人生エクソダス

なんてことのない日々のこもごもをつらつらと書き連ねたり連ねなかったりする。

プラチナエンド、完結。なんだけども

2021-02-07 00:51:05 | レビュー 漫画・アニメ

 いやあ14巻という数字はそれなりだけどもジャンプスクエアだったことを考えればなかなかの長期連載だったと言える。

 まさか虚無るとは思わなかった。

 いや実写版キャシャーンのイデオンエンドな展開のような、とか。

 あるいは500円x14=9000円とはなんだったのか、とか。

 金返せとは言わないが、メトロポリタンマンみたいなデスゲーム展開から長々、いや本当に長かった。特に教授が本格的に参入した10巻以降の展開は、スラムダンクとかドラゴンボールのアニメが原作喰ってしまって次の展開待つために永遠と須臾を操ったかのような延命展開になったのを想起させてくれた。
 メトロポリタンマンのときは、これからどうなっていくんだろうというスリリングな展開が、バトルシーンも相まって緊張感を持って見守ることができたのだが、教授が登場してこの世界の真実は…と語りだしてから観念的な議論が、ほぼ単行本4冊にわたってああでもないこうでもないと続いてしまったように感じる。

 巻数とか展開とか、昔読んでいた「破壊魔定光」をなぞったといえば双方に無礼だが、

 前半の異世界からの侵入と人類どうしのパワーゲームが緊張感と期待感を持って読み進められていた一方、中盤以降量子論から始まり理屈が先行してストーリーがどうなったのか読み進めるのがしんどい展開になり最後はご破算リテイクという展開

 は、なぞったという言い方をしても差し支えないのではないかと思う。理屈にこだわりすぎてストーリーがあんまりになってしまったのは昨今話題の「サムライ8」でもそうだが、サム8の突っ込みどころはそんな上等なところではなくそもそも登場人物の人格に問題があることなので、同じかと言われればそうでもない。

 雑な言い方をしてしまえば、考えすぎだったのではないかと思う。理屈の整合性を取るために描写を細かく、サイドストーリーも添えて一辺倒ではない考え方の多様性を見せたりするのは丁寧だったが、だからこそメインストーリーは延び延びになった。
 小畑先生の絵で魅せる作風もまた展開が伸びる結果につながってしまった。これに関してはバトル要素があれば必ず尺を喰うし、特に動きを丁寧にやろうと思ったら体感時間が短いのに全体的な尺は長くなっているということは避けられない。
 が後半はずっと議論だった。
 これを諾とできるのは上級者でありよほどのファンでなければ辛いのではないかと思う。「バガボンド」の末期にずっと農作業してる宮本武蔵でもなんだかんだ読めたのは、苦難に対する挑戦という我慢展開が仲間の参加とかそこからくる進歩的な展開とかがあったからだ。「プラチナエンド」後半はずっと出ない結論を絞りだすような内容をアングルを変えて撮影してきた進行の遅さがフラストレーションになっていた。それでもなんだかんだ円満完結かな?と思ったら最後に落として来ましたね。

 いやあ、それまで幸せだったのに最期が不幸だったから今までの幸せがぜんぶチャラになったような、そういう感覚でした。そういえば「デスノート」も最後の最後にご破算になって終わる展開でした。

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楽しかったSSを思い出す 2 デビルサマナー葛葉ライドウ対インキュベーター

2020-06-19 16:56:55 | レビュー 漫画・アニメ

 インキュベーターは孵化機のことでなくキュウべえのこと。つまりこのSSはデビルサマナーのスピンオフ的な葛葉ライドウをメイン登場人物としたまどマギ世界における冒険活劇である。

 葛葉ライドウを知らない?なるほど。こちらをどうぞ。ちなみにデビルサマナー自体にも葛葉ライドウは登場するが、この葛葉ライドウシリーズのライドウのパラレルワールドの末裔だ。なんせ大正20年という架空の世界が舞台だ。懐かしのモダンを楽しめる。ハイカラですね。

