Winning Ticket for All Vol.2

レース展望と回顧、馬券術について

宮田式馬券術のエッセンス⑧

2023-07-06 | 馬券作戦

[他馬に影も踏ませない不世出の逃げ馬サイレンススズカ=1998年宝塚記念 netkeiba.comより]

【名馬を映像で振り返る】永遠の疾風・サイレンススズカの軌跡 | 競馬ニュース - netkeiba.com 

 宮田比呂志さんの馬券術に学ぶシリーズの8回目。2ヶ月にわたって掲載してきましたが、8回目の今日で終わりです(8という数字、宮田さんの枠連法則などの馬券術から、ふさわしい数字と思います)。この間、個人的には大きな馬券も当てられましたし、これも宮田理論のおかげと、あらためて宮田さんには感謝しています。

 最終回のテーマは、宮田流ではなぜ11・12Rが狙いのレースなのか、です。

競馬は興行ビジネス ――

 11レース、12レースのメインと最終に絞るという方針も、「数運をつかむ」という方法論をもってすれば当然のことです。レースが進んで一つずつ結果が集積されていき、1日の数運の方向性がだんだんと明らかになってくるわけですから。

 3連単馬券は後半4レースで発売されていますが(これは2008年当時の話で、現在は全レースで三連単馬券が発売されています)、東西合わせて8レースを買うとなると資金も相当かさみます。マネー管理の点からも、東西のメインと最終レースの4レースの中から方法論に合致すると思えるものを選んで買うのが賢いやり方でしょう。

 別の観点から見てみましょう。主催者にとって、競馬は興行ビジネスです。売り上げが上がるほどいいわけですわ。そのため魅力あるレースづくりに努力するわけで、年間スケジュールも春秋のGⅠを中心に、暮れの有馬記念がフィナーレとなるようくふうされています。1日の番組もメインレースを中心に組まれており、言ってしまえば1レースから10レースまではメインを盛り上げるための前座という見方もできるわけです。そう考えると、1レースから始まる数運の行き着く先は当然メインレースです。となると、メインレースの馬券の数運シグナルは、それまでの結果の中に隠されていると捉えていいのではないでしょうか。

2つのレースに数運がある ――

 では、最終レースはどうなのか?

 たいへんおもしろいデータを、ある専門紙で見つけました。総売り上げから一定の控除額を引いたものが、配当として回されるわけですが、1日の総配当額をとったとき、レースごとのその配分率に、3連単馬券が発売されるようになって大きな変化が現れています。このデータは、1日の配当額の各レースの占める割合を1年間の集計から示したものです。

 1R~8R =30%

 9R =13%

 10R =12%

 11R =20%

 12R =25%

 メインの11レースより最終の12レースのほうが配当額が大きいという結果です。11・12レース合わせて45%、1日の約半分の配当がこの2レースに回されているとなると、これまで準メインといわれてきた10レースに代わって最終の12レースがその位置を占めたことを示しています。

 逆に言えば、12レースはそれほど売り上げが大きいわけですから、主催者側からすればメイン同様の番組づくりが要求されます。数運の行き着く先はメインレースだけではなくなっているわけで、私がこの2つのレースに絞る理由がおわかりいただけると思います。

Column  バクチノキ

 競馬塾を開いてかれこれ10年になるが、みなさん、当然ながら的中させたい、儲けたいと思って門を叩いてくる。

 しかし、入塾した者を見ていると、2通りに分かれる。「私の予想を知りたい人」と「私の予想テクニックを知りたい人」である。

 長いこと競馬という“魔物”と闘ってきて、なんとか勝ちを収めている先輩として、私は自分の方法論を同好の士に伝えたいと思っているので、後者の人は大歓迎する。問題は前者である。

 理論やテクニックに耳を貸さず、予想の目だけを知りたがり、2~3週当たらないとやめていってしまう。なんのために競馬塾に来たんだろうと、くやしい思いだけが残ってしまうのだ。

 彼らを見ていると、ある木の名前がすぐ浮かんでくる。園芸が趣味の家内が以前、「こんな面白い木があるわよ」と教えてくれたものである。

 「バクチノキ」という。

 家内が差し出した本を見ると、赤くただれた肌をさらした巨樹の横に「バクチノキ」とあった。

 「本州の関東地方南部以西から沖縄にかけて分布し、谷あいの土地がやせた斜面などに生える。和名は、樹皮がよく脱落して木肌が露出するので、これを博打に負けて身ぐるみはがれたさまにたとえたもの」(週刊朝日百科52『植物の世界』朝日新聞社)だそうで、かつてはこの葉から咳止めの薬がつくられていたという。

 「うちにも一本植えましょうか」という家内と大笑いしたものだが、技術論を身につけようとせず、予想だけを求めて

転々とする競馬ファンは数多いが、こういう人の行き着く先はバクチノキさながら身ぐるみをはがされるのがオチだ。

 “魔物”に勝とうとするには、目先の的中に右往左往しないことである。

 馬券の初期段階では、なぜ当たったのか? なぜはずしたのか? その理由をきっちり考えるようにして、推理の限界や的中に至るテクニックを会得することが大事で、収支も半年、一年というロングタームでプラスになるように考えるといい。

 今週負けたと落ち込んでいるようでは、筋道立った理論を身につけるのはむずかしい。

 私も、今日勝たねば!という気持ちがなくなってから、勝てるようになった。あわてないから無理に勝負にいくことはないし、調子の悪い日には“退く”ことも覚えた。すると、流れが良く見えてきて、勝負の潮時がわかるようになった。おかねは追えば逃げるし、追わないでいると取ってくれと言わんばかりに擦り寄ってくる――まるで悪女のように(宮田さんはよく競馬の“神さま”を「魔女」と呼んでいます)

 方法論を身につけようとせず予想だけを求めて転々とする人は、バクチノキの皮でも煎じて金止めの薬にしたほうがいいのではないか。……

Column  ファンファーレの鳴る前に

 ……みなさんも1日10~15分、競馬週刊誌などを使って特別レースをあらかじめチェックしておくといいと思う。こうしておくと、金曜日に残業だったり、飲み会だったりしても、手抜きの推理をしなくてすむ。

 軸馬はその開催を分析してもっともマッチしたものを選ぶわけだが、そのままではせいぜい3~4割しか当たらないというのが私の考えである。残りの6~7割をカバーするため、当日の「数運」をつかむのだが、そのためにも十分推理ファクターを消化しておく必要がある。

 でなければ、冷静に「流れを読む」ことはできないし、それに従って軸馬を変更するなどという対応も無理だろう。

 さらに求めるならば、当てよう、儲けようという欲を捨てて、統計に裏打ちされた定石どおりに馬券を買っていくことだ。一喜一憂せずトータルで勝とうという姿勢で臨めば、競馬がそうむずかしいものではないことがわかってくるはずである。

 こうしてまた、ファンファーレが鳴り響く楽しい週末がやってくる。……

(宮田比呂志『「数運」をつかむ技術』 73-78・140-142頁)


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