ひまわり畑を走っている。
背の高いひまわりの間を、
汗を光らせながら、
どんどん走っている。
一体どこに向かっているのか、
少女は、白い光に向かって、
どんどん進む。
突然、強く後ろから引っ張られて、
体が宙に浮く。
うわっ!と声を上げて、思わず振り返る。
後ろにも、どこまでもひまわりが広がっているけれど、
その向こうから、
まっすぐに、太い綱が腰に巻き付けられていることに気付く。
どこからつながっているのか、
まさに、運動会の綱引きで使うような立派な綱だ。
「だめよ」と優しい声がする。
まるで空全体がスピーカーになったように、
空間全体から声がする。
「あれ?」と少女は思う。
「お母さん?」
・・・・・・・・・・・・・・・
ふと、あの、光を見たときのことを思い出す。
あのとき、
私は確かに綱を離した。
いつ終わるともしれない苦しみから
楽になりたかったのだ。
でも、
その綱を離さない手があった。
白く、やわらかいその手は、
これ以上ない力を込めて、
私へと続く綱を握りしめていた。
見ると、私の腰にしっかりと巻き付けてあった。
ああ、お母さん。私の命綱、握ってくれてたんだね。
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思わず涙が流れる。
その方も、静かに涙を流していた。
互いに、母を想いながら。
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