自立支援施設として、更生保護施設の役割はとても大きい=地元住民の理解が肝要

2009-11-25 | 社会

更生保護施設の現状と課題 再犯防止に欠かせぬ経済的安定
産経ニュース2009年11月25日(水)08:05
 ■得にくい地元住民の理解
 経済的に安定しているほど、再犯は起こりにくい。13日に公表された犯罪白書で、こんな分析がなされている。民間の更生保護施設が刑務所などの刑事施設を出た身寄りのない元受刑者らの自立を手助けしているほか、民間では受け入れが難しい元受刑者らについては、国が社会復帰施設の建設を進めている。再犯防止に向けた取り組みの現状と課題を探った。(森本昌彦)
 ◆9割が自立
 「刑の執行を受け、社会に出るまでには住所を見つけ、職を探さなければならず、ものすごく手間がかかる。(宿泊、食事を提供する)更生保護施設にいるから適職を探すことができる。自立支援施設として、更生保護施設の役割はとても大きい」
 東京都内の更生保護施設で施設長を務める男性はこう話す。この施設では、少年院を仮退院した少年や刑務所を仮釈放となった元受刑者(26歳未満)などを保護。一定期間、施設で寝起きして、働きに出て自立のためのお金を稼いでいる。
 生活の場を提供するだけでなく、集会で自立に向けた話し合いをさせたり、対人関係を改善するための訓練、息抜きのためのイベントも開いたりしている。「彼らにとってのこれまでの対人関係は敵対関係しかなかった。ここでは、相手を受け入れたり、相手の立場に立って考えたりする関係があることを体験させています」と施設長は話す。
 こうした取り組みで自立し、問題なく施設を出るのは約9割にも上る。元入所者が残した感想文には「自立して部屋を借りることができたのも、多くの人の助けがあったということを忘れずに新しい生活を始めていこうと思う」など、施設の関係者や共に生活をした入所者への感謝の言葉が目立つ。
 ◆開所はわずか3カ所
 ただ、更生保護施設の運営には難しい面もある。国から施設に支払われる委託費だけで施設を運営するのは困難なうえ、元受刑者らが生活していることに対し、地元住民の理解を得にくいからだ。
 国も同じ問題に直面している。民間の更生保護施設で受け入れるのが困難な元受刑者らの社会復帰を目指すため、法務省は「自立更生促進センター」の整備を進めている。しかし、地元の理解が得られず、京都、福岡の両市では計画が凍結、福島市では開所が延期となっている。開所にこぎつけたのは、北海道沼田町、茨城県ひたちなか市、北九州市の3カ所にとどまっている。
 犯罪白書では、窃盗での執行猶予者の就労状況別の再犯状況について、無職の場合が34・4%、不安定就労が29%、安定就労が19・3%と、経済な問題が再犯に大きく影響していると分析。「経済的な理由が動機とならない覚せい剤取締法違反やその他の犯罪でも、職に就き、安定した生活を送ることは改善更生の前提というべき」としており、更生保護施設のさらなる拡充や自立更生促進センターの着実な運営が必要と指摘している。

「犯罪白書」検挙された者の42%、起訴された者の48%が、再犯者


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