夕立

■夕立

今にも雨が落ちてきそう
風がざわめき　鳥たちを追い払う
胸騒ぎの先に　小さな灯り
曲がり角で　ためらう思い

見上げた空は　広がりを閉じ込め
くすんだ色で　この星を包む
湿った空気を突き通して
私の額を濡らす　夏の雨

遠慮なしに　すべてを貪り
飢えた土は　いま生き返る
ざらざらのにおいが　空気を独り占め
待ちわびた季節の到来を知る

行きと帰りを天秤にかけて
振り返ったまま　戻らない人
今日の雨の激しさに
消えかけた思い出が　息を吹き返す

雨があがり　生き返った街
色もにおいも　顔をのぞかせる
「帰ってくればいいのに」
声に出して　つぶやいてみる

「帰ってくればいいのに」
もう一度　つぶやいてみる