2020年11月末、Youtuberとしての活動比重が大きくなっていた[宮迫博之と中田敦彦の2人+ゲスト Youtuber]という形の持てるものを結集させたようなYoutube番組「WinWinWiin」が始まった。
第一回 【宮迫×中田】手越祐也(前編)〜ジャニーズ退所の真実!〜【Win Win Wiiin】
初回のゲストはその夏ジャニーズを退所した手越祐也で、これまでの活動の中で考えていたこと、その手法、そして展望、というパートを、厳密に区分けしない程度にトークしながら中田のプレゼンに沿う流れで進める具合だった。
箱や観覧があることを含めてほぼテレビ番組を2人の自腹で出しつつ、通販サイト運営を主にするロコンドにスポンサードしてもらうことで完成させた、ある意味でケンタッキーフライドチキンの創業時みたいな出発点から始まった、大がかりな番組だった。そこについては多くの人が諸々述べているので私はあれこれ言わない。
ちょっと気になるようになってきた、というより消化不良感が出てきたのは4回目のゲスト・ヒカルが登場してから。ちなみにゲストは、
第1回・手越祐也、第2回・西野亮廣、第3回・山本圭壱、第4回・ヒカル、第5回・朝倉未来、第6回・てんちむ
である。ゲストの選択が悪いというつもりは全くない。
ヒカルに関しては自分のYoutubeでしょっちゅう展望について触れるし、実際に多様な行動を起こしていて最早実業家とみなしてもいいくらいだ。時に触れて自分のこれまでのことを語っている。例えば一発屋芸人がその後不遇な暮らしをして糊口をしのいでいる状況に中田と宮迫は同情的だったが、ヒカルは”自業自得”と言った。”甘い汁を吸いに来てうまく行かなかったのなら自業自得、普通に働くのは大変”というようなことを述べている。
そこを中田、宮迫はあまり触れていなかったが、ヒカルが自分の過去を動画で振り返っているところによると、高卒ですぐ工場に就職し洗脳教育みたいなところにおかしさを感じて退職し、大金を手にするためには労働者の立場から外れないといけないという考えに触れたことで自立志向が生まれ、引っ越しのバイト、デリヘルの運転手などのバイト生活やFXで失敗し借金生活を送ったりもする中でゲーム実況者の一攫千金感と自分の優位性を感じてYoutubeにゲーム実況者として参入、いろいろあって現在に至る、という来歴を見ることができる。
つまり華やかではない道を通って今のキャラクターが存在している。
気になったのはそこで、自分の苦労自慢というのは年寄りのみっともない面があり、そこを語るより展望を語る方がいいのかもしれないが、ヒカル自身の今後の展望や進行中の企画、仕事に対する姿勢とかをがつがつと喰っていってもよかったかもしれない、という所だ。
そこが芸能人とYoutuberの一番の違いかもしれないところで、番組を踏み台として自分の目的や展望、あるいは来歴や人間性を押し出していこう、というものが出し切れていない感じがあった。
自分で企画制作するという攻めに強いYoutuberが、番組に呼ばれても攻めに転じることができるかというとそうでもないし、我が強すぎれば構成を壊してしまうのでそういうバランス感覚は必要だが、匙加減的に及び腰なように見受けられた。
実際気兼ねなくおしゃべりできているヒカルの動画「【宮迫×中田】牛牛打ち上げしたら盛り上がりすぎてWin Win Wiiinより長い収録になった…」
の方がWinWinWiinの後編どころが前編ともほぼ変わらない再生数(前編230万、後編170万、ヒカル225万)に至っている。
ざっくばらんとした雑談の中で、中田がシンガポールで生活することや本を出版する時のあれこれなど、間接的に中田敦彦をプレゼンしているような様相になっていて、しかも雑談なので気楽な雰囲気で丁々発止のやりとりがされており、74分ある動画でも飽きる気分は持てなかった。
ここでの動画とWinWinWiinの違いは大枠があることと完全なフリートークという所だが、WinWinWiinでの場合、中田がプレゼンする内容に対してゲストがそうですねこうですね、とQ&Aな感じがあり、それが今までなら平場で自分を出すことに慣れている芸能人・芸人に対して、純粋なYoutuber、Youtuber寄りの他業者だと一歩踏み込んで意見表示しないような感じがあった。