 暁美ほむらの時間遡行による影響でアカラナ回廊の時空のゆがみが起き、葛葉ライドウ世界の大正二十年の世界から見滝原へとさながら異世界転生した葛葉ライドウ。魔女と呼ばれる異形の存在と戦う魔法少女の存在を知り、情報収集の過程で見滝原の魔法少女たち、つまり巴マミ・佐倉杏子・美樹さやか、そして暁美ほむらと共闘する。そこで魔法少女の真実を知り、インキュベーターの軛を解き放つための戦いへと挑むことになる。――という話。

 魔法少女の成長度合いは戦い慣れとしてあらわれるが、ライドウの強化は武器と仲魔なので上がり幅が段違い。とはいえストーリーものの主人公として小手調べから本気まで豊富なラインナップをそろえているので、ああジャックランタンは様子見だな、ヴィシュヌやん!本気やねという創作ならではの楽しみ方もできる。

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楽しかったSSを思い出す 1 千早「961プロの、如月千早です。」

2020-06-16 06:11:41 | レビュー 漫画・アニメ

 アイドルマスターシリーズの如月千早が、もし最初に入ったプロダクションが765でなく961プロだったら、という話。

 961プロは主人公サイドが所属する765プロのライバルとして登場する。
 原作的にも「金に物を言わせたレッスン・広報によって充実させたバックアップによって最高のアイドルを作る」ことを目的にしたライバルチームだが、社長である黒井祟男の苛烈な方針と冷酷な損切りによって人望に乏しく、ゲーム的には我那覇響・四条貴音が765に移籍(2でプレイアブルキャラ化)し星井美希も出戻りという状態になった。またアニメでも2から参加したJupiterが離反したりと、社長の執念によって人が離れるというなかなか報われないポジションの存在でもある。

 一方”765プロの社長とは浅からぬ因縁がある”ことは表に出ている情報だが、メタとして「765で事務員をやっている音無小鳥はかつて黒井祟男プロデュースのアイドルだったものの挫折から引退してしまった」という推論があり、有力説でもあり物語的にもおいしいギミックでもあるのでよく使われる。このSSでもこのギミックは使われており、作中後半にその過去が語られることになる。

 如月千早はアケマスの頃からの765のアイドルながら、おしゃべりする時間があるならレッスンしろと真顔で言うようなストイックさと相いれなさを併せ持った孤高の存在で、亡くなった弟のために歌を届けるという遠大な目的を持っていたものの、その過程にある目の前の人に歌を届けることを蔑ろにして挫折を味わうことにもなる存在だ。つまり黒井社長と千早はキャラクターが似ているのだ。

 そうした親和性から割とあり得る話ともいえる「961プロの如月千早」という題材を、如月千早の成長を軸にしつつ、黒井社長の挫折経験からの復活をも絡めてカタルシスに持って行ったこのSSは感動的だった。

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タブロウ・ゲート いよいよ佳境

2019-12-16 20:51:49 | レビュー 漫画・アニメ

↑の画像をクリックすると鈴木理華さんの公式WEBサイトに飛びます。
 「タブロウ・ゲート」というのは鈴木理華さんが月刊プリンセスで不定期?連載している漫画。鈴木理華さんはC-NOVELSつまり朝日ソノラマの小説の挿絵をされている人で、漫画を描くという印象はあまりなかった。が探せばいろいろなイラストレーターの方が漫画を連載されていて、その体裁も思いのほかコマ割りをしっかり配置したオーソドックスな漫画を描かれる方が多い。

 この漫画は盾濱(横浜?)に引っ越してきた少年であるサツキが、分厚い本が突然窓ガラスを破って飛び込んできたと思いきや、それを回収しようとする少女と青年、そして彼女たちを襲う長髪の剣士という序盤からクライマックスな展開から始まる。その青年達は”タブロウ”と呼ばれるタロットの大アルカナをモチーフにした化身のような存在で、本来なら本、つまり窓ガラスを突き破って飛んできた分厚い図鑑の絵として収蔵されているが、本の管理者がそのタブロウたちの真名というべきか本来の名前と言うべきか…を呼ぶ(本から”タブロウを剥がす”)ことによって管理者の従者として召喚される。しかし事故によって本から半数近いタブロウが散逸つまり脱走しており、それらを呼び戻し契約下に置くために、少女レディが銀髪の剣士と戦いを繰り広げていたのだ。

