになります。馬場馬術は初級だと40m*20m、3課目より上のクラスで60m*20mの馬場に複数ポイントがあって、そのポイントポイントであれこれ歩様を変えて演技する。つまり、馬場をやりたければ、少なくとも60m*20mの馬場があるクラブじゃないと、上のクラスなんかできっこない(リハーサルができませんから)ということになります。これは採点競技で減点法ですね。
障碍飛越は、馬と一緒に障害を飛び越えるんですけど、その障害が馬場の中にあれこれ置いてあって、コースを間違えないよう走行・かつ障害を壊さないように走行せよ、一番速くて障害を壊さなかった人馬の勝ち。まあ、採点法には色々ありますが。
これに野外で野外用の障碍をあれこれ造って飛び越えて、というのをくっつけたのが総合競技というもので、3日間もかかる。馬の消耗は激しいし、大怪我したり死んだりもしかねない所のある競技。この辺がオリンピック種目。まあ、こういう競技を念頭に置いた馬術を教えてる、らしいんですが(実際の「馬術」レベルは置いておいて)。
これとは別に、主にアメリカ発の実用由来のウエスタン馬術があって、これにも色々な競技があります。駆歩で技を競うもの、障害物をまたいだりバックしたり、という方向の技術を競うもの、競技はあれこれあるけど、この馬術はクオーターホースという種類の馬が向いているとされていて、日本に多いサラブレッドがこういう系統のクラブにいることは、まずない。
西洋馬術を教えている(とは全く言ってないんですけど)乗馬クラブが多いのは、馬側は競馬落ちサラが割と簡単に安く手に入って馬をそろえやすい事、サラができる競技が西洋馬術系にどうしてもなりがちという事(これは体格的な問題が大きい。背の高い馬はレイニングなんかやったら足を骨折しかねないから)、人側は、高校大学の馬術部がほとんど西洋馬術ばかりやってて、他を知らない事、そこら辺からクラブ指導員の人材を引き込んでる事、あたりが理由かなあと。ウエスタン用の馬は、結局輸入せざるを得ない(内国産馬は雑種になっちゃうことが多いようだ)から、クラブをつくること自体がかなりカネがかかるし、維持存続もなかなか難しいところがあるかもしれない。
じゃあ、客側はどうか。馬に乗って何したいのか?という事について、乗馬(習い始めの頃は、だーれも「馬術」を習っている、とは考えていません)を習い始めから明快なイメージがある人って、ほぼいないんじゃないかと思う。自分もそうだったですけども。そりゃそうで、まあ今はそうでもないですけど、ついこの間まで、「馬に乗って何をするのか?」についてのまともな情報がほぼほぼ手に入らなかったから。
あと、どっちの系統のクラブでも、とにかく駆歩辺りまで乗り手が馬をコントロールできないと競技どころではない、ということで、基本をやってください、という目的(だと思うんだけど)で設定されているのが全乗進の級制度ですね。5級なんていうのは簡単に取れます。テストがあるのが3級からで、3級をクリアすれば、まあまあ競技くらいできるでしょ、という話になる、筈なんですが・・・・・・。それ以前で挫折・あるいは落馬して大怪我してやめる、パターンが圧倒的多数なのが客側の実情でしょう。それどころか、10年近く乗ってるのに、未だ駆歩も出せない、という人が多いのだ。馬術を教えるクラブで乗馬もできず終わる、というおかしなことになってしまっている。
一方、「乗馬」ができないと競技にならないのが「エンデュランス」や「トレック」。これは外乗の競技化したものと考えていいと思うんですが。エンデュランスをやっている人は、なんとなく「馬術ができないもんだから・・・」というような、妙な劣等意識を抱えてる事があるそうです。これも、ヘンな話ではある。
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