病室のベッドに横たわっている。
目を開けると、
白い着物に黒い羽織をふんわりとまとった『寿命』が、
空から降りてきたように、宙に浮いている。
両手を広げながら、
こちらに向かってくる。
ちょっと笑ってしまうのが、
真っ白なお面の真ん中に
縦書きで『寿命』と書いてあるのだ。
ああ、と思う。
そうなのか、と思う。
『寿命』は、こんなにも優しいものなのかと思う。
たとえ『寿命』を拒否しようと、
ただただ、うなずいて、
どこまでも優しく、その腕に抱える。
何も言わない。
表情も分からない(お面なのだから当然だけど)。
やっと、やっと楽になれるのか、と思う。
よく頑張ったと思う。
こうやって、ゆけるのかと思う。
そう思ったら、
心から安心した。
ただ、任せて、静かに目を閉じる。
何もかも穏やかだ。
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目を開ける。
私の前に座る方も、
私も泣いていた。
何も言わないが、
ただ、涙した。
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