kamacci映画日記 VB-III

広島の映画館で観た映画ブログです。傾向としてイジワル型。美術展も観ています。

広島県立美術館特別展「だまし絵の巨匠 エッシャー ー 不思議な版画の世界」

2016年11月21日 | 展覧会
「だまし絵の巨匠 エッシャー」
会場:広島県立美術館
会期:2016年11月11日(金)~12月25日(日)

小中学生のころ、必ず教科書にあったエッシャーの作品。

とにかく作品数が多いと聞いていた本展、入館した時間が遅めだったこともあって、前半は駆け足で見ないと間に合わない。

面白いのはやはり後半「独自の世界」と「無限への挑戦」のコーナー。単純に見ていて面白いというものあるのだが、数学や鉱物結晶に基づいた作風に理系的な興味もかき立てられる。「3つの球体」など天文系のドキュメンタリーでよく見る重力波のイメージ図そのもの。

一通り見ていると、「上昇と下降」や「ベルベデーレ」といった有名なリトグラフ作品より、板目木版や木口木版による平面充填の作品の方がしっくり来る。木版画が描く不均等な直線にあたたかみを感じるからかも知れない。

木彫の工芸作品は好きだし、ちょうど今、ウォールナット相手に彫刻刀で格闘していることもあって、作品の版木などは非常に興味を惹かれる。細かい作業にいくら見ていても飽きない。

細かい作業といえば、細部の表現に適した木口木版画の作品などは老眼殺し。
エッシャー70歳頃の作品である「《蛇》の部分の習作」には「50年間、細かい作業ができたこと」への感謝が記されていたが、確かに熟練の職人技であり、強い意思を感じる。

一方であのような作風をペン画ではなく、手間と労力のかかる木版画(プラス 作画用の緻密な計算)として表現するあたりに、作家としての狂気を感じずにはいられない。

今回一番気になった作品は「臨時アカデミーの卒業証書」。
1945年の作品で背景に黒煙が立ち上る戦時色の強い作品。ここに記されているアイントホーフェンは「マーケットガーデン」作戦の戦場でもあったところ。
同作戦が一大空挺作戦でもあったことを考えると、ふくろうの腹模様は飛来する飛行機の大群、足元の瓦礫は鉤十字を思わせた。

全体に「だまし絵」ではなく、「版画作家」エッシャーを認識した展覧会だった。

ところで、広島県立美術館の階段はちょっとベルデベールっぽい。いつまでも会場からでることができないミステリー・ゾーン。
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