11月28日公開の動くモリッシーインタビュー、日本語訳第3弾。ラストです
後半以降は、ダイバーシティダイバーシティダイバーシティ!!!(何回言っているだろう…)の悪口と、キャンセルカルチャーへの苦言、ベジタリアン・動物愛について語っています。特にダイバーシティへの憎しみ。
「『多様』なもんなんて見たこともねぇ!!単なる『同調(conformity)』の詭弁!!(意訳)」と昂っています。
↑身振り手振り、あらゆる動きで憤懣と憎悪を表現
このインタビューでの剣幕としつこいくり返しに、「モリッシーは『ダイバーシティ』に一族郎党焼き討ちにあったのか!?」というくらいの怨恨を感じますが、実際2020年にこの「ダイバーシティ」のせいでひでぇー目にはあっています。
2017年にやっとのことで契約し、3枚もアルバムを出したBMGが、BLM運動を受けて「グローバルなダイバーシティ&インクルージョンカンパニーを目指すにあたって」、結果的に契約解除されたのでした。
モリッシー曰く「このニュースは、2020年にもたらされた情け容赦ない電気ショックのような恐怖と完全一致」…。
★詳しくは…参考記事👇
「BLM」運動が飛び火!?BMGのモリッシー契約解除
この↑記事の中に自分も僭越ながら、
多様性ってなんでしょう??その受容ってなんでしょう??もちろん色々な人への「配慮」を表に出すのは立派なことです。けれども、あの人「差別的だよね」とくくって、排除することで解決される問題なのでしょうか?本当の「解決」に目を向けた、対話はあったのでしょうか?
と憤りかましましたが、時に「言葉」は本当に危険です。最初は「善」で生まれた言葉が、形骸化し、陳腐化し、使用する人を「あ、よくある言葉でパッケージすればいっか」と思考停止にさせる。このインタビュー読んでまたメディアは「モリッシー、ダイバーシティにモノ申す!!」とか騒ぐんでしょうか。モリッシーが問題視しているのは「ダイバーシティ」そのものではなく、その言葉に飛びつく烏合の衆とその衆たちの作る文化のことだと思います。
ちなみに、キャンセルカルチャーの話に出てくる排除しようと虎視眈々としている輩への「ケーキでも焼いてろ(Bake a cake)」というコメントは、何人かのモリッシーファンたちが気に入って、ハッシュタグ #bakeacake を作っていましたw 私もイヤなヤツがいたら心の中で「Bake a cake」と念じよう。
・・・あかん!前置きが長くなった。
こんな昂りのまま、インタビューはどのように着地するのか…と思いきや、たとえ金儲けのために仕方なく渋々であっても、世の中にベジタリアンレストランが増えたことや、動物愛の話になって、Calm downしたモリッシー。最後はFiona Dodwellに優しく称えられてはにかんだような素敵な表情を見せて終わるのでご安心ください。ほっ、良かった。
起承怒怒怒転結エキサイティングで、とても素晴らしいインタビューでした。では、下に日本語訳(やっと)。
Morrissey Interview 2022
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
モリッシーインタビュー2022 日本語訳-3
(前回のモリッシーコメント続き)
そして、今、音楽業界のヤツらは、ああ、ダイバーシティ、ダイバーシティ、ダイバーシティの考えを持たなきゃだめだ、ってことばかり言ってる。ダイバーシティとは、誰かも知らない人たちの多様性のことだ。多様性、それは単に「同調」と言う言葉を言い換えただけだ。「同調」の新しい言い方が多様性なんだ。「多様」なものなんて見たこともない。とにかく、すべてが同調行動だ。
-逆効果になってしまっているということですね。
その通り。それは、人々がダイバーシティについて語るとき、我々誰もが共通では持ち得ない独特の素晴らしいものについては考えないからだ。そういうものは、無視されている。ドイツに行けば、ドイツの素晴らしい文化を見ることができた、イタリアに行けば、イタリアの素晴らしい文化を見ることができた、それなのに今や、ぜーんぶが同じ、同じ、同じであることが望まれている。
ダイバーシティは「同調」を意味し、「アヴァン・ギャルド」のことは指していないし、「本当に面白い、他にはない芸術を作ろう!」という意味でもない。皆をひとつに閉じ込める言葉、ダイバーシティ、恐ろしい言葉だと思う。何にでも当てはめることができ、そうするとその状況は終わる。おぞましい言葉だ、おぞましい…。
-ソーシャルメディアについて何かご意見はありますか?というのも、極端な意見を押し付ける集団思考は、あなたが指摘している問題の一部だといつも考えてしまうからなんですが。