一方司会の2人もどうですか?どう考えてますか?ここまでの事で気になることはありますか?と初回から3回に至るまでの悪ふざけ感が少なく、割と普通にプレゼンしてしまっているのも難しいところだった。これが芸人・芸能人なら多少荒っぽいパスをしても上手に流し打ちしてくれる期待感もあるが、Youtuber相手でも同じようにキラーパスを放れるかという所は未知数で、そこをしくじれないと考えれば結果的にやさしめになるのはやむを得ないのかもしれない。
しかし前後合わせて80~90分かけて、おさらいと感想で終わってしまっているのはあまりに勿体なく感じるし、せっかくYoutuberを呼んでおいて金持ち弄りで終わる程度のテレビ番組と差別化があったはずなのに段々変わらなくなっているのは残念に思う。
第5回の朝倉未来ゲストの際には、本人が平場で大声・明るくというキャラでなく司会2人の芸人ノリに対してもむっつりした雰囲気がある一方で、クローズアップされてない計画性や意外性、本人の目標・展望とか喋るところはしっかり喋っているので、「ゲストを掘り下げて本人が言及し、改めてそこで展望を語る」という番組のコアな部分はきれいに達成できていたように感じた。
第6回のてんちむゲスト回は大きな変更点があった。
中田敦彦シンガポール移住に伴って隔離期間2週間では収録のために日本に来るような生活になる。そこで相方の藤森慎吾に原稿を渡して代理プレゼンをする、というものだ。中田敦彦の代わりの人間はそうそういないが、WinWinWiin司会の代役としては見事にやりきった姿を見れば、もしかしたら司会藤森が増えていくのかもしれない、という期待感があった。
内容自体はてんちむの思い切りのある人生のかじ取りと、そこで培った話題性・認知度ゆえの炎上規模・対応という、まさに波線のような人生の起伏を紹介したものが中心だった。必然、それらに対しての是非・自分の立場から見た真相という部分に番組の内容は集約され、今までの中で最も”展望”という部分に触れていない回になったようだった。
第6回の最たるものが、一番最後に藤森が”何か聞きたいことはないか”という問いに対しててんちむが”特に…”と返した場面で、これが最近のWinWinWiinの突き抜けてない感じを表しているようだった。
つまり、この回は特に”どうですか?どう考えてますか?ここまでの事で気になることはありますか?”という探り探りの感触が強かったのだ。
中田から藤森に変わったということは思考回路は中田準拠なので藤森の立場で突っ込んだことが言いにくかったり、そもそも炎上火消しに奔走し延焼という内容ゆえ明け透けに茶化し込めなかったり、てんちむが”よくよく注意しないといけない”と言ったところで完結してしまったので以降の取っ掛かりがなかったり、そもそも芸人芸能人と同じ感覚で(天てれに出てたとはいえ)話しづらいエンジンのかかりぐあいの温度差とか、顔見知り程度で共演歴もまばらなので距離感を計り難いとか、色々理由は思いつく。
てんちむは現在進行形で信用を取り戻す最中で、Youtubeで配信した内容を言葉尻を捕らえてネットニュースに流されるリスクの高い立場である以上、今後こうして活動をしていきたいとか現在こういう企画をやろうと思ってますという話は出しづらいのかもしれないが、それでも展望やプランを本人の口から聞きたいところでもあったし、その上で司会の2人が話を膨らませる余地があったようにも感じた。
そこが今後の懸念で、これから先もゲストの来歴の掘り起こしと当人の意見の取り上げで話が膨らむ余地が乏しかったら、きつめに撫でるだけで終わるような微妙なフラストレーションが残ったままで番組がぬるくなっていきそうに思えた。だからこそ、今後もYoutuberのみならず業界人も呼びたいということなら当人にもモチベーションと展望をしっかり語ってもらう必要があるし、司会の2人も距離感を詰めて踏み込んだ心中を引き出すよう話題展開することを増やしてほしいように感じた。
長々愚痴ったが結論を言うと、ゲストだからといって受け身にならず動機と展望をしゃべってほしい(そのへんを芸人2人にいじられれば彼らがおいしくしてくれるでしょう)、司会2人は来歴も大事だが”これから”のことを聞き出しつつ、ゲストにいじられて欲しい(主張しやすい雰囲気をつくるために)。あまり来歴のプレゼン部分が多すぎると尋問感が出てきてしまうので。
個人的には非常に応援しているので、このまま先細って終わってほしくない、関わった人みんなが”Winner”になれるように番組を作っていってほしい。