【明石歩道橋事故】検察官役弁護士「有罪を確信」 元副署長強制起訴
産経ニュース2010.4.20 14:07
11人が死亡する大惨事となった平成13年の明石歩道橋事故から8年9カ月。明石署元副署長の榊和晄(かずあき)被告(63)を強制起訴した指定弁護士3人は20日、神戸市中央区の神戸司法記者クラブで会見し、「記録を検討した結果、法律の専門家としても当然起訴されてしかるべきと判断した。検察審査会の判断は間違っていない。有罪を確信している」と自信をみせた。
■これから本番、時効停止を
検察事務官から起訴手続きの終了を確認後、会見に臨んだ3人は少しほっとした表情。主任を務める安原浩弁護士(66)は「これからが本番。公判維持と立証は大変だなと、身が引き締まる思い」と感想を述べた。
指定弁護士に選任からわずか2カ月半での起訴。中川勘太弁護士(37)は「複雑な事件で、理論的側面で苦労した」と起訴に至るまでの苦労を明かし、計画策定段階の過失を予備的訴因として盛り込んだのも「遺族の強い意向があった」と遺族感情を反映させたと説明した。
地検が榊被告を不起訴とした理由の一つは、上告中の元地域官に現場での監督義務が委譲されていたと判断したためだったが、安原弁護士は「署に警備本部を作り、被告は副本部長で警備総括指揮官という立場。現場に任せておけばいいという弁解は成り立たない」と指摘。「当日の過失が被告について100%成立することはないかもしれないが、計画段階のいずれかで有罪になるとは確信している」と述べた。
一方、時効停止のかぎとなる共犯の成立については、「過失犯の共犯成立は、学説も分かれている。裁判所がいきなり『時効成立により免訴』とはしないよう、専門家の意見も聞いて冒頭陳述から時効停止をきちんと主張したい」と慎重な姿勢。「変なところで足元をすくわれないように、用心深くやった」と強調した。
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【明石歩道橋事故】強制起訴、有罪立証へ“急造検察官”困難な道
産経ニュース2010.4.20 13:44
平成13年7月の兵庫県明石市の歩道橋事故で、神戸第2検察審査会による起訴議決を受け、指定弁護士は20日、全国初となる強制起訴へとこぎつけた。しかし、神戸地検が4度にわたって不起訴と結論づけた事案である上、短期間に十分な補充捜査を行えたとは言い難く、公判での有罪立証へ向けてさらなる困難も予想される。
指定弁護士は今月15日、元明石署副署長の榊和晄(かずあき)被告(63)を任意で事情聴取した。だが、聴取そのものは3時間ほどで終わったものの、被告が調書へのサインを終えたのは出頭から10時間余りがたった深夜。「不慣れだった」という調書の作成に時間がかかったためだ。
主任を務める安原浩弁護士は刑事裁判の経験が長い元判事だが、当然ながら捜査の現場に携わった経験があるわけではない。他の2人の指定弁護士も同様だ。
まずは早期の起訴を優先したため、以前から要望を受けていた遺族への聴取も起訴後に行うことになるなど、積み残した補充捜査も少なくない。弁護側への証拠開示に3カ月の猶予を求める意向を示したことからは、地検から引き継いだ段ボール19箱に及ぶ証拠の精査が、現段階では十分ではないこともうかがわせる。
今後は公判に向けて冒頭陳述や論告の作成、さらには被害者参加制度への対応を行っていかねばならない。もちろん、事故の予見可能性や注意義務違反など課せられた立証のハードルも低くはない。安原弁護士は19日の記者会見で「公判維持できる確信をもった」と自信をのぞかせたが、“急造検察官”が歩まねばならない道のりは、決して平坦ではない。
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明石歩道橋事故、元副署長を初の強制起訴
兵庫県明石市で2001年7月、11人が死亡した歩道橋事故で、検事役の指定弁護士3人は20日、明石署の榊和晄(かずあき)・元副署長(63)(退職)を業務上過失致死傷罪で神戸地裁に在宅起訴した。
起訴状では「事故の危険を容易に予見でき、現場の状況を常時監視して規制すべきだったのに放置した」とする事故当日に加え、具体的な危険防止措置を策定しなかったとして事前の警備計画に関する過失も指摘した。改正検察審査会法に基づく「起訴議決」を経て、指定弁護士が強制起訴するのは全国初。
指定弁護士は、榊元副署長の認否を明らかにしていないが、神戸地検などの調べに、事故の予見可能性を否定していた。今後、公判前整理手続きの適用が予想されるが、争点を明確にする作業などで長期化が見込まれるため、初公判は来年以降になる可能性が高い。
指定弁護士は神戸地裁に対し、証拠を整理する時間が必要になるため、弁護人に対する証拠開示まで約3か月の猶予を設けるよう求め、公判前整理手続きの適用も要請した。
起訴事実は、神戸第2検察審査会による1月の議決にほぼ沿う内容になった。
起訴状によると、榊元副署長は当時、明石市主催の花火大会で署警備本部副本部長。花火大会には約15万人以上の人出が見込まれ、約7か月前の別の花火大会で群衆が殺到して警察が介入する事態だったのに、事故は起きないと軽信していた。そのうえで、現場責任者だった同署元地域官・金沢常夫被告(60)(上告中、退職)と共謀、または過失の競合により現場の警官らに指示して流入規制を実施すべき義務を怠り、多数が転倒する事故を引き起こして、11人を死亡、183人に重軽傷を負わせたとされる。
さらに、警備計画で事故を防止する体制を構築するべき注意義務を怠ったことを起訴内容に盛り込んだ。
指定弁護士の3人は起訴後に記者会見し、主任の安原浩弁護士(66)は、「3人とも有罪と信じている」と自信を見せた。
◇改正検察審査会法=2009年5月施行。改正前は検察審査会で「起訴相当」や、再捜査を求める「不起訴不当」の議決が出ても強制力がなかったが、改正後は起訴を求める議決が2度出ると、裁判所の指定する弁護士が検事に代わって容疑者を起訴する。(2010年4月20日11時58分 読売新聞)
◆検察審査会、近く判断 「小沢氏不起訴の妥当性について」
◆検察審査会 厳正で公平な運用が肝要
◆明石歩道橋事故、日本初の強制起訴へ 「弁護士」が起訴 被害者参加制度と併せた司法制度改革の一環