小沢一郎の「W選挙戦略」

2012-11-07 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア

本誌インタビューで永田町騒然 小沢一郎の「W選挙戦略」
週刊朝日 2012年11月16日号配信掲載) 2012年11月7日(水)配信
 本誌が先週号(11月9日号)で6ページにわたって掲載した小沢一郎氏(70)の独占インタビューが永田町を騒然とさせている。小沢発言の真意は一体、どこにあるのかと、与野党の幹部が色めき立っているからだ。剛腕が最終的に描く選挙戦略はどのようなものなのか。石原新党や橋下維新ら第三極をのみ込むのか。改めて探った。
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 10月29日に召集された臨時国会では、のっけから各党の代表が早期の衆院解散・総選挙を迫ったが、野田佳彦首相(55)は「解散の密約はなかった」と突っぱね続けた。
 だが、与野党の幹部たちは、そんな“表”の攻防戦はそっちのけで、小沢インタビューをどう読み解くかに腐心し、本誌記者に会うと独自の解釈を開陳してみせる。民主党執行部の一人はこう語った。
「小沢さんは、今国会で野田内閣に対する不信任決議案が可決され、野田首相は『辞任する』と言っているが、『解散する』とはひと言も言ってない。これがミソなんだよ。要するに小沢さんは、今国会で野田首相の首を取るところまではやるが、解散までは踏み込まないと。これは盟友だった輿石東民主党幹事長(76)へのメッセージですよ」
 確かに小沢氏は本誌のインタビューで、こう語っていた。
〈内閣不信任も、やれば通るような状況だと思います。我々も、通常国会で不信任案を出したときと、何ら変わっていませんから。
 だけど、そうなったら野田さんはお手上げ状態ですよね。解散を選べば、民主党内で「ふざけんな」とつるし上げになってしまう。ほとんどの人は、こんな状況で選挙なんてとんでもないと思っている〉
 民主党は10月、若手議員らをつなぎ留めるため、政治活動費として一人300万円をバラまいた。ところが、それを受け取った衆院議員2人が国会召集日に離党届を提出し、河村たかし名古屋市長(64)率いる減税日本への合流を検討している。その結果、与党は245議席に。あと6人が離党すれば過半数を割り込む非常事態だ。
 危機感を強めた野田首相は連夜、1年生議員らを日本料理店「なだ万」などに招き、高級フルコースで接待しているという。
「自民党が作成したとされる15人の名前が載った『民主党離党予備軍』というリストが出回るなど、かなり追い込まれているのに、首相は全然やせない。ドジョウは胆力がある(苦笑)。代表質問の答弁で舌がもつれたのは『2倍の速さでしゃべったから』と話していました」(側近議員)
 だが、こうした努力が功を奏すかどうかはわからない。自民党執行部の一人はニンマリしながら、小沢インタビューを読み解く。
「記事を読む限り、与党が過半数割れし、うちが内閣不信任案を国会に提出すれば、小沢さんは同調してくれるってことだよね。実はいま、民主党の1年生議員らの引き抜き工作をやっている。手引きをしてくれているのは、小沢系のベテラン民主党議員だ。我々は民主党の1年生たちに飲ませ、食わせ、愚痴を聞いて、離党後の受け皿まで用意しながら、苦労して引き抜き工作を進めている」
 それが成功すれば、解散の時期を決める“ボール”は野党側が握ることになる。
 しかし、老獪な輿石氏は小沢氏と組み、巧妙に、それを取り戻そうとしている節がある。
 輿石氏は10月中旬、最高裁で「違憲状態」とされた衆院の一票の格差是正について、自民党が提案している「0増5減案」の先行実施に含みを持たせ、「法案成立後の衆院解散についても協議しなければいけない」と思わせぶりに語った。
「輿石さんは、今国会の会期中に衆院が過半数割れしたら、小沢さんと裏で組んで、0増5減案より先に野田内閣の不信任案を通してしまう、という大胆な裏技を画策している。そして、『違憲状態が解消されないままの解散はできない』という理屈で、野田さんを総辞職に追い込む筋書きです」(民主党国対幹部)
 小沢、輿石両氏が「年内解散せずに、野田首相の首を取る」という戦略で連携するのには、それなりの合理性があるようだ。自民党幹部が解説する。
「年内解散でいちばん困るのは“第三極”から孤立し、いま選挙をしても議席減が確実視されている『国民の生活が第一』だ。7月にできた新党なので政党交付金ももらっておらず、選挙資金が足りない。交付金の額は、基準日の1月1日に所属する議員数などで決まる。解散がなければ、生活は現有の49議席をもとに年間約11億円。4月にはその第1期分の3億円近くが入る。小沢さんはそれを待っているんですよ」
 今年、約165億円の交付金を手にする予定の民主も、選挙をすれば議席が大幅に減ることは必定だ。選挙を先延ばしすればするほど、懐は潤うことになる。
