「メリー、今夜このネクタイが結べなかったら、夕食に出かけるのは取り止めだ。それから、言っておくけど、今晩出掛けないなら、明日からは会社へ行かないぞ。そうなったら、キミもボクもひもじい思いをし、子どもたちは路頭に迷うことになるよ」
このピーターパンシンドロームパパの癇癪玉に、ダーリング夫人はしかたなく夫のネクタイを結んでやるが、はたで見ている子どもたちは、ただもうびっくり。
彼らはこうしていつも、家庭らしさのない家庭で、心の飢えと不安を搔き立てられながら暮らしている。
このような幼稚さとわがままこそ、ピーターパン人間の父親に典型的な要素である。
ダーリング夫人の恩着せがましい反応もまた、その代表的なものである。
この実例は、やや誇張気味ではあるが、いずれにせよ、父親、母親のこの二つの反応が結びついて、子どもたちを際限のない不安に陥れ、一種特有な家族の雰囲気をつくりだす。
この不安が、その家族の男の子に、どんなに決定的な悪影響を与えるは考慮すべきである。
まず第一に、わが子をピーターパンシンドロームに取りつかれないように予防するのか、それとも、すでにかかっているピーターパンシンドロームから救うのか、そのどちらかを見極めよう。
一応の目安として、16歳以下であれば予防、16歳以上で性役割の葛藤とか、ナルシシズム、ショービニズムなどが見られる場合には治療、と考える。
第二は、子どもを本当に助けようと思うなら、親であるあなた自身のパーソナリティをある程度あらため、夫婦間の不仲を改善する必要がある。
子どもが同じ家に同居しているか、何らかのかかわりをあなたと持っている以上、あなたは、子どもたちの問題の当事者なのだ。
あなたは、子どもたちに対して、何らかの誤りを犯してきたのだ。
カウンセラーは、それがどんな誤りかをあなたが気づくよう手助けはするが、誤りを正すのは、あなた方自身の役目だ。
生半可な決心ではとうてい不可能だ。
もし、貫徹する自信がないなら、諦める以外に手はない。
さもないと、かえって悲劇は大きくなる。
お父さん方、どうか、真剣に自分の感情生活を自己点検しなおしてください。
自分を憐れむことはないか。
自分の気持ちに直接に触れることを恐れてはいないか。
自分が何を感じているのかよくわかっているか。
本当は何も感じていないのに、感じているフリをしてはいないか。
本当のところ、あなたは自分の気持ちがわからなくなっているのではないか。
自分たち夫婦のことで失望していて、その不満を、奥さんが弱いためという”隠されたメッセージ”を息子に送ることで置き換えていはしないか。
お母さん方は、ご自分の過保護と恩着せがましい態度を、ぜひ客観視してほしい。
ひとりで生きていくのが怖いために、夫のショービニズムを我慢してはいないだろうか?
人付き合いが怖い彼にすまないような気持ちを、抱いていないだろうか。
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夫の子どもっぽさを、はっきり夫に気づかせないまま、対決を避けてはいないだろうか。
勇気のなさと責任逃れのために一貫した躾ができない、ということはないだろうか?
夫婦間の失望を、息子に向かって、お父さんみたいにはならないで、などと囁くことで発散しようとしていないだろうか。
もしあなたが、こうしたきつい質問に答え、自分の人格的な限界と対峙する勇気があるなら、それだけで、すでに建設的な変化への第一歩を踏み出したことになる。
次に過去数年間に遡って、自分が見落としていたものは何かについて、自己点検をさらにつづける必要がある。
子どもの年齢が何歳であろうと、ご主人(または奥さん)と語り合い、お互いの話に耳を傾けることからはじめる。
とにかく、両親同士がもっとコミュニケーションを持つことが先決なのだ。
それが可能になるには、数ヵ月を要することだろう。
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