そうだと思う。なぜなら、今や誰もが批評専門家なんだから。誰もが科学専門家だし、ヤツらはすべてを知っている。すべてをレビューして、人を破滅に追い込むこともできる。そして仲間を集めて、誰かを排除してやろうぜ!とキャンペーンを行うことができる。そういうことは多かれ少なかれ起こっていて、ジャーメイン・グリア(オーストラリア出身のフェミニスト、作家、ジャーナリスト。モリッシーはシングル”Back on the chain gang”のスリーブに彼女の写真を起用)、J・K・ローリング(作家。ハリー・ポッターシリーズの作者)の2人の件は完璧な例だ(2人ともトランスジェンダーに対する発言で批判され、キャンセルカルチャーの標的にされた)。みんなで協力しよう!こいつらを排除しよう!こいつらがどんな危険かを言い続けよう!というのは、死をもたらす行為だ。いずれはコントロールできる方法があると思うが、まだ誰にもわからない。
政治家のエリートたちも、この状況を好ましく思っていないと思う。政治家も急激に変わってきているのに気づくかもしれないが、それは今やソーシャルメディアや人々が「あいつが嫌いだ」と言うことができるようになったからだ。昔はできなかったのにね。
-ソーシャルメディアにも2つの面がありますよね。私はよく、ソーシャルメディアで起こることを見ていますが魔女狩りは本当には終わっていないように思います。
終わってないね。人々は必死に、魔女を見つける必要がある。見つけなければならないんだ。不名誉で恐ろしくて何とかで、何とかで、何とかな、誰かを見つけなければならない。それで喜んでるのがわかるね。メアリー・ホワイトハウス(イギリスの教師、保守活動家。社会的自由主義やイギリスの主流メディアに反対するキャンペーンを30年に渡り展開)を覚えている? 多くの人々がメアリー・ホワイトハウス化して、排斥を行おうとしている。私は傷ついたんだ、って、あたかも自分が傷つけられたかのように! そんな知性があるというのは、まさに愚かであることを意味する。私たちは今、このメアリー・ホワイトハウス文化の中にいるんだ。みんなが「やめろ!そんなの好きじゃない!地球から消え失せろ」って主張する。そういうヤツらは、おぞましいと思う。あっちに行ってくれ。こっち見んな。スイッチ切れ。何か他のもん聴け。ケーキでも焼いてろ。
-他の人のために、あなたがやっていることを止める必要はないですよね。
私たちは60年代後半のようなプロテスト文化の中にも置かれているからね。あの頃人々は、出かけて街頭に立って抗議し、何かに対して怒って行ったり来たりする、のが大好きだった。今、誰もがそういうのをやりたがっているんだ。みんな何かに対して激怒したがってる。まあそれはいいけど、時間を無駄にしているかもしれないね。
-そうそう、動物の権利について触れたいと思います。あなたにとって、とても重大なことですよね。最近のあなたの音楽におけるテーマでもありますし、インタビューでもこのことについて語っていますね。個人的には、レストランやカフェでポジティブな変化が起きているのを感じています。ベジタリアンのためのメニューも増えてきてますよね。今、私たちは良い方向に向かって進んでいると感じますか? それとも理想とはあまりにも遠くかけ離れていますか?
本当にうっとりするようなことだと思うよ。私は十分な年なんで、本当に何も、何も、できなかった昔を覚えているからね。「ベジタリアン」という言葉を口にすれば、信じられないほど嘲笑われたものだ。でも今はどこもかしこも変わっていて、とても嬉しいね。本当に、本当に、幸せだ。これまで、(ベジタリアン対応の必要性については)延々と語ってきたんだけどね。今は、そのほとんどがもっともなことだと認められたと感じているよ。(以前は、飲食業界として)どの道やるべきことなのに、大きな抵抗があったし、信用したがらなかった。でも(レストランは)金儲けのために、とにかくやらざるを得なかった。例えば、8人の友達とあるレストランに食事に行ったとして、その内の2人がたまたまビーガンだったら。その2人のビーガンに対応できなければそのレストランは、客全員を失うことになる。だから、みんな「あーあ。今やらなきゃならないか」って思っているんだよ。
そして、誰もが動物を、人間のためにたくさんのことをしてくれている美しい生き物として認識するようになった。動物は私たちのために多くのことをしてくた。休ませてあげて、ほっといてあげよう。人類は動物に、あまりにも世話になってきた。今、動物たちは報われるべきであり、生きることを許されるべきだ。私はそう思っている。
-それこそ、あなたがしてきた、重大なことですよ。モリッシー、あなたは、実際に動物の問題にスポットを当てた、代表的人物のひとりだと言えるでしょう。
そうかな。頑張ったけどね。頑張らないとね。
(終わり)