 小沢氏は、本誌インタビューでは、輿石氏との連携の可能性について、あっさり否定してみせた。
〈連絡も全然ない〉
〈僕が知らないところで、何だかんだと言われるのだから、困るんです〉
 だが、目指す“落とし所”はなぜか同じだった。
〈不信任案が通ったからといって、選挙というわけにもいかない。いま選挙するとなれば、総辞職するのと同じですから。解散が難しいとなれば、野田さん自身の進退になるでしょう〉
 小沢氏の言うとおり、野田首相の進退問題はすでに公然と語られ始めている。首相と二人三脚で消費増税法を成立させた財務省も、最近は官邸から距離を置きつつあるようだ。
「野田首相は11月5、6日にラオスで開催されるアジア欧州会議(ASEM)首脳会合に出席し、帰国後、過半数割れの山場を迎えるでしょう。11日から始まる週に辞任するというウワサも出ています。気の早い閣僚は、プレハブ選挙事務所の建築許可申請を出してますよ」(財務省中堅幹部)
 民主党最大のサポーターである連合の幹部も「年内解散があるか否か、もうすぐわかる」と明言するなど、首相周辺はにわかに慌ただしくなってきた。
 小沢氏は本誌に、こんな“予言”をしている。
〈不信任案の採決前に「違う人を」という話になるかもしれない〉
「違う人」とは誰なのか。民主党幹部はこう明かす。
「輿石さんは、イケメンで人気のある細野豪志政調会長(41)に政権を継がせ、来年解散に打って出たい。でも、肝心の細野さんが『短命政権はゴメンだ』と逃げ回っているので、岡田克也副総理(59)が現実的には後継になる公算大です」
 では、最大の焦点である解散はいつになるのか。
 主なタイミングは四つある。(1)辞任を迫られた野田首相が逆切れし、年内解散(2)1月の通常国会冒頭(3)来年度予算が成立した後の4月(4)夏の衆参ダブル選だ。
「自民党の『0増5減案』を通したとしても、新しい区割りが決まるのは、どんなに急いでも2月か3月になる。そこまでいくなら予算成立を待ち、4月に解散したほうが良い。参院選に近づきすぎてもダメだしね」(前出の民主党幹部)
 野田首相に「近いうち解散の約束を果たせ」と声高に迫った安倍晋三自民党総裁(58)も、本音は別のところにあるという。
「安倍さんは公明党とのお付き合いで年内解散を言っているだけだ。うちの情勢調査では、細野首相になって解散しても、民主党の議席は当初の予測より20程度増えるだけで、自公の過半数は揺るがない。だったら衆参ダブルでいい。安倍さんは長期政権を狙っているからね」(自民党幹部)
 そうした自民党の思惑も見通した上で、次の衆院選で100人前後の候補者を擁立する予定の小沢氏は、最終的に大胆な選挙戦略を描いているようだ。
「選挙が来年夏まで延びれば、日本維新の会を中核とした第三極の新鮮さは消え、先細りになると小沢さんは読んでいる。維新にしても、石原新党やみんなの党にしても、組織は脆弱で、資金も潤沢ではない。それなのに、維新を率いる橋下徹大阪市長(43)は大風呂敷を広げ、全選挙区に候補者を擁立すると公言している。ダブル選になったら、衆参両方で候補者を立てなくてはならないので、相当厳しくなる。うちは小沢さんが選対委員長だから、時間があればあるほど準備が整うけどね」(小沢氏の側近)
 くだんの「第三極」では、小沢氏を敵視する石原慎太郎氏(80)が10月末、東京都知事の職を投げ出し、新党を結成して橋下氏と連携するとぶち上げた。だが、直後から不協和音が噴き出すなど、小沢氏の読みどおりになりつつある。
 その決定打は、石原新党の母体となる「たちあがれ日本」の藤井孝男参院代表(69)の余計な一言だった。
 橋下氏は11月1日、記者団にぶちまけた。
「こちらが共同代表をもちかけたという話はない。一方的に、(事実と違うことを)藤井さんが会見まで開いてリークするその姿勢。完全にこれは主導権争いなんですよ。強い不信感を抱いている。第一印象としては、カラーが違うな、と」
 そして、こう断言した。
「石原さんの力は借りたいが、たちあがれのメンバーの力は別に必要ない」
 たちあがれ議員団と橋下氏をともによく知る参院議員はこう解説する。
「たちあがれは自民党と参院で統一会派を組んでいるが、藤井さんは自民党に復党したくてしょうがない。しかし、平沼赳夫代表(73)は自分の選挙区に自民党が刺客を立てているから、新党でやりたい。石原さんに抜けられたら絶対に困る。対する橋下さんは、メディアを使ってたちあがれに空中戦を仕掛け、主導権を握ろうとしているんだろうけど、平沼さんたちもベラベラとしゃべるタイプなので、収拾がつかなくなる。有権者が嫌気を起こすよ」
 石原氏から「大連合をやろう。一度、会いたい」と呼びかけられたみんなの党も困惑気味だ。
「維新とは8日に2回目の政策協議をする。しかし、石原さんからはまったく連絡がない。たちあがれの園田博之幹事長(70)は、みんなとは組めないと、囲み取材で堂々と答えていた。石原新党とは東京の選挙区でぶつかるから、連携は無理だよ。消費増税反対や脱原発など政策的にはむしろ小沢さんのほうが近い。渡辺喜美代表(60)が小沢さんと内々にコンタクトを取ったというウワサもありますからね」(みんなの党議員)