 という出だしから物語が始まる。

 脱走したタブロウたちは契約下に置かれている時と性格が異なる。というよりかなり地に近い性格をしていて、タブロウは管理者に真名を教え、そのタブロウの印象を問い、それによってタブロウと管理者との間で契約が成立する。そしてその印象によって、つまり管理者がタブロウをどう考えているかによって性格が非常に変わる。
 例えばレディと登場したタブロウ・太陽のアレイスターはレディの印象が天上に位置し何者にも怯まぬ剛力の炎”という印象を与えられた事で陽気で底抜けに明るいみんなのお兄ちゃんとなる一方、サツキの印象が万物の父 気高き静寂の王”だったことで理知的で紳士的ながら敵に一切の容赦のない冷厳たる存在となる。タブロウ達はそれぞれに特殊能力を持っていて、アレイスターの場合炎を拳に纏わせるという草薙京みたいな戦い方をするが、その印象によって戦闘力が変わるので、能力的には互角だが対峙した時の脅威は圧倒的にサツキ版のアレイスターの方が高いなど、タブロウという精神的な存在という不定形なところを個性として表現している。タブロウの容貌もまた、アレイスターやエリファスなどの人間の容貌だったり、太陽のモチーフというかハンドルというかという無機物だったりする。

 割とジョジョっぽいというか、擬音の表現は割とジョジョい感じがするし、タブロウ同士の能力バトルと言うところもジョジョっぽいと言えるかもしれない。しかし召喚者によって召喚される者の個性が変わるというモチーフは女神転生というかアトラス全般のモチーフに近い(とはいえペルソナってジョジョだよねと草創期は言われていたらしい)。
 タブロウたちの名前は全部が全部そうかは分からないが、だいたいオカルト・神智学に関係する人物から取られている。例えば↑のアレイスター(太陽)はアレイスター・クロウリーだし、月のエリファスはエリファス・レヴィだ。

 1巻がキャラクターの顔合わせ、それもタブロウ管理者レディとタブロウの”太陽_THE SUN”と”月_THE MOON”の顔合わせとなる導入部だが、2巻以降対立関係となる謎の女性イレイズが登場し、タブロウを狙う存在との暗闘が始まる。そこからタブロウを制作した創造主グランドマスターの存在とサツキとの関係性や、明確に敵として存在する”星_THE STAR”が登場する。

 サツキがタブロウ管理者でもないのにタブロウを剥がすことができる理由がグランドマスターからの血統というあたりが出てきた頃、同時期にワンピースのルフィが貴種流離譚の主人公的な要素があったことから結局主人公はえらいとこの血筋かあという論調があってスレッドが上がったこともあって、「タブロウ・ゲート」もそこをなぞるのかあと少し落胆した頃もあった。タブロウを剥がすことができる理由が想像主の血筋ならまあ確かにそうか、という意外性というところではそこまででもない理由だったからだ。
 それも大した問題にならなくなったのは、後にタブロウから人間になった存在がいたこと、そしてその人間になる方法がグランドマスターの心臓を食うというもので、イレイズと”星”がそのためにサツキのお命頂戴したい感じになってきたことから対立軸がさらに際だったからだ。敵が明確に目的があり、その目標達成のために主人公の命を狙うという単純かつわかりやすい危機的状況になったので、離散したタブロウを探す、というグランドツーリングになりそうなシナリオ展開をRTAに変えた鬼手だったと思う。

 最新巻では遂にサツキの命の灯が消えようとしている中、レディの仄めかされながら確証を得ない出自についての秘密が暴かれ、それが結果的にサツキ一行のピンチをさらに加速させるというドラマティックな展開になったので、23巻という長期連載の今がまさに怒濤だ。

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