モリッシーの“Low In High School”発売までカウントダウン!
前作に続きプロデューサーを務めた、のジョー・チッカレリが
イギリスのプロ向きオーディオビジネス専門メディア“PSN EUROPE”に答えた
ちょっとマニアックなインタビュー(2017.11.8掲載)を翻訳しました。
モリッシーのこと、プロデューサー泣かせ…と言われるかと思いきや、
「プロデューサの夢」
と語っています。 U2、Beck、The Killers、Alanis Morissette、The Strokes、Glenn Frey…
数々のロックスターの名盤を手掛けた人に、「夢」と言われるなんてすごい!
「声でかい」とか(笑)。モリッシーらしいな~というレコーディングよもやま話も!
新作を聴くひとつのご参考に、どうぞ!
●Morrisseyと2作連続で、どのようにレコード制作を行ってきたのか教えてください。
まあ、モリッシーは前作“World Peace Is None Of Your Business”の制作プロセスを楽しんでいたので、
またやりたいと思ってくれたんだ。しかし残念なことに、我々がそのアルバムを作ったフランス南部の
La Fabrique Studiosが予約されていたため、タイミングがうまくいかなかった。モリッシーは、
レコーディングの時は本当にエキサイティングで刺激的な場所で、インスピレーションを得たいと
強く思っている。Fabriqueは本当に牧歌的な場所で、素晴らしいスタジオだ。モリッシーは、約10年
前にアルバム(“Ringleader Of The Tormentors”)をレコーディングした(イタリアの)エンリコ・
モリコーネのスタジオでまたレコーディングをすることを提案してきた。彼はローマのエネルギーが
自分に良いと感じているんだ。
●レコードを制作するあなたのアプローチはどんなものですか?
前作と同じように、モリッシーは私に約26のデモを前もって提示してきた。モリッシーの難しいところは
スタジオに入るまで実際にボーカルを録音することなく、スタジオで実際のボーカルを入れるから、
歌がどんな感じになるかそれまでは想像しかできない。これは非常にユニークなプロセスだよ。
彼はメロディーと歌詞で、歌を本当にすばらしくする。自分の人生で、曲を変えてしまうまでの
ユニークなメロディーと歌詞を思いつくことができる人とは、一度も仕事をしたことがない。
“Home Is A Question Mark ”はモリッシーの古典とも言える。彼が最初のガイドボーカルを
歌い出した時は明らかに「おお!」と思ったよ。才気ほとばしる歌詞、弁が立ち、そして古典的
なモリッシーメロディーだ。
●彼はスタジオではどんな風ですか?彼はプロデューサーに協力的ですか?
モリッシーは、多くの点でプロデューサーの夢の人物だ。彼が曲をどうしたいのかについて語る時、
非常に壮大な、大きな絵を語るようなやり方で話す。その曲の制作で成し遂げたいと思っている
感情や色に至るまで語るので、多くの柔軟性を与えてくれる。ピアノのパートをこうしろ~
ギターサウンドをこうしろ~とか言う感じではない。彼なら、これはひどくうんざりした歌
だから暗くしたい、不毛な歌だからで怖ろしくしたい、というように言う。そしてどう工夫するかは
任せてくれる。通常のレコーディングプロセスでは、ガイドボーカルをガイドのキーボードトラック
と一緒に演奏するか、バンドが一緒に演奏して、録りのための見込みをつけて、歌を整えてテンポを
調整していく。そしてボーカルのまわりのすべてを作り上げていく。60%ぐらいガイドボーカルで
録ったこの前のアルバムとは違い、今回は60%くらいのボーカルを録り直ししている。
モリッシーはディレクターの前ではうまく声が出て、ボーカルの声を押し出すことでバンドのエネルギー
も押し出している。時にはエネルギーを増してやり過ぎるので、私たちはもう少し軽いアプローチで
ボーカルを録り直すことになるんだ。しかし彼は本当に大きな写真を撮る感覚と、各曲から何を引き出そうと
望むかに関する良い感覚を持っている。
●アレンジと構成に関して、あなたはどう関わるのですか?
どのように関わって、アレンジと構成を決めるのですか?
るので、私たちは構成をまったくごちゃごちゃにしてコーラスなどを追加する。モリッシーは、歌詞に関することが
すべて、歌詞の叙情的なメッセージが適切に伝えられると感じたとき、余分な長い楽器やコーラスの繰り返し
の必要性を必ずしも感じていない。彼はストーリーテラーであり、その曲は短い映画や劇の中で演じるようなもの。
主張が決まり話し合いが行われる、それだけで十分なんだ。
●WPINOFBと“Low In High School”は共に、時には非常に視覚的で映画的であると感じています。
あなたはどのようにバンドに演奏をしてもらいましたか?
それはまさに、物語を提供することに他ならない。そして、私はいつも映画的なレコードを作り、可能な限り
物事を大きく膨らませたいと思っている。奇妙なことだが、ふたつのレコードとも制作が簡単だった。ストーリーは
すべて作品の中にあったから。
●スタジオのセットアップに関して教えてください。
スタジオはとても大きな部屋だった。奇妙なんだけど、むしろ音響的にはさえないさまざまな場所で
ドラムをさまざまな曲に入れた。マイクに関しては、キットの前にリボンマイクによって増強された
標準的な種類のマイクだ。私たちはBraingasmsと呼ばれる狂ったイタリアのリボンマイクをいくつか
使った、信じないかもしれないけど! ギターやアコーディオン、その他いくつかのものも使った。
スタジオには、多くのオーケストラ楽器で使用されていたきれいな響きのノイマンSM69(マイク)
があった。モリッシーのヴォーカル録音はWorld Peaceのアルバムと同様、古典的なノイマン U47で行った。
イタリアではそのマイクで歌ったり、 La Fabriqueでは数曲、Telefunken USA U47(マイク)で録音したりした。
彼は歌い方に非常に古典的なスタイルを持っている。彼の歌い方は、非常に50年代、60年代のクルーナー
(低い声で感傷的に歌う人)にとても似ている。声量はとても大きい。曲の多くはすぐそばで歌っている感じで
聞こえるかもしれないが、彼は実際にはマイクから1フィートまたは1フィート半離れているので、大きな声を出している。
2回ほど、彼をもっとマイクに近づけてもっとそばで歌っているように聞こえるよう努めてみたが、
モリッシーの歌のようには聞こえなくなってしまった。彼がちょうど彼の音であるマイクからもう少し聞こえる方法に
ついては何かがあります。プリアンプの面では、ヴォーカルにNept 1073、Pultic EQP-1A3を使用し、ユニバーサル・
オーディオLA2Aを使用した。ボーカルを録音するのはとても古典的でシンプルなアプローチだ。
●そしてミキシングプロセスはどうですか?
Pro Tools 3296ですべて行った。異なる曲構成を試して簡単に編集できるため、このレコードにはテープはない。
モリッシーのレコーディングは、Pro Toolsに直接録音するのが最善の方法だ。このレコードはMaxime Le Guilによって
エンジニアリングされた。私たちはLa Fabriqueでそれを行った。両方のスタジオには古いニーヴ(音響メーカー)の
コンソールがある。フォーラムにはニーヴのVシリーズコンソールがあり、La FabriqueにはVシリーズの最後の
バージョンであるNeve 88Rがある。それらは非常に異なった響きだ。トーンの違いは非常に驚くべきものだった。
●モリッシーは彼が使用するマイクにはこだわりますか?
彼はかなり直接的に関わってくる。でも本当に素晴らしい人物だし、我々を信じてくれているので決定は任せて
くれる。彼に明確に何かを聞けば、何かを答えてくれる。フォーラムには本当に素晴らしいライブエコーチャンバー
があり、時折、彼はトランペットやバックグラウンドのボーカルを録音することを勧めてくる。
それはすべて彼の性格からであって、どんなEQやコンプレッサーが使用されているかどうかには
それほど熱心ではない。そんなには彼にとっては重要なことではないので。
●WPINOYBと比較して、このアルバムはどのように作りましたか?
今回の制作では、前作によってバンドメンバーと私はお互いをよく知っていたのがすばらしかった。
だから彼らは何を期待すべきかわかっているしお互いに信頼し合い、尊重し合っていることもわかっていた。
このアルバムでのバンドとのコラボレーションは素晴らしく、彼らは本当に掘り下げられていて、本当に
モリッシーに対して敏感で、彼が特定の音楽用語で言葉を言い表せないとしても、どうしたいのかを解決する
手助けしている。モリッシーにとっておかしいというのは、ギターパートのひとつが少しいつもの様子と違う
かもしれないし、または少し不快感があって彼のやる気をそぎそうだったり、そしてもしより単純な部分やより
アコースティックな音で修正するなどなどすれば、ちょうどいい感じになる。そのような点で、制作プロセスは
非常に健康的だった。
ふたつある。これらのアルバムには約20曲が収録されているので、誰にも自分の好きな曲があるので
最終曲を選ぶのが難しくかった。今回のケースにあてはまらないからってお気に入りの曲が選ばれないと
悔しいし傷つくからね。“Spent The Day In Bed” と“Who Will Protect Us From The Police?”
には、うまくいかなかったり、少し焦点が合っていなかったので、余分な時間を費やした。モリッシーは
リスニングセッションを楽しんでいるので、2〜3週間に1回、私たちは皆で座ってそのレコードを聞いて、
それがどんなレコードになっているかを見ていく。ある日、レコードを聞いて、ねえモズ、これらのトラックに
はすべて、実際にはオーケストラのタッチが必要なような気がする、せっかくモリコーネのスタジオに
いるのに、その利点をまだ活かしてないと言った。いくつかのトラックにソロのバイオリンを、そして
ホーンとストリングスを、と言うと彼は、いいね、それをやろう!と言ってくれた。それで私たちは
いくつかの曲にオーケストレーションを加えることになった。モリッシーはそんな感じでオープンだよ。
●このレコードの中で好きな曲は何ですか?
“Home is A Question Mark”はまさにクラシックなモリッシーのメロディーだ。録音した時から、私は
「わーっ、これは僕が聞きたかったメロディーだよモズ!」という感じだった。“Israel”は本当にパワフルな
意見提示をしている。“My Love I’d Do Anything For You”はもう少しで収録されなかったという点で面白い。
みんながこの曲を好きなのと同じくらい、アルバムの他の曲と詞的にちょっと違う感じがした。この曲のために
私たちは最後の一週間かそこらを本当に一生懸命費やした。オーケストラを用いて立て直した。そしてモリッシーが
この曲に追加したすべてのホーンを聞いた時、おお、これならオープニングに思える、というようになった。
“I Wish You Lonely”は本当にパワフルでこれもまたすごいメロディーの曲だ。実は私はモリッシーに
何回かコーラスを繰り返してほしかったんだけど、彼と一緒に歌の歌詞の主張を伝えることこそがすべてなので。