 橋下氏は「小沢さんは尊敬する政治家だが、連携は考えていない」と話している。他方、小沢氏は維新の会についてインタビューではこう語っていた。
〈彼らがいったい何を目指しているのか、そのためにどうしようとしているのかが、一般の人にはわからないんじゃないのかな。僕もよくわからない〉
 第三極のキーマンも、橋下、石原両氏から小沢氏に代わるのかもしれない。
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小沢一郎氏が断言 「民主党に協力する可能性ない」〈週刊朝日〉
dot. 10月29日(月)15時28分配信
  小沢一郎氏(70)が代表を務める「国民の生活が第一」が結党パーティーで4千人以上を集めた10月25日、石原慎太郎東京都知事(80)が突如、新党立ち上げを発表した。次期総選挙に向けて、いよいよ永田町の動きが加速している。小沢氏は、今後も袂を分かった民主党との協力はない、と独占インタビューで明かした。
 *  *  *
――民主党内で「不信任案が出たときは同調する」と、小沢さんにアドバイスを求めてくる議員はいますか?
 個人的にそれが誰かも知らないし、接触もしていない。ただ、この状況だと、「もう民主党、野田内閣じゃ、どうしようもない」と考える議員がいるだろう、という一般的な推測は成り立ちます。
――もし野田さんが臨時国会で辞めて新首相が誕生した場合、もともと同じ党として、協力する可能性はあるんでしょうか。
 いや、ありえないですよ。消費増税もやめる、原発も10年でやめる、というのなら別でしょうが。
――10月10日夜、民主党の輿石東幹事長(76)が、鳩山由紀夫元首相(65)と会談した際、「小沢さんに協力を求めたい」と言っていたといいます。
 なにを協力するんですか? 連絡も全然ないですよ。鳩さんもいつだったか、「近いうちに行きますから」なんて言っていたけど、その後うんともすんともない。輿石さんもないし。それで僕が知らないところで、何だかんだと言われるのだから、困るんですけどね。
 しかし、どうする気なんですかねえ。わかりませんね。自公もその時々で態度が違いますが、もし本気で強硬に出るならば、臨時国会自体が容易じゃない。我々は審議拒否するつもりはないですが、野党第1党、第3党が出てこないとなれば、民主党と一緒になって協力するというわけにはいかないですからね。
※週刊朝日 2012年11月9日号
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小沢一郎氏 「今の日本の極右化は悲劇」〈週刊朝日〉
dot. 10月29日(月)15時28分配信
 4月の「無罪」判決以降、活字媒体として初となる独占インタビューに応じた「国民の生活が第一」代表・小沢一郎氏(70)。そのなかで、日本の極右化を「悲劇」だと明かした。
 *  *  *
――それにしても、小沢さんが大きくしていった民主党ですが、結局、二大政党制には…。
  ならなかった。だから、もう一度やりなおさないといけない。民主が、もう全然だめだから。自民も、もう少しペシャンとなって、新しい芽が吹き出てくればよかったんだけど、最近また元気になってしまって。中途半端なまま、また政権と言いだしているようだから、ちょっと困っちゃった。自民党にとっても、日本にとっても、よくないことですね。
――日本に二大政党制は向かないんじゃないか、という議論も出ています。
 向かないというよりも、2大政党を中心とする議会制民主主義の理解が、まだ進んでないということです。日本は、まだ民主主義が成熟していない。いちばんの責任は国会議員にありますが、それを選ぶ国民にもまた責任がある。3年前の選挙では「ちゃんとやってくれるだろう」という期待感が大きかっただけに、その反動が怖い。自民も民主もダメ、政党政治もダメとなってしまうと、民主主義の否定につながってしまう。
――今後の政党政治はどうなるんですかね。
 極論が出てくる。世界的な激動の時代に、大変だ、大変だとなると、やはり極端な議論が強まりますよね。
――極右、極左ですね。
 そう。日本の場合は右バネが強いでしょう。欧州もそうだけど、日本はもっと強く出るだろう。それは悲劇だね。
――その意味で、尖閣問題を中心に、日中関係が非常にギクシャクしています。まさにその右バネが強くなる土壌ができています。
 このままだと余計そうなる。ただ、国民の意識がかなり進化してきているから、昔のように単純にブワーンとは振れないだろうけど、長引けば右の意見が強くなってくるでしょうね。
※週刊朝日 2012年11月9日